霧恵昌朮 『 SUCCESTARS 』 ( 28頁 )
発行:月刊制作委員会
発行日:2001年5月4日
単行本内に初出記述無し
5冊目の単行本
作画力 ★2の上
発想力 ★2の中
コマ展開力 ★3の上
物語性 ★2の上
世界観 ★2の上
テーマ ★1の上
想いのドラマ ★2の中
漫画的総合評価 ★2の下
ファン的宝物度 ★2の中
さて、霧恵マサノブの5冊目なのですが、
『 生者 』 で力を使い果たしたのか
ちょっとショボイ。
中途断念な長編のオープニング状態で放置プレイなため 頁数の薄さのせいってのもあるけど、テーマ自体が何なのかさえ伝わってこないレベル。
それいぜんに あまりおもしろくない。
たしかに あとがき読めばわかるように 前回の欠点でもある 『 言葉に頼りすぎ 』 を解消すべく新たなる挑戦なワケだが、まあ、この頁数で挫折したのが頷けるほどに、作品として練れてない。
HPでの作品コメントを読めば、著者にはスタンディングオベーションレベルのラストシーンまで見えてるらしいが、長編としての出だしとしても、やっぱり まったくもって物足りない。
ここは公約どおり、将来のリメイクに期待するとしよう。
なので
簡単にぶっ飛ばす
ことを許したまへ
霧恵昌朮 『 SUCCESTARS 第1話 Beast Roar 』 (6頁)
ヨシミツ ( フツーに人間の少年 ) と ティム ( 人魚な女の子 ) の かなりベタな 基本 コメディーの 恋物語なんですヨ。
6頁ショート漫画なので、1話としてのふくらみとかはさすがに無理なんだけど、とりあえず、水中でのラブラブぶりが堪能できるコミカル癒し系です。
ちょっと、主人公のヨシミツがフツーにあり得ないほど純情すぎて、お相手の人魚サンの開けっぴろげな性格との兼ね合いから、かなり漫画チックに偏りがちなので、感情移入はし易くなかったけど、低年齢層向けのケータイ漫画とかなら、そこそこ需要ありそうな作風かもしれないとか思いました。
しょっちゅう逢ってるって設定のワリには、ここまでドギマギすんだろうか?というのが私的にいちばん疑問に思っちゃったところ。
マウスピース型酸素ボンベ欲しいなあ。
あああ…シュノーケリングくらいしてえなあ…。
霧恵マサノブにしては、普通に、世間一般標準漫画的進行になってるところは、見逃せない?かも
オチのアイデアは悪くないけど、6頁漫画なら、むしろこの手法は間違いじゃね?
ともあれ、最終頁の、らしさ大爆発が めっさ ステキでした。
霧恵昌朮 『 SUCCESTARS 第2話 Kissing gourami 』 ( 12頁 )
さて第2話なんですが、これを見れば第1話での疑問はある程度解消されるワケですが、なおのこと第1話の大切さを感じて欲しいとか思っちゃいました。
最近になってヨシミツは性に目覚めちゃって、だから恥ずかしいというのが基本線だったようですが。
ともあれ、ここでは、ヨシミツに好きを伝えたいティルム ( 1話ではティム ) に対して大ババ様 ( サザンイーシュナーの知恵袋 ) が知恵を授けます。
それはキッスです。
ギャグセンスはかなり磨かれてきてますが、まだ 『 LeviAThaN 』 並に大笑いできるところまでは到達してませんね。
ひとつひとつのアイデアにはなかなか秀逸なものも混じってるのですが、とゆーより、コマ単位でのネームセンスだけなら、プロ入り直前とさして変わらないレベルなので、アイデア、ネタの拾い方、コマ単位でのセリフに限っていえば、充分初期のころからセンスはバツグンだったんだな、と納得させられました。
はっきり言って、画像も飾りたいのがありすぎて、迷いまくったくらいでしたが。
あと、おもしろいかどうかは別にして、漫画として整理されていて読みやすくなってるのがいちばんのポイント。
はっきり言ってしまえば、初読で理解できない漫画って、ポップカルチャーとして著しく失格に近いと思いますしね。
全体を支配するギャグ風味がツボに入りそうで入りきらないのは、やっぱり漫画部分のアソビ不足で事象だけが先走り、シリアスな人物像がイメージしきれないってところにあるんじゃないかなと思います。
そんなワケで、一般漫画でも、よりリアル系なものを好む私にとっては霧恵作品の中でもいちばん喰いづらい本作ですが、漫画チックな作品が好みな方なら、そこそこ楽しめる内容ですね。
あと、あとがきに「理屈と説明漫画だった 『 生者 』 の轍を避けて説明台詞を極力無くし、絵で世界観を徐々に顕してゆく方法を 『 サクセタターズ 』 ではやろうとしていた」という記述がございますが、たしかに同人誌では困難でしょうし、ぜひスタンディングオベーションまで辿り着いて欲しいですが、
オイラに言わせれば、まだぜんぜん足りないじゃねーかよッ!! ( 怒
とか思います。
あと、いちどでいいですから、無声劇に挑戦して欲しいと、マジで思いました。
この作品、無声劇でもつくれますよ?
霧恵マサノブは 『 LeviAThaN 』 に於いて、もうすでに、バツグンのネタ拾いから物語を紡ぐすべを魅せつけてくれたワケですから、あと私が望みたいことは、
『 既成概念に一切依存しないところから紡がれる完全無欠なオリジナリティーによる物語世界の構築 』
と、
『 セリフにまったく依存しないところから魅せつける絵とコマ割りによる漫画としての芸術 』
くらいなんじゃないかと、改めて感じさせていただきました。
そういう意味 ( 大義 ) でいえば、これだけ伝えさせていただければ、私の役目はもう何も残ってないような気もします。
無論、そんなものを描けというのではなく、そういうことを平気でできるだけの力をもっててほしいというだけです。実際問題として、これをやってしまうことは霧恵マサノブ本来の力 ( 特に言霊力 ) を封印してしまうことになるわけですから。
まあ、神業とまで湛えられていた得意の跳躍と、回転をもを封印して、常に、地に足を着けて 『 牧神の午後 』 を踊った 『 ニジンスキー 』 なものを観られるものなら観たい と 求めてしまうのは、オレの悪癖なのですが、夢を語るだけなら罪にはなるまいと。
なお、続編を断念したくだりは著者HPにもあるけど、
ただストーリーの根幹に性行為が直結する設定なので一般での展開はちょっと難しく
ということなので、
『 大冒険海産物エロ漫画 』 は、メチャ観たいですが、できればエロコメよりシリアスで希望なんですが ( 爆
終わり。
奥付はポエムゆーよりコメントだが
実は
ティルムの
ほっぺのトゲからは
毒が
出ます ( 超伏線 )。
… ほんとかよ
↑観てえじゃねぇかよッ
霧恵昌朮 『 GIGATON HEARTS 』 ( 74頁 ※versionA 76頁 )
発行:月刊制作委員会 (仮)
発行日:2001年11月14日
月刊ワンパ66~70号 掲載 大幅な加筆修正アリ
※versionAはファーストカットで白雪姫部分のカットを説明的なカットに差し替えたヴァージョンが後のもの。versionAはあとがきが2頁多い。
6冊目の単行本
作画力 ★3の下
発想力 ★4の上
コマ展開力 ★4の下
物語性 ★4の中
世界観 ★3の上
テーマ ★5
想いのドラマ ★4の上
漫画的総合評価 ★4の中
ファン的宝物度 ★5
さて、霧恵マサノブの6冊目なのですが、
結論から言いますと、霧恵マサノブの商業デビュー前の作品で、
いちばん大好きなのがコレです☆
とゆーワケで、レビューです。
霧恵昌朮 『 GIGATON HEARTS 』 (65頁)
※目次頁にキャラ表がありますが、キャラ名が2つのヴァージョンで異なります。
先に書いてある方がAです。
レビューはオイラが滅茶苦茶大好きなAの方で語ってゆきますのでご了承のほどを。
郁見蘭 ( いくみらん ) ⇒ 白雪郁美 ( しらゆきいくみ ) = 白雪姫
原田三苗 ( はらださなえ ) ⇒ 継妃早苗 ( つづきさなえ ) = 魔法使いの継母
海野君 ( うんの ) ⇒ 皇馬貴人 ( こうまたかひと ) = 白馬の王子様
南沢槇夫 ( みなみざわいくお ) ⇒ 侏儒槇夫 ( すにまきお )
安全保安部 ( 7人の小人 )
【版違い対応図1】
【A】
それは心身症の一種と言えた。虚血性心疾患に似た初期症状を呈し、外科的処置無しでは 確実に死に至る。
しかしその術式の難度は極めて高いため
世界でも成功例は数えるほどしかなく
…また、
在る理由で 術後の生存率も著しく低かった。
【⇒】心臓中心の胸内図
その奇病は 心臓病であると同時に 心の病であるとも言えた。
発症の初期においては 外科的処置無しでは確実に死に至る。
手術の成功率も予後の生存率も極めて低い その奇妙な複合疾患は
新世紀初頭からゆっくりと 世界的な広がりを見せつつあった。
※versionA と 改訂版で 内容の異なるコマの説明文のみ
versionAは【A】で、改訂版は【⇒】で文字のみ抜き出しますので、お手元の単行本と照らし合わせながら、おたのしみくださいませ。
親友 蘭の病気の事実を知り、泣き暮れる早苗という図 ( たぶん
そんな彼女に「希望もあるの」と、蘭。
『 意志は 全ての力の根源である 』
2頁目の上半分で、 『 新世紀学園青春奇譚 ギガトンハーツ GIGATON HEARTS Presented by 霧恵昌朮 』 のタイトルロゴが入ったコマがすでに重要イベントで、
校舎をつなぐ渡り廊下の塀の縁に乗っかっちゃって、いままさに飛び降りようとしている三苗が、慌てふためきとり囲んだクラスメイトたちをまえに息を吸い込んだところ
して、息を切らせて廊下を走る女生徒の後ろ姿 ( 多分に蘭 ) 1コマはさみ
般若の形相でまくしたてる三苗の顔アップで
「――郁美蘭のことばっか! 私の気持ち知ってるクセにッ 蘭はあんたのことなんか全然眼中にないわよッ!!」
どうやら言われてる張本人らしき男子生徒の「彼女は君の親友じゃないかッ!」
に対して
明後日を向き「そう親友。
して振り返った顔にはもはや険は無く、憐れみすらたたえる穏やかさで涙さえ溜め、
「そして臆病者のあなたには絶対に手に入らない。
だってあの娘 …… だもの。
あげるわ。これが証拠よ」
そう言いはなち、投身自殺する三苗
物語の始まりにして、中核を成すシーンでもあるこの6頁目の
3コマ目
落ちてゆく三苗の「信じろ」
なセリフ
そして
下段で蘭の頭に双葉が開く
という
業
この一連のシーンに注目して読んでいただければ幸い。
アニメとかなら間違いなく、スローモーションとストップモーションとカットバックを組み合わせて編集するものと思われますが、
本作品の最大のミスは、このシーンに1頁しか、割けなかったこと
なぜなら、読者に感動を植えつけるのは、常に
網膜を通して脳神経経由で胸まで浸透するトキメキ>想像力に訴える情報の提供
であると、ワガママ身勝手目線で語らせていただきますね。
そしてその一ヶ月後 海野君が転校してくる
「ん~じゃあ彼の席は郁見くんのとなり」
担任教師の場をわきまえないニブチンボケにパニクる教室の図
指し示したるは花瓶の置かれた机
唯ひとりパニクらない女生徒の存在で当事者と推測する海野
海野 ( 胸中 ) 「僕は逃げてきたのだ。
そしてここで終わるつもりだった。
そんな海野にいきなり絡んでくる生徒会長 南沢
放課後話すまで、アレとの接触は許可しないとエラソーにのたまう
ここまで流れはすこぶる良好
なれど8頁目の1コマ目は さすがにちょっと漫画過ぎかも
ここまでデフォルメしちゃうとリアリティーが著しく低下するので、ほくそ笑む程度の方がよかったんじゃないのかな?か。
海野 ( 胸中 ) 「休み時間になると必ず 彼女のところに友人たちがやってくる。
いつも決まって2人組。
あたりさわりない会話でたわいなく笑い合う。
でも
彼女は級友たちのうつろな笑いに ひどく不思議な色をした瞳で答える。
終業チャイムが鳴ったとたんに無人になりはてる教室で
ただひとり蘭だけが、海野の心中の疑問に 勝手に答える
惜しげもなくさらした左の乳房に刻み込まれた疵跡
蘭「これが理由。もうだから私には近づかないで」
海野「ケータイ番号教えて」
暮れなずむ夕焼け空をバックに帰宅段階に移行する海野を待ちかまえてた南沢
南沢「郁見 蘭は…感情が昂ぶると大爆発する人間爆弾なのだ!」
海野「バカ?」
南沢「冗談や悪ふざけでヒトは命をかけたりしない! 貴様は死を賭して証明したその高潔な魂を侮辱するのかッ!!」←すみませぬ霧恵サマ、オレ、冗談や悪ふざけで命かけるタイプですう ( パニクってる
さておき、ここで自殺前の早苗のシーンが挿入される
三苗「だってあの娘 爆弾だもの!! すこしの刺激で大爆発する危険な人間なのよ! 彼女の胸の大きな疵跡ッ
爆弾心臓 (ギガトンハート) の それが証拠よ!!」
南沢「真実を決めるのは事実でも常識でもない。
『
説得力 』 だ。
原田三苗はそれに 自らの命をかけた。
我々にはその意志を継ぐ義務がある
以来、爆弾少女 郁見蘭は あらゆる刺激から保護され続けてきた。
我々、全校生徒一丸となって 彼女の精神が平穏になるよう環境を整えてきたのだ。
( 中略 )
我々は本気で必死だ」
ここで、どのくらい本気かということを証明するために、トイレで粛正されるボケ担任の図が読者に提示される。
そして、彼らにとって蘭の存在が祟り神であることへの海野の怒りが爆発する
それらは 『 はぶんちょ 』 『 孤独 ( ひとり ) 』 という言霊によって決定づけられる
【版違い対応図2】
【A】
生存率を低下させ 本症例を非常に得意なものとしている大きな特徴。そのひとつは 【わずかなショック、精神的ストレスで心停止を引き起こす】 という点である。
【⇒】シルエット人体の心臓に見たてたハート&全方位よりの矢印
この疾患の予後における極めて大きな特徴は次の通りである。
○被催眠性が異常に昂進する。
○微細な心意的ストレスやショックで心停止を引き起こし死亡する。
海野 ( 胸中 ) 「死ぬのは怖くない。手術のたび このまま麻酔から覚めないことを 何度も覚悟した。
命の価値も悟った。
死線をくぐれば誰でも皆 命はさほど重くないことに気付く。
だが
【版違い対応図3】
【A】
湧き上がる歓喜 ( よろこび ) 怒気 ( いかり ) 哀感 ( かなしみ ) そして 愛情 ( いつくしみ )
その全てが対象 ( ストレッサー ) となりうる。
【⇒】胸をおさえ倒れている青少年と驚愕の母
ヒトとしての感情 歓喜 ( よろこび ) 怒気 ( いかり ) 哀感 ( かなしみ ) そして 愛情 ( いつくしみ )
その全てが心停止の引き金に成り得る。
ほどなくして 僕と会話する人間は 一人もいなくなった。
友人、先生 そして両親までもが僕の存在を無視し始めた。
なにが引き金となって僕の心臓が止まるか わからないのだ。
全ての言葉と行動に責任を持てる人間はいない。
いや 親しいからこそ その死を背負うことができないのだ。
【版違い対応図4】
【A】
人間は自らの立場をコミュニケイションで確立する。
それを失うことは 自己の存在の基盤を喪失するということ。
彼らは 深い孤独の中でしか生きることをゆるされない。
【⇒】蟻の生活
コミュニケイションの喪失、それは社会性の生物である人間にとって 自己の存在の消失にもかかわる。
ひとはひとりでは生きてゆけない。
だが、彼等は 深い孤独の中でしか生きていくことを許されないのだ。
でも それでも僕は 誰かに話しかけてほしかった。
死ぬかもしれない。
それでも僕はヒトと触れ合いたかった。
だから
だから転校してきたのだ。
まだ誰も僕を知らないこの街に。
一人で暮らしはじめた。
僕が再び存在するために。
だからあの時 本当に嬉しかったのだ。
たとえどんな形であろうとも 他人とかかわりを持てたことが。
彼らがこの疵を知れば 僕は再び孤独に落ちる。
もう二度と一人でいることに耐えられない。
でも
僕は出会った。
胸に同じキズを持つ少女。
気持ちを分かち合えるひとと。
ふと垣間見せる運命を呪い 世界を憎み それでも縋るさびしいひとみ…
彼女を助けたい。
※本当に残念なのは、文字でしか抜き出せないことで、無論、霧恵マサノブの紡ぎ出す言葉はそれだけで言霊レベルの魔力を帯びているワケなのだが、これらに被るシーン 海野のいま とか 想い出とか あのときの蘭の動揺と驚愕と猜疑心と期待で綯い交ぜになった一挙手一投足とか を同時に皆様に配信できないのがとても残念。
※しかし、同級生に対して 『 少女 』 は、あり得ないと思う。
ともあれ
4頁にわたる当シーンのラストを月窓を見つめる蘭の後ろ姿へとフェードインさせ、
翌26頁目へ
電話がかかってくることを期待してる自分への嘲笑
「ばかみたい」
ひとりごちたとき、折しも
ケータイが突然鳴り響く
口から心臓が飛び出んばかりにドギマギして
ほとんど痙攣状態に震えながらも さしのべる手
無論、彼女の答えは決まっていた
ずいぶん昔から
※頁の7割を占めるこのシーンも実にミゴト。
その心情までをも繊細に表した絵は、いとも容易く文字に変換できる
ここで、南沢方面にたびたび登場するという設定な三苗の夢
「ヒトが本気で信じればかなわないことなんてないの。本当の本気なら日本はインドになるし死んだ恋人だってよみがえるわ。でも 誰かを好きになることだけは どうしようもないことなのかもしれないわね」
そのあと
「蘭を呼んだわね? …。時間無くなっちゃった。 …。 いっそ くっついてくれたら 諦めもついたのに…。でももうだめ。閉じてしまうわ。蘭を死なせはしないし あなたを蘭にはわたさない。信じなさい。これが 証拠よ」
ことばを遺し投身する彼女に悲鳴をあげ手を伸ばし
そして
南沢がケータイ音で現実に引き戻されたのかはともかくも、二人の会話は保安部監視班によって傍受されていた。
翌朝
海野が登校しようと玄関を開けると、そこにはコンビニ袋で覆面をした全校生徒どもが待ちかまえていたのでありましたあッ!!!!
さあ、どうする?海野?
ってとこで、海野君と安全保安部率いる全校生徒の壮絶な追いかけっこに突入するワケだが、初期の頃は状況説明がまったくもってヘタクソでアクションシーンで何やってんだか解りづらかった霧恵マサノブも、この頃になってくるとかなり判りやすくなってきてて、そこそこレベルには堪能できます。無論、まだレビアたん時代レベルには全然届かんが、充分、漫画として堪能できるし、何よりオバカクサイ森山塔風味のシュールがバツグン。
とにかく ドア開けた途端くだんの覆面軍団がゾロゾロの図が圧巻。インパクト絶大な大爆笑クラスだが、あえてツッコミいれさせていただくなら、左頁上段のゾロゾロ図は、絶対に見開きでやって欲しかった ということくらいであろうか。
とにかく1対全校生徒?な爆裂鬼ゴッコの、なんとか火の粉を払ってきた海野だったが、
心臓が苦しくなってきて
そこへボウガンが直撃
誰でもよかった。
誰かの記憶に残って死ぬ。
殺してもらう。
それが僕の目的だったはず。
もういいじゃないか。
ここで 終わっても。
だか、しかぁしッ
倒れかけた海野の脳裏にそのとき浮かんだのは当然アレだったワケで
簡単に死ぬワケにゃいかんだろーがッ
みたいなカンジで
乾坤一擲☆
恋はミラクル★火事場の馬鹿力☆
バイキルトどころかオールステータス200%アップ ( 当社比 ) なベルセルク状態か月夜のライカンスロープかってくらいの勢いでバッタバッタと敵を薙で斬り
そしてついに
キレマクル南沢の背後に海野君登場スの巻ッ!!
「孤独を侮辱した君には…多分わからないと思う。死ぬより辛くて怖いもの――
結果は問わない。受けとめてみせる。約束したんだ。
必ず学校に行く」
額を蛇女みたいに筋立ててピキピキ軋ませながら南沢
「へ~ かっこいい~」
ほぼ互角の組み合いから、海野の強烈なパッチギを鼻っぱしらに受け、一戦地にまみれる南沢
南沢「自分をッ 世界をッ 相手の命さえ厭わぬほど 貴様の愛は高尚なのかよぉッ!?」
【版違い対応図5】
【A】
もうひとつの特筆すべき特異な点。
それは異常ともいえる 『 プラセボ効果 』 の高さである。
彼等は精神のありようが肉体に顕著に現れる。
つまり
『 きわめて 暗示にかかりやすい 』【⇒】心臓と脳
症状の最終段階。
彼等の持つ全ての身体常識を超える被催眠性は 能力を大きく変動させるほどの 『 精神力 』 と名を変える。
極めて暗示にかかりやすい心を持ちながら、彼等の精神は肉体を、いや 『 人間 』 を陵駕しているのだ。
心停止は 『 喜怒哀楽 』
人間としての感情を自覚した瞬間に発生する。
まるで…
まるでそれが
ヒトの 『
種 』 としての安全装置であるかのように…。
ここで、南沢の放った突きが海野の制服を裂き、その胸の疵跡が露わになる
一瞬、躊躇した南沢に
勝負を決する海野渾身の一撃
そして46頁目
胸をおさえ息をきらせて ついに蘭のもとへたどり着く海野
「大丈夫?
海野君」
やっと名前を呼んでくれた蘭に、心から伝えたいと思ったこと
「僕は 君が…す
告白を遮り、自分宣言する蘭
「私は爆弾なのよ?」
彼女の生脚方面から空をバックに驚きを隠せない面持ちで海野
「知ってたの?自分が爆弾と呼ばれてることを」
の問に
「あの日 あの時 あの場所に 私もいたもの」
答えるところから始まる
セリフを最小限に絞って絵で魅せた回想シーンな3頁半がすこぶるステキ。
3コマ目:医務室から走り出す蘭
蘭「失礼しますッ」
先生「まッ待ちなさい! 君はッ」
あの日、検診中に委員長から連絡を受けたわ
4コマ目:事件当時の渡り廊下の引き絵
5コマ目:ひた走る蘭 ( 引き絵
蘭 ( 胸中 ) 「なぜ?
6コマ目:息を切らせ ひた走る蘭 ( アップ
どうして三苗? 一体なにがあったっていうの?
7コマ目:廊下と呼吸音と心臓の音
47頁目
1コマ目:石化したように停止する蘭
2コマ目:胸をおさえ惰性で二三歩よろける蘭
三苗の声「だってあのこ爆弾だものッ」
3コマ目:蘭の震える口許のアップ 汗ダラダラ
蘭「あ゛」
4コマ目:「ガクガクに膝が笑い地面に着きそうなくらい折れ曲がり胸をおさえ尻を引きくの字になって目をみひらき息も絶え絶えに大口をあけ意味不明な嗚咽を漏らしながら大量の唾液を垂れ流す蘭
蘭 ( 胸中 ) 「心臓止まッ ダメ!行っちゃ!今動くと私…
死ぬ。…三苗 三苗の声!すぐ上にいる! 私行けないッ死んじゃう!助けっ……
三苗ェ!!5コマ目:閉じた目から涙
蘭 ( 胸中 ) 「声 出ないよッ!
6コマ目:渡り廊下の塀の上に三苗・そのすぐ真下の廊下の窓ごしに蘭
三苗「これが証拠よ」
7コマ目:蘭のひらいた涙目のアップ
48頁目
1コマ目:蘭方面から目の前の窓の外を三苗が真っ逆さまに落下中
2コマ目:目をみひらく蘭 ( アップ
3コマ目:目をみひらく三苗 ( アップ
4コマ目:必死の形相で手を差し延べる蘭
49頁目
1コマ目:蘭に気づいて手をかざし返す三苗
2コマ目:その面持ちが ほんのちょっぴりさみしげな微笑みをかたちづくり
3コマ目:当然の帰結としての大地との激突
そして 現在方面へ
「クラスで見せた君のあの表情 ( かお )
あれは世界 ( みんな ) への憐憫 ( あわれみ )と諦念 ( あきらめ ) 。君が自らを爆弾と自覚しているなら… 『
精神の動揺が起爆のトリガー 』 だとする彼らの主張と喰う違う。
君は爆弾なんかじゃない!!なのになぜ皆にその事を言わないの?
システムの中核でいれる安心感? それとも真実のその先にある真の孤独を予見したから?」
「あの時私は立ち止まってしまった。三苗を救えたはずなのに。
三苗が死んだのは私のせい。三苗が私を爆弾と呼ぶのなら…
私は爆弾でなければならないの」
「
嘘だッ! 君なら知っているはずだ! 『 死 』 は何の理由も意味もなく突然やって来るものだ!!」
あっけにとられた顔の蘭がポイント
「その胸のキズから学んだはずだ! 死者の意志なんて残された人間の願望のあとづけにすぎない!!
君 ( ぼくら ) が他人の死に責任を取る ( しばられる ) ことなどないんだ!!」
横を向く蘭
「海野君には友達…親友はいないの?」
沈黙の海野 ( 引き絵
「私と三苗は親友だったの。私が爆弾じゃなかったら 三苗がうそつきになっちゃうもの」
海野顔を上げ、確信した顔つきで一歩前へ
「やめてッ 来ないで! あなたは約束を守ってくれた。私を人間として見てくれるただ一人の友人よ! だけどッ だけどあなたに私はわからないッ!! どんなに親しくても言葉を重ねても
ひとが互いに分かり合えることなんて 出来ないものッ!!」
ゼロ距離寸前まで接近してきた海野に絶体絶命顔の蘭
「そうかもしれない。…だけど努力する。僕が多分 世界中で一番…かぎりなく君に近いから」
「そのキズ…」
「それでもまだたりない?」
蘭にキスする海野
キュンする爆弾
南沢「君の勝ちだ 三苗君」
核融合反応風味の図 ( 割り込みコマ有りのほぼ見開き
※割り込みの小ゴマがやはりショボイところが、商業レベルなら問題。
それいぜんに核爆発的シーンも、なんか在り来たりで独創性も芸術性も不足。
人間ドラマ部分はバツグンだが、やはりそれ以外の画力は大きく劣ると痛感。
【版違い対応図6】
【A】
意志が全ての力の源であるのなら 『 概念 』 こそが魂の引き金。
本症例の 『 反効果 』 を乗り切った 『 強い想い ( ギガトンハート ) 』 の持ち主達は この先 自分達を拒絶したこの世界をどう変えていくのか?
まあそれはともかく…
【⇒】手のひらにそっと包まれたリンゴ
卵が先か 鶏が先か それは判らない。
ただ
意志が全ての力の源であるなら概念こそが魂の引き金。
これが大きな、命の 『 ふるい 』 だとするなら…
本症例を生き残った 『 強い想い ( ギガトンハート ) 』 の持ち主達は 自分達を拒絶したこの世界をどう生き ( かえ ) てゆくのだろうか。
で、冒頭シーンの拡大版へ
蘭「泣かないで三苗。希望もあるの」
三苗「…希望…!?」
蘭「うん。この手術 このあいだ初めて日本でも成功したの。高校生の男の子。私と同い歳なんだって。すごいよ尊敬しちゃう。私、いつか会ってみたいんだ。その子に。私に勇気と希望をくれた恩人に。…手術が終わって私が生きてれば…だけどね」
三苗 ( 泣きながら ) 「会える! きっと会えるよ!! 信じれば かなわないことなんてない!!」
蘭「三苗…」
三苗「親友だもん 応援するよ なんだってやる。…だから だから
死なないで…」
※だから死なないで…は、別コマの方がよかったかも。
蘭 ( 引き絵 ) 「ありがとう」
空と雲と風
でもって、現在方面へ
さて、どうなったかって?こっからラスト4頁はバツグンすぎるのでナイショ ( ゴメン…
ただし、ラスト頁は、やっぱり元ネタ知ってない方のためにもversionAじゃないと不親切かと思われ。
著者HPの作品解説欄に
○某四季賞で「生者」が準入選だったことに得意満面になって、これでプロ入り決めたる!と自信満々で投稿したらものの見事に落選した作品。苦い。
●後に登場人物の名前と「白雪姫」パートのカットを差し替えてわかりやすく(ある意味ではわかりにくく)した別バージョンを製作。ここに載ってるのは後期バージョンで、
最初のバージョンはタイトルの下に「Version A」の文字が入っている。久しぶりに読み比べてみるとやはり無印の方が完成度は高い。VerAはちょっと業が深すぎる。
という記述があるが、
個人的になら圧倒的にVer.Aの方が好みっス☆
また、某四季賞落選ですが、 『 生者 』 はテーマは素晴らしかったけど、やっぱり説明が勝ちすぎてで絵で伝えきれるまでいってないし、どう観ても、こっちの方がステキだとオレは思うのだが…。まあ、オレが審査員だったら、これ間違えなく載っけてますナ。
ってなワケで個人的に霧恵マサノブの同人作品でベスト3を選ぶなら
第1位 『 ギカトンハーツ 』 四季賞落選
第2位 『 生者の刻 』 四季賞準入選
第3位 『 ヤクヤのカバネ 』 ※まだプロローグなんだが外せねえッ
次点A 『 のり2 』 バカすぎ★ 絵はショボイけど大好きサ
次点B 『 反逆のピエッタ 』 ※これもオープニング状態だが長編にリメイク希望っス
次点B 『 電波塔の魔法遣い 』 四季賞佳作
と、なるでしょうね、やっぱり。
さて、大好きな作品だからこそ、恒例?のケチのつけまくりとしては、
進歩はしてわかりやすくはなってるとはいえ、追いかけっこなアクションシーンが、やっぱりインパクトのつけ方 強弱に問題あって まだ超ドキドキワクワクイベントレベルには遠いってことと、
三苗の自殺ですね、やっぱり。
このイベント抜きにして成立しなかった物語なんでアレなんですが、死がもたらした効果は絶大 ( ってか、発端から要因からすべからく担ってて蘭やクラスメイトたちの生き方さえ決定づけてるワケなんなんですが ) なれど、だとしたら、最重要キャラの割りには、そこまでの心境に至る三苗の人物像とか人生観が圧倒的に不足してるんで、ドラマとしての説得力だけはちょっとだけ弱いです。
ぶっちゃけ、私には三苗の性格がよくわかりませんでした。思い込みが激しすぎる子ちゃん+感情の起伏激しすぎる子ちゃんだというのはわかるんですけど…。ちょっと漫画専用性格人間にみえてしまって…。推測だけならできるんですが、単刀直入に言うと、シンクロできませんでした、ゴメンなさい(汗
まあ、三苗の人格設定まできっちり描こうとしたら半端ない頁数になっちゃいそうですが。
圧倒的にグリムの 『 白雪姫 』 の方が、登場人物のリアリティーは高いですね。
他のキャラのアレンジは唸るくらいステキだっただけに とても残念至極。
まあ、霧恵マサノブが描きだす女性キャラってリアリティー欠如なのは毎度のこととしても、『 いのちをかけて 』 ならともかく前提が 『 いのちをすてることによって 』 なところが、生き物としての応援基準からズレすぎてるとゆーか、やっぱり嫌いな選択肢だってのも感情移入の妨げになっちゃったのかもしれのせん。
あと、基本、ファンタジーとはいえ、この作品も一部アクションシーンなどを除けば、ほぼシリアス一辺倒なわけですが、やはり至る所に霧恵流ギミックが漫画チックに配置されてますので、純然たるシリアス系とかではなく、アニコミ的誇張表現法に基づくシリアスですので、リアリティーのほどは、やはりちょっとだけ微妙かもしれませんよ。
学園ドラマにしては、セリフがちょい文語的なのが、ちょっとだけ気になったかも。
いや、あと、ちょっとあとがきおもしろすぎるんだが…
このへんの、文章書くセンスってのはバツグンのものがありますね。
出だしのバカさかげんはレビアたんクラスだし
黒最強表現色論も見過ごせないし
大好きなシーンはいっぱいありすぎるんですが、あえていくつか挙げるなら
蘭の告白から南沢の告白のシーンまで
海野帰宅後の自己紹介的反芻シーン
コンビニ覆面生徒集団登場1&2コマ目
海野ボウガン喰らって倒れかけるも復活
海野、南沢へトドメの一撃
蘭、三苗投身自殺の回想シーン
「親友はいないの?」~ラストまで全部
ってなところです。
もし霧恵マサノブの漫画を1冊しか持てないという法律ができちゃったら、『 海贄 』 とコレで散々迷った末、やっぱり 『 海贄 』 にするだろな、というくらい個人的にはお気に入りの一冊です。無論、Ver.Aです ( そんな法律なんて もし施行されても守りそうにないけどナ
未来 ( いつになるんだ… ) にはDL販売とか考えてくれてるみたいですが、何が何でもこれだけは可及的速やかに再版して欲しいなあ ( 懇願
さて霧恵流 『 白雪姫 』 おたのしみいただけましたでしょうか?
霧恵昌朮 『 電波塔の魔法遣い 』 ( 40頁 )
発行:月刊制作委員会 (仮)
発行日 2002年5月5日
単行本内に初出記述無し
7冊目の単行本
作画力 ★3の下
発想力 ★3の中
コマ展開力 ★3の上
物語性 ★3の上
世界観 ★3の上
テーマ ★3の上
想いのドラマ ★3の上
漫画的総合評価 ★3の中
ファン的宝物度 ★4の下
さて、霧恵マサノブの7冊目なのですが、
結論から言いますと、某四季賞佳作という評価が額面どおりの内容ってところです。
短編としてきっちりまとまりがあり内容も充分足りていて
どこかで見たら 名前をチェックしてマークしておくレベルにはありました。
霧恵マサノブとしての凄さというのは、それほど強くにじみ出てる部類ではないのですが
逆に、読みやすい部類ではあります。
つまるところ、一般論で、より読みやすい プロフェッショナルな進歩の跡がうかがえるワケですが
正直なところを言ってしまえば 脳髄がスープになるようなところまではまだ逝ってないので
べた褒めはしたくないですね。
でも、『 ヤクヤ 』 に繋がる 果ては 『 LeviAThaN 』 の対的物語の序章として、ファンには必携品なのでありました☆
著者HPの 『 このごろ 』 記事内の 2009/10/14 の Web拍手へのコメント返しで 『 もう残っているのは「電波塔の魔法遣い(復刻版)」しかありません 』 とゆーのがありますが、
そんなワケでまだ唯一購入可能な同人誌ですので、
今週末
15日 に
有明 で行われる 同人誌即売会
『 コミティア90 』に
参加しますとのことなので
有明東京ビッグサイト西1ホール『 に24b 』の
サークル名『 月刊制作委員会 (仮) 』にて
大好評絶賛販売中☆と
著者HPに書いてありましたので
さすがにネタバレしすぎないように注意しつつ
とゆーワケで、レビューです。
霧恵昌朮 『 電波塔の魔法遣い 』 ( 32頁 )
冒頭、映し出されるのは電波塔
背負子と籠を各々背負い、道ゆく爺に問いかける少年の名は吉坊
「あれ、どこまで繋がってるんだろ。果てってあるのかな」
「知ってどうする、吉坊。そういう事は皆 眼鏡 ( ミカガミ ) さまにまかせておけばええ」
色々あって ダメになった 世界のかたすみその小さな村に カミさまと 魔法遣いがいたでもって、タイトル
簓の者がやられたと嘆願にくる村人に眼鏡 ( 魔法遣いな婆 ) は「ふん、またハグレガミかい。ちょっかいでも出したのかい」と悪態つき、シノ ( 弟子 見かけは左腕が欠損した若い女性 ヤクヤ読んでるならモロバレ ) にもってこさせた本に一瞥をくれるや、「お前やれ」と振り、物語ははじまる
慌てふためくシノを尻目に、村長に用と立ち去る眼鏡
茶をすすりながら眼鏡は、素っ気なくも悪態たれながら、自らの老いを語る
そして、
村にマレビトが来ることを告げる
川で洗濯しながら吉坊はシノに魔法遣いになりたいとごちる
「知りたい気持ちの強い人間だけが魔法遣いになれる」と、師の言葉をシノは引用
そして、五日後、はたしてマレビトはやってきた
村人総出なお出迎えに、マレビトがズッコケるシーンは、いま霧恵的になら少々物足りなくもあるが、物語の展開としてのソレなら充分伝わるのでよしとする
歓迎の宴で村人が「明日の案内はこの吉憲ががしたいと」と、申し上げるシーンで、「よろしくな。吉坊。私は炎縄という」と、返すが、無論それはマレビトがたんなる客人 ( まろうど ) にあらず真にマレビトであるが所以だと、オイラはは好き勝手解釈
この次のコマで、
吉坊がマレビトにシノと同じにおいを感じることと、
もうひとつのことが同時に読者に提示されるワケなんだけど、
これは少々勿体なく、2コマに分けてほしかったというのがホンネ。
ともあれ、いかように村へ来られたか?という村人の素朴な質問に「生きた電線伝って来ました」の回答が、面妖と感じるか、なるほどなと感じるかは、個人の霧恵侵蝕率に因るところが大きいんじゃないかなと。
して翌日
「貧しい村だね。生活は苦しいかい?」というマレビトの質問に吉坊は
「意味がよくわかりません。…貧しい?」
と、隔離社会に生きる少年らしさを満開にして答えるキャラを提示することによって、このムラがどんだけ世間と乖離しているのか知らしめる手腕は流石のひと言。
そして思いだしたように「じいさまが おハグレさまのおかげで今年は大変だと」
おハグレさまとは「昔から山にいらっしゃる八本脚のカミさま。だけど荒らしたり襲ったり おそろしいカミさま」であるそうな
そのあとにつづく、「だけど平気。魔法遣いの眼鏡さまとシノ姉さまがいるから」は、一般論で言えば、屈託のない少年としてのそれを充分伝えてくれてはいるものの、作品世界の全体像としてのイメージから引き出されたものとしては少々足りないかなとも思う。いろいろな意味で。
ともあれ、次コマに電波塔方面を2コマ並べたのち、
「吉坊。あれがどこに繋がってるか知ってるかい」
「えっ?」と首をかしげる吉坊を振り向きもせずにマレビトは「外の世界」と続ける
場面変わって、
眼鏡はシノとの問答の末、晴れて後継者と認め、奥義 『 世界の鍵 』 を授けた
でもって、次のコマが霧恵マサノブらしさに満ち溢れたバカさかげんなのだが当然、いま霧恵力なら大爆笑クラスのなごみ的ツナギも、この頃の漫画力ではクスッと微笑み程度が関の山。
でもって、
と、テーマをひけらかし、
「かわいいシノや。知識に喰われるな」と遺し、
長い間村を支えた老魔法遣いは 鴨居で首を吊った
さて、ここまでで32頁中14頁が経過している起承転。残り18頁中16頁で物語は決着を見、後日談な2頁分の一年後で、読者に対して読者だけの続編を想起させるための結びをつけて〆るのだが、
いちおう、かいつまんで軽~く解説しよう
このあと、眼鏡の葬儀で吉坊が「どうして眼鏡さまは死んじゃったの?」と尋ね、炎縄が「究極の本を読んだのだ。その内容は古く また常に新しく 永遠に終わらない。人の身とはいずれへだたる。知識とはそういうもの」と、答えますが、コレ読者に対しての声としては素晴らしいですが、漫画としてはダメです。零点です。あえてこの展開を選んだワケですから吉坊が理解できる言葉で紡がなきゃ、ドラマとしてはどうしよーもないと思います。
すくなくとも この物語の登場人物で 『 本 』 の 存在を 知り得る者は 3人しかいないはずなのですから。
それを受けて吉坊は「シノ姉さまもいつかああなるの!?」と訊きますが、「どうかな」と御茶を濁します。
数日後、託宣の日
「ob409E24 ( おーびーよんれいくーいーにーよん ) 」
一斉にスタンバるモニター群
音声入力 呪文 ( パスワード ) 。
『 世界 』 と接続。
Enterキー
そして、情報の洪水
その内容は古く また、常に新しい。
それは世界の全てを納めるがごとく 常に更新され
変化し続ける魔法の本。
ゆえに永遠に 未完であることを義務付けられた
本の中の本。
膨大な量の知識
私が生きているあの村は なんとつまらなく ちっぽけなのか
そして、ハグレガミさまの関係資料を見つけだすシノは、
一瞬、目を見開いて驚愕の悲鳴が漏れ落ちないように口を手でふさぎ、
次の瞬間、世の理を知ってしまった者のごとく、狂笑を漏らすのでした。クックックックッ、と。
しだいに高笑いに変わる狂笑に、外で見守っていた村人たちが不安に駆られたころ
電波塔下のほこらよりいでしシノはひとこと
「狩ろかー」
その次のコマで読者に提示されるのは 『 対称性二重体 』 の画像付属ネット記事風味
その日からシノ姉さまは新しい眼鏡さまになり、ハグレガミさまはただの獣になった。
でもって、双頭八本脚の猪と村人たちの死闘が繰り広げられるワケなんですが、
「開けてみれば不具の獣ッ! ただの白猪だッ!! カミなどこの世にいるものか!!」
畏れ、びびりまくってる村人たちに気勢を高めんと陣頭指揮で鼓舞するシノ
シノの命により引かれた火箭
もはや風前の灯火なたましいの最後っ屁で、吠えたけるハグレガミ
その姿に哀感を観たシノ
差し違え覚悟な死に物狂いで飛びかかってきたハグレガミに、一瞬の躊躇いがアダとなるシノ
無論、漫画展開的には、次のシーンは定石通りで
この逆転劇な3頁と事後譚なラスト3頁で語られるのは、物語世界自体の謎にまつわることなので、さすがに多くを語れませんが、
『 海 』 に住むという巨大な獣用の槍
石本によって雇われたる者
答えがないことを認識しつつ自らに是非を問うシノ
多くが知識に喰われた世界
などが語られ、シノが去りゆく者に礼をいったところで、2頁の後日談に続き、 『 いつか旅立つはずの世界 』 を思わせぶりに提示して、もとハグレガミさまの在りようを魅せびらかしつつ幕
あなたのハートには何がのこりましたか?
っなカンジなのですが、珍しく1頁のみのあとがき 『付録 謎の読み物』 についてですが、
そのまえに、この作品のテーマは、ひとつではなく、情報によって侵蝕された発達情報社会と文明から取り残されたムラという隔離的集団世界の対比と、カミの存在の否定と いのち の意味と、霧恵流価値基準の提示というのが、大きなところでのテーマなんじゃないかと思うのですが、テーマを実践するためにモチーフとして取り上げられたのは 『 畸形 ( 不具者 ) としての存在意義 』なワケで、このあとがきの大半は、不具者に対する霧恵論で、とても読み応えがありますよ。
それと、
『 魔法 』 とは 『 知識 』 である
という
霧恵理論を考察するうえで欠くことのできない概念を きっちりとしたカタチで書き記したことも 見逃せません☆
『 知識 』 を 極めれば 果ては 『 アカシックレコード 』 にまで到達する 『 アルテマウェポン 』 としての 『 魔導書 』 という概念としてのそれは
『 生き物 』 に生まれついたいじょう 『 進化 』 すべく究極を目指すのが 『 義務 』 とか
それこそ霧恵マサノブのカタチを表す 『 言霊つかい 』 の術者としての 『 アイデンティティー 』 の域まで昇華されている 『 普変的理念 』 の ひとつしての
それとして
もはやオイラの血肉の一部にすらなっておりますが、
この手のことを語り出すともはや止まらなくなってしまう己が腐界の性癖を垂れ流すと永遠に終わりなき無限回廊の迷子となってしまいますので、話を強制的にあとがきに戻し、
さて、インドの 『 ヒジュラ 』 なぞも例に挙げまして、
( 前略 )
科学の布教した平等と愛が広く世界に浸透した結果、不具者は 『 DNA異常による欠陥種 』 として健常者とは線を置く 『 保護 』 の対象となっています。
さて、ここから続く著者の論文に、ことごとく 身勝手にコメントを付けてみようという企画ですので、 ( ※← ) の記号後は読み飛ばしてくださいましね。
では、続きです。
言うまでもなく 『 保護 』 は 『 対等 』 ではありません。
( ※← 言わずもがなですよね。まあ、さすがに24年も生きてきて 『 保護 』 は 『 対等 』 ですと言われる方はほとんど皆無かと思われますが、あえて付け加えるなら、 『 不具者 』 が 『 対等 』 に生きられる時代はだまだ当分の間訪れないでしょう。 『 科学 』 の進歩に 『 精神 』 の進歩がまったく追いついてこない現代社会では、まだまだ要らぬ心労に耐えて日々を生きる 『 不具者 』 な方々がほとんどなんじゃないかなと思われます。46億年くらい未来になら多少の希望ももてますが、当面は無理でしょう。 『 科学 』 と 『 精神 』 が同一集団的空間上でダンスを踊れる日が来るには、まだまだ地球人の歴史が浅すぎますし、 『 反逆のピエッタ 』 を読まれ方なら、人の目指すところの根底が必ずしも理想ではなく中庸であることは理解できると思われますしね )
というくだりがありますし、
また、
( 中略 )
かつてマレビトがよりがみとして奉られたように、ソレは形而上のものではなく 形を持って確かに我々の身近に存在していました。
( ※← 依り代 ( よりしろ ) 的なもの全般と解釈した方が寧ろ妥当かもですが、いずれにせよ、たしかにそこにいる、というカタチで形而下に存在しているという意味に於いては正論でしょう。それはイエスがまだ存命していて、彼の教えが宗教という名の概念に成り果てる前の時代とか、シャーマニズムやアニミズムを信仰している方々とか、現代社会に於いても、我こそ神なりき、な方々はおられるわけですし、ひとつの事例をとりあげて、そんな時代があったとすることは、ちょっと乱暴というか拡大解釈な気もしますが、ともあれ、かつて神の存在を身近に感じられる時代 ( 現在でも地域によってはアリ ) があったということで話を進めます )
カミが身近にいればこそ、闇も畏れも驚きも 情けや慈しみや感動も、また身近にあったのです。
( ※← たぶん、文化圏の異なる地域に住まわれてた方や長く旅されてた方やオトモダチにそういう方面の方がいらっしゃる方なら理解は容易かと。いずれにせよ、神を自分のなかに見いだすことは、現代社会でも、さほど困難なことではないと思われます )
未知なるモノへの畏れの払拭こそが至上目的であるがゆえに、科学はカミを否定します。
( ※← うーん…。科学は証明できないものを肯定も否定もしないと思うのですが…。無論、未知なるモノへの畏れの払拭は当然大きな命題のひとつですが、そもそも科学の至上目的は、未来の私たちへの進化の補足であると常々思ってる私なんですが… )
異形の者から仕事を奪い、彼等に不具者という名を与え 社会生活不適合として保護のもと蔑みます。人類のためと称して自らの体の設計図や精神を解析し 魂を意味のないものとします。
( ※← 前半部分はまつたくもってその通りだと思いますが、自らの体の設計図や精神を解析することは、必ずしも魂を意味のないものと決めつけるわけじゃないと思います。いや、ってか思いたいです。遺伝子の研究によって、われわれがまだまだ進化できる生き物であると解明されたわけですしね )
科学技術を根源とするこの世界で 『 知識を得る 』 ということは、自らの価値を疑うということにほかなりません。
( ※← 人類がすべからく 『 知識 』 を放棄して原始的生活を営むようになったら地球にとっても優しいですね♪ でも過去や歴史はリセットできませんから、このさいその 『 知識 』 を、明日の未来に役立てるために、磨きをかける方がいいんなんじゃないかな。ともあれ、 『 知識 』 が皆無だと霧恵マサノブが漫画描けませんから、却下です )
世に広がる虚無感もまた、科学の発達が生み出した澱と言えるでしょう。
( ※← たしかに言い得て妙なんですが、現在の社会情勢って、人類の進化の樹形図的に、絶対に必要悪な通過儀礼なんじゃないでしょうか? )
かつてよりカミや英雄は洋の東西を問わず 身体のどこかに欠陥や弱点を持つのが常でした。
( ※← 私は病巣部と弱点だらけなので神かもしれませんぞウヒャヒャヒャヒャ ( 爆 )
あるいは、現在のこの世界は カミの身ならぬ健常者の完璧なるルサンチマンではなかろうかとも思えるのです。
( ※← この期におよんで最後の最後でこんな風に〆られたら、反論のしようがないじゃないですかあッ ( 激怒 )
と、書かれてるんですが、
まあ、無論このあとがきは 『 謎の読み物 』 というタイトルだけあって、霧恵マサノブが100%ホンネでそう思ってるワケではありませんし、むしろ持論とかでは全然なくて、この漫画の世界観を補足するための小論文という意味あいが強いのですが、と、勝手に決めつけたいと思ってるワケですが、それでも、あえてツッコミ入れるあたりが、オイラの芸風とゆーか性癖なので、ご勘弁を ( 苦笑
とゆーワケで
気を取り直して、恒例の奥付ポエムです。
夜の風が綺羅星を乗せてたなびく。
陽光の薫り馥郁とさざめく草花の影。
帳を打ち払うかのごとく月光は
遠く山々の峰を映し
束の間 垣間見る世界の広さに
君のふるえる肩を抱く。
さて著者HPの 『 おしごと 』 のとこにある画像部分をクリックすると、コメントが拝めるという隠しコマンドがあるのですが、この07のコメントに、なんとッ
●その後。電脳つながりのアイデアとして当時の某談社担当に 『 電波神社縁起 ( 仮 ) 』という企画書を送ったが、ノーリアクション。…ビクンビクン ( 怒 ) 。
○ちなみに「電波神社」は 『 Behemoth ( ビヒモス ) 』 のメインエピソードに位置する話で、 『 LeviAThaNシリーズ 』 の対となる存在と想定している。
●「LeviAThaN」の方が先に世に出てしまったが、なにがあっても、必ず描く。
という記述があるのを、
私わあ私わあ私わあッついに発見してしまいましたああああッ!!ハァハァ… ( 息切れ
読みたいです読みたいです読みたいですってばさあッ
お願いしますよ、もうこのさいエロでも非エロでもどこでもけっこうですからっ
電波神社シリーズを掲載可能な雑誌社サマ大絶賛募集中☆デス☆あと、この漫画、ここまで読んでくれた方なら「あっ!」と思われてることと思われますが、くだんの 『 LeviAThaNシリーズ 』 に至るものがふんだんに盛りこまれてたりもしますので、ファンの方はお見逃しなくう♪
さらに特別出血大サービスセールとして くだんのパスワードな呪文ですが 実は 『 ヤクヤ 』 の5巻で再登場するさいにシノの秘密が明らかになったりもしますので、興味のございます方は そちらのレビューの画像の文字にもじっくり注目してみてクダサイナ☆
霧恵昌朮 『 霧恵昌朮短編集 反逆のピエッタ と、その他の短編 』 ( 32頁 )
発行:月刊制作委員会 (仮)
発行日:2002年9月1日
月刊外伝MANAJIN 掲載 2001~2002
8冊目の単行本
作画力 ★3の下
発想力 ★3の下
コマ展開力 ★3の中
物語性 ★2の下
世界観 ★2の上
テーマ ★1の中
想いのドラマ ★2の下
漫画的総合評価 ★1の中
ファン的宝物度 ★2の上
さて、霧恵マサノブの8冊目なのですが、
結論から言いますと、究極的にスランプみたいな…そんなんです。
ただし 『 LeviAThaN 』 の 『 旅人の絶輪島奇譚 』 のプロトタイプとゆかそのままOP&EPな 『 竜果 』 ゆう作品が拝めるので、そんへん、興味ある方にはお薦めできます。
ぶっちゃけ、漫画よりも5頁にわたる あとがきの方が激しくお薦めです。
全作品、脱力系ながら、じゃあ笑えるかといえば、ビミョーと言わざるを得ないほど、抜けたもンが 無い。
あとがきで、『 ギガトンハーツ 』 が受賞に至らず呆然として、たぶんに自失時代の作品とはいえ、このレベルでは作家としてヤバイです。
どんな作家でも、目的が見えずに描くとこうなるのかは不明ですが、すくなくとも霧恵マサノブは、目的が見えないと力が出ない畑の住人みたいです。
さすがにこの短編集だけは紹介しないでおこうかとも思いましたが、それでも霧恵マサノブの血肉で出来ていることは紛う事なき事実ですので、とりあえず逝ってみましょう。
霧恵昌朮 『 剣道VS弓道 』 ( 7頁 )
ともに南天高の3年生な、剣道部の鍋田零と弓道部の源真由美の両主将が相まみえる格闘技大会の決勝戦みたいな、そんな漫画なんですが…
いやぁ…アレです…
コメント、パスしたい心境なんですが、
あえて言わせていただくと、霧恵同人誌の中でも、もっとも感動に欠ける作品だったということで…ああッ無論、個人的にデス…寒いなんて言ってませんよォごめんなさあああいッ ( 逃
霧恵昌朮 『 竜果 』 ( 3頁 )
著者HPにある作品解説コーナーのコメントに「プロットはこの後 『 海贄 』 の 『 旅人の絶輪島奇譚 』 のOP・EDに転用している ( コマ割までほぼ一緒 ) 」のお言葉どおりです。
にもかかわらず、さほどおもしろいと感じなかったのは、私が単に 『 LeviAThaN 』 を先に読んでしまったからということだけではなさそうで、やっぱりツカミもなにもないオチだけ漫画の限界というか、やっぱり霧恵マサノブは、キャラたてて、きっちりドラマを魅せて、そのなかで人と人とのぶつかり愛描いてナンボと再認識させられた作品です。
霧恵昌朮 『 のんびりのうたかた 』 ( 4頁 )
『 剣師物語 』 のスピンオフなRPGゲーム仕立てとゆか、風味。
オチもアレだし、展開もそーとーにくだらないですう ( 苦笑
こーゆーのは、ショートでやっちゃうと、ちょっとアレですし
漫画として、以下略
あと、壬渚 ( みずのえなぎさ ) ちゃん登場の巻です。
霧恵昌朮 『 反逆のピエッタ 』 ( 5頁 )
予告編レベルゆーか、いずれにせよ9冊目で完全版が収録されてることもあり、ここでは触れませんが、この単行本内で、間違いなくダントツにおもしろいですう。
ほか、エロイラスト1頁とかはあるものの
反逆のピエッタは予告編ていどの5頁分が収録されてるだけの、タイトル倒れな一冊ですので、霧恵マサノブファンな方以外は買い控えが吉ですね。
まいどお馴染み奥付のポエムと、なんといっても5頁にわたる、あとがきな作品解説な霧恵自叙伝が最大の見所。
まだまだ漫画より、文才の方が圧倒的に勝ってるというところが、とてもステキな発見でしたぜッ と 報告であります隊長☆
特に、石垣島探訪記がツボりましたあ。
ピエッタのとこにある 『 性差別というものに目くじら立てる人達に対する俺なりの提案みたいな 』 の、目くじら立ててる人は、性差別に対する認識の違いがあるかもだし、その 『 人達 』 には間違いなく私も含まれてるワケなんだが、ちょっとこの文脈だけでは読みとれないので、追求は避けるが、やはり、霧恵理論が
かなり気になる。
あと、アフタヌーンの編集さんにのたまわれたセリフは、根源的な部分って変えてしまうと自分じゃなくなっちゃうので、致し方ないとあきらめるのが正解なんじゃないかなとか。
まずシナリオありき、にしても、キャラ先でも、ない、
ひとつの感動的シーンから導きだされるイベントから派生するドラマに必要とされる登場人物へと遡ったところから、紡ぎ出される物語の発展性を考えてみて欲しいとか、
無責任に言ってみる。
まあ、個人的には大変感慨深い一冊なワケですが、漫画短編集としてなら、糞レベルに近い気がします ( 言てもうた…イヤ、だってこれ月刊誌とかに載ってたら燃やしますってばさ ( 滝汗…
あっ
いちおう奥付ポエムでお口直しをッ
屋根裏にうち置かれた
古時計や人形達。
弱く射し込む日差しに
柔毛 ( にこげ ) の匂いを漂わせて
昔と変わらずそこにある。
あるいはセピアに変わるこの瞬間も
静かに舞い散る静寂の中
優しく差し出されるかのように
私の心臓の鼓動が
かすかだが はっきりと聞こえた。
霧恵昌朮 『 反逆のピエッタ 』 ( 48頁 )
発行:月刊制作委員会 (仮)
発行日:2003年5月5日
単行本内に初出の記述無し ( 書き足し部分はおそらく描き下ろし
9冊目の単行本
作画力 ★3の下
発想力 ★4の中
コマ展開力 ★3の上
物語性 ★3の中
世界観 ★3の中
テーマ ★4の上
想いのドラマ ★4の中
漫画的総合評価 ★3の中
ファン的宝物度 ★4の上
さて、霧恵マサノブの9冊目なのですが、
著者HPの作品紹介コメントによれば、
( 前略 ) ●結果、心情やテーマなんかの通常隠すべき部分を登場人物がすべて台詞でしゃべるという、なんていうか、御託を並べまくる議論形式進行漫画になった。
○誕生新ジャンル!
●…すみません。当時、何を描いていいのかわからず半分ヤケクソになってました。 ( 以下略 )
ということなんですが、まさにその通りの漫画です。
まあ、コレって、漫画の完成型としてだけ捉えるなら、『 糞 』 ですが、長編漫画の1シーンとして捉えるなら、めっさ味わい深いというか、しかしまあ続編?は 『 ヤクヤ 』 にとりこまれて、まったく異なる時代の物語として描かれちゃってるワケで、アレなんですが…
ともあれ、庵野リメイクな 『 カレカノ 』 並の衝撃を受けた作品ではあります。
甚だしく、人を選ぶ作品ではありますが、気を取り直してレビューです。
霧恵昌朮 『 反逆のピエッタ 』 ( 38頁 )
有間「夏はまだ先。早すぎたね お前」
通学路な商店街の街路樹に話しかける女生徒というシーンから物語ははじまる
そして、下半分を2分割して眼鏡な男子生徒が、つむっていた目を見開く描写
続く2頁目は霧恵マサノブにしては珍しく1頁ぶち抜き型タイトルで、右半分を手描きの文字タイトル、残る左半分を、まさに大地より這い出さんとしている蝉の幼虫の描写が占める
3~4頁目
( 陣内智紀の胸中の声として )
席はいつも一番前だ。
誰も見えないし 見たくない。
終日 空を見てすごす。
天に想いをはせながら。
人間の持つ 『 格 ( レベル ) 』は 現前として存在する。←中間発表の貼り紙 1位 陣内 2位 有間
開陳される性能差。
この世界は 馬鹿ばかりだ。
不肖の妹は言う
「お兄ちゃんはもっと人を好きになるべきよ」
冗談。
熱力学同様 人間の性格も 交われば均一化する。
認識する必要もない。
下らぬ授業の教師も 蒼く群れる凡俗な同級生たちも等しく 人間 ( ヒト ) の姿をしていない。
『 熱量を維持できるのは、同等の熱量だけだ 』俺の望みは高みにいくこと。
ひたすら高く遠くにいくこと。
それが生物として生まれた人間の義務であるはずだ。
それだけが 俺を証明するはずだ。
でもって5~9頁目は、8冊目に収録された部分なんだけど、絵はラスト以外同様なものの、ネーム ( 写植 ) は全然違うので、両方は持ってない方のために違いを抜き出してみようという企画です。
5頁目
始業チャイムとともに窓から飛び込んできたのは有間由佳理
ただ普通に飛び込めばそれですむものを、サンの上で鞍馬なパンツマルダシ大開脚旋回を披露するところで、すでにこのキャラのカットビ具合を読者に提示できてるところが素晴らしい反面、すぐにマシンガンなセリフへとつないでしまってて、そのカットがあまりにも小さいことが、まったくもってけしからんッ!!! ( 大減点ぢゃ
5-2
【短】有間「
すりゃーっ【完】有間「
ボケがあーッ5-5
【短】陣内兄「普通に入ってこいよ有間!
有間「相変わらず孤立しているようだな陣内。ってゆーかねー 悟ってしまったのだよ私は。
【完】陣内兄「有間! 有間由佳理! 変態!!
有間「だからお前はダメなんだァ陣内ィ。そんなに一人でいるのが好きか。
6-1
【短】有間「世の中 お下劣とお下品!! その中で生きてゆくのにお前は少し稚拙すぎる!
感謝せよ!! わたしが
痴性をくれてやる!
【完】有間「お前には致命的に足りないものがある!
『 痴性 ( チセイ ) 』 という名の果実! 貴様に必要なのは知の殻を割り一介の犬として得る奴隷根性である!!
その次のコマがイカスので、上段コマを引き立てるも、ここはさらに2~3コマていどバカ ( 痴性 ) を垂れ流して間をつくるべきだったであろう。
さらに陣内には、いきなり次のセリフを言わせるのではなく、2~3段階の顔色の変化による心情の移ろいを見せてほしかったところ。
6-3
【短】陣内兄「…それはなにかな? 知性あふるるこの僕にケンカ売ってるのかな?
有間「
ま~ね~【完】陣内兄「帰れ。それともケンカ売ってのか。
有間「ま~ね~。
6-4
【短】陣内兄「……ふっ 芸術の何たるかを理解し得ない庶民に言っても詮無いことだが…
【完】陣内兄「…ふっ くだらん。知を知らず 文化の何たるかを解さぬ庶民には理解しろというほうが無理だが…
さて、細かいことを抜きにすれば、ここまでは充分よく出来ていると思われる。
が、
翌7頁目の1~2コマ目の、二人のセリフが、やったら長すぎ…
小説なら無問題でも漫画なら無駄すぎる。
アニメならカットを10回以上は割るか、あるいはカメラをそれ相応に動かすはずだが…
ともあれ問題のシーン。
7-1
【短】陣内兄「芸術とは真理を模索し真実を探求する地球上で肉の理に反旗を翻した唯一の生物人類が編み出した最高の文化である。その発露は優秀な知性によって成され飽くなき知識欲と克己心を兼ね備えた一部の者のみがその至高の模倣子たる文化を継承する権利を有する。道具を操り自らの魂のカタチを後世に残すことで人間は地を支配していた獣の血脈、遺伝子の呪縛より解き放たれた。地を這う下等な肉塊と万物の霊長たる人類との差異が精神をもって唯一の証左とするならそれを高めるのはヒトと動物を分かつ最低限の義務。その崇高な言語を認知できぬと言うならばその大衆こそは甚だ愚鈍であると言わざるをえない。
有間「闘争を存在手段として遺伝子が誕生した時から安定は常に集団の中心に在る。遺伝子も模倣子もその存続のみが至上の目的であるならばその世界の平均に位置する事こそが最も有効な戦略であるということは35億年の生物の歴史が証明している。生まれてより高々百万年に満たぬ芸術・文化・精神のみを基点に生物である人間を論じるのは早計であると厳しく戒める。また真実を求めその発露を模索するのが芸術の目的であるなら例外なき総てのヒトがこの世に肉を受けそれに拠り構成されている以上単純化するのが世の理。。芸術を高尚と称し自ら歪め複雑難解化させた言語を繰り悦に入るその姿は、知と威によって他人を見下す異端者の優越感にすぎない。
【完】陣内兄「真理を模索し真実を探求する地球上で肉の理に反旗を翻した唯一の生物人類が編み出した最高の文化は芸術である。その発露は優秀な知性によって成され飽くなき知識欲と克己心を兼ね備えた一部の者のみがその至高の模倣子たる文化を継承する権利を有する。道具を操り自らの魂のカタチを後世に残すことで人間は地を支配していた獣の血脈、遺伝子の呪縛より解き放たれた。地を這う下等な肉塊と万物の霊長たる人類との差異が精神をもって唯一の証左とするならその能力の向上努力こそがヒトと動物を分かつ最低限の義務。その崇高な言語を認知できぬと言うならばその大衆こそは甚だ愚鈍であると言わざるをえない。
有間「闘争を存在手段として遺伝子が誕生した時から安定は常に集団の中心に在る。遺伝子も模倣子もその存続のみが至上の目的であるならばその世界の平均に位置する事こそが35億年の生物の歴史が証明する最も有効な戦略である。誕生より高々百万年に満たぬ芸術文化の精神を盤石として基点に生物である人間を論じるのははなはだ早計であると忠告して戒める。また真実を求めその発露を模索するのが芸術の目的であるなら例外なき総てのヒトがこの世に肉を受けそれに拠り構成されている以上極力単純化するのが世の理。。芸術を高尚と称し自ら歪め複雑難解化させた言語を繰り悦に入るその姿は、知と威によって他人を見下す異端者の優越感にすぎない。
さて、この両文をわざわざ読み比べてくださいました、あなた様、よほどの霧恵マサノブ中毒症と認定させていただきますが、何を隠そうこのオレもです。できることならハグさせてくださあい。
よーするに、これこそが霧恵マサノブそのものと断言してしまってもかまわないんじゃないかという業の深さですね。
まあ、アレです…
「どっちでもいいんじゃね?」
ゆー方が一般論ならば一般的だと思われますし、それ以前に読み飛ばしたあなたの方が、なお一般人ですので、充分に誇りに思ってくださいナ。
いずれにせよ、この強欲さが 『 霧恵マサノブ 』 をカタチづくっている
と、断言したいオイラなのでありました まる
さておき、ぶっちゃけ、100人中、73人くらいは飛ばし読みすると思われる、このセリフへのこだわりこそが、霧恵マサノブの本質のひとつであるワケですが、
正直、コマを増やすのが正解だと思えど、読むのめんどいなあ思われるあなたのために要約しますね。
【ア】
陣内兄「地球上で肉の理に反旗を翻した唯一の生物人類が編み出した最高の文化は芸術である。その発露は優秀な知性と飽くなき探求心を兼ね備えた者のみがその至高の模倣子を継承する権利を有する。自らの魂のカタチを後世に残すことで人間は遺伝子の呪縛より解き放たれた。地を這う下等な肉塊と万物の霊長たる人類との差異が精神をもって唯一の証左とするならその能力の向上努力こそがヒトと動物を分かつ最低限の義務。その崇高な言語を認知できぬと言うならばその大衆こそは甚だ愚鈍であると言わざるをえない。
有間「闘争を存在手段として遺伝子が誕生した時から安定は常に集団の中心に在る。遺伝子も模倣子もその存続のみが至上の目的であるならばその世界の平均に位置する事こそが35億年の生物の歴史が証明する最も有効な戦略である。誕生より高々百万年に満たぬ芸術文化の精神を盤石として基点に生物である人間を論じるのははなはだ早計である。また真実を求めその発露を模索するのが芸術の目的であるなら極力単純化するのが世の理。。芸術を高尚と称し自ら歪め複雑難解化させた言語を繰り悦に入るその姿は、知と威によって他人を見下す異端者の優越感にすぎない。
ここまで削ぎ落としても意味自体は変わらないと思います
しかし、さらに簡略化します
【ア2】
陣内兄「性欲を否定しうる唯一の生物であるところの人類が産んだ最高の文化は芸術であり探求心によってのみその入り口をこじ開けられる至高の使命だ。自らの魂のカタチを後世に残すことで遺伝子の呪縛より解き放たれた人間はその能力の向上努力こそがヒトであるがゆえの最低限の義務。その崇高な言語を認知できぬと言うならば甚だ愚鈍であると言わざるをえない。
有間「闘争を存在手段として遺伝子が誕生した時から安定は常に集団の中心に在るがゆえに世界の平均に位置する事こそが歴史が証明する最も有効な戦略である。真実を求めその発露を模索するのが芸術の目的であるなら誕生より高々百万年に満たぬ芸術文化の精神を盤石として基点に生物である人間を論じるより極力単純化するのが世の理。高尚と称し自ら歪め複雑難解化させた言語を繰り悦に入るその姿は、優越感にすぎない。
これでも問題はないはずですが、さらに削ります
【ア3】
陣内兄「自らの魂のカタチを後世に残すことで呪縛より解き放たれた遺伝子に逆らえる唯一の生物であるところの人類が産んだ最高の文化は芸術であり探求心によってのみその入り口をこじ開けられる至高の使命だ。ゆえに能力の向上努力こそが義務。それを認知できぬと言うならば愚か者。
有間「歴史が証明するとおり安定は常に集団の中心に在るがゆえに世界の平均に位置する事こそが最も有効な戦略である。真実を求めその発露を模索するのが芸術の目的であるなら極力単純化するのが世の理。複雑難解化させた言語を繰り悦に入るその姿は、愚か者の優越感にすぎない。
さらにオマケ
【ア4】
陣内兄「肉欲に逆らえる唯一の生物である人を人たらしめる至高の文化である芸術を愛で、さらに高みに導くために個々が努力してゆくことこそが万物の霊長たる生き物の使命だと知れッ
有間「人を人とたらしめているのは肉だ。砂上の楼閣の王子様だな、貴様はッ
もはや、身も蓋もないですね
とゆか形骸すら無い
ある意味こういう意味あいでもありますが、
実は、完全に間違いですね
なぜなら、このシーンの、このセリフのかけ合いこそが、この漫画のモチーフとテーマの双方にかかる最重要事項だからです
よーするに、このお二方は語りたがり屋サンなのですね
だから、短文では、成立しないセリフだったワケです
そんなワケでやはり、霧恵マサノブを愛せるか否かの、謂わば 『 踏み絵 』 みたいなシーンなワケですが、あなたのハートには何が残りましたか?
ゴルァ!!
うぜえよッそなこと説明するために何度も長文読ませてんじゃねーよッこのボケぐわぁあああッ!!
ってな声が聴こえてきたようなこないような…
さて、この二人の答弁は、前段階として年度中間試験 1位陣内智紀 2位有間由佳理 というのがひとつあって、あまり短縮化してもかえって味わいが薄くなるし、何よりここはキャラの特性を見せびらかすためのシーンでもありますから、そこそこ長文というのは霧恵漫画的にも必要なのですが、ぶっちゃけ、ひとコマに入れるにはキツイ分量だとオイラは思います。
でもこのままだと甚だ読み手を選ぶと思われますので、焼き直しのさいはぜひアニメ風にコマを割るなりして、読者を疲弊させない技法の限りを尽くして欲しいかな、と。
おめーが言えた筋合いかよ? とか間違いなく言われそうですが。
なお、遺伝子 ( ジーン ) はともかく模倣子 ( ミーム ) は、ある程度進化人類学とか好みじゃないと、とっつきにくいと思うのだが、いかがなものか?
閑話休題
相当に脱線したので、話を戻します。
ともあれ、それでは気をとりなおして、続きです
7-3
【短】クラスメートたち「
おおー陣内兄「ぬっ ぐぬっ
【完】クラスメートたち「
おお~陣内兄「な ぬな!?
勝敗は当然クラスメイトの拍手で決まる、多数決という名の罠
7-4
さも得意げに至近距離まで詰め寄る有間
【短】有間「ってゆーか何なの ぬるいわ陣内。ヌルヌルよ。あんた全然馬鹿じゃん。この世を統べる力は三つ。そのうち二つは…
【完】有間「ふふ。予見の速さはさすがよな。だが、世を統べる力は知性のみにあらず。
7-5
有間の顔のクローズアップ。唇中心で。
【短】有間「多数決と…
【完】有間「多数決と、
8-1
有間は陣内にのしかかり、むちゅ~~~と唇を奪いとる。
むちゅ~~~ と、
8-2
らりるれろ と、
8-3
チュバクチュチュルジュッジュッジュ~~~ と。
【短】クラスメイトたち「
おおーっ【完】クラスメイトたち「おお~っ
8-4
陣内棒イメージ図
ドンックドンック の
ガガガガガガ の
ピコーンピコーンピコーン
8-5
有間の舌
糸引く汁
8-6
【短】有間「
肉の力よ。【完】有間「
肉 ( 痴性 ) だ。9-1
【短】有間「…と、いうわけで陣内のあだ名 『 ぬるちん 』 に決定!! さんせいのひと!
クラスメイトたち「
イエーッ!!【完】有間「…と、いうわけでこいつのあだ名 ヌルい陣内という意味の 『 ヌルチン 』 ではどうかな!? さんせいのひと!
クラスメイトたち「
イエーッとゆーワケで陣内は、ヌルい陣内という意味の 『 ヌルチン 』 にされてしまう。
9-2
【短】
陣内兄「……ひでえよ 数の暴力だよ。小学生並じゃねえか。
有間「ってゆーか 礼ならいらねーぞ。
【完】
陣内兄「この俺を馬鹿共のなぐさみものに…。のら犬にレイプされた気分だ。
有間「ってゆーか 礼ならいらないぞぅ。
9-欄外
【短】
どっぺんぱらりのぷう
終
【完】
蝉 脱皮中の図
ここ ( 9頁目 ) までの展開は、なんだかんだケチをつけたものの上々だと思う。
10頁目~
さて、場面変わって、橋本先生を捜して職員室を覗いてる陣内妹が、女教師に見つかってしまい、よりにもよって という妹の苦虫貌と、女教師の対応で、いわくアリは容易に知れるものの、そこで陣内&有間方面から攻めた部分は、事態をより解りにくくしているだけで、たしかに作家としてのアイデンティティーのなせる業だとしても、もう少し二人の関係をドラマで魅せてからにしないと、解りづらいまま進行してしまうので、物語にのめりこみにくい。
さらに、この陣内&有間方面の2頁ドラマが、作品の核になってるうえ、物語初期に提示するには難解すぎる言い回し多用なため、初読時でファンを魅了する要素が著しく欠落していて、2シーズンTVアニメとかならともかく、40頁の短編では相当にハードで、やはり読み手を著しく選ぶ。
ともあれ、会話の最後で
「もし私が お前の秘めたる望みをかなえたならば、お前は私の犬になれ」
と、有間はのたまう。
このときの ニヤリヅラも 要注目☆
また、二人の会話で女教師の名が園田と知れ、橋本と婚約中ということも読者に提示されるが、園田の名は10頁目で普通に出しといた方が読者に親切。謎にするほどのもンでもあるまい。
13頁目~
場面変わって、屋上で対峙する陣内妹と女教師。
二人の口げんかはメチャ漫画チック。
低次元な痴話ゲンカが
おもしろいと紙一重くらいまでは、いってる。
そこへ新キャラ登場。
メタフィクションなセリフは、ぶっちゃけ作品世界から現実に引き戻されるので、個人的にならウザイ。
ともあれ、やってきた橋本先生に、どちらか選べとのたまう二人という図で、三角関係は無事提示される。
そして
現れたるは有間。
15頁目下段で不気味に狂笑しながら登場するやいなや、間髪入れず裏投げ風味で
女教師を投げ飛ばす。
この3頁のアクションシーンは、ぶっちゃけ優秀だが、今霧恵方面絵とコマ展開で拝みたかったというのも本音だ。
肉に関してかなり自由なキャラだと思われていた有間が、たかだか三角関係ごときに審判を下すあたりは違和感すぎて伏線か。
あるいは 『 賢者の軽口 』 な ジギタリスの花言葉か。
そのあとの種明かしなボケシーンから、得意の霧恵節な
『 自己愛に帰結する愛の本性と体験の共有による自己複製の顕在化 』 をわずか1コマたたきつけ ( 爆 ) 、
その後2頁で有間と陣内妹のかけあいによるドラマをやっつけるが、ココ ( 22頁目 ) はやっぱり、一般論で、とても解りにくいんじゃないかと。
「あンたは お兄ちゃんと一緒よ。何もしないで見下して。よくわかんない こむずかしい言葉並べて。私は違うもん。先生 好きだもん! 追っかけて飛ぶし!!」
それにたいして有間は、
「アリストテレスいわく、 『 徳は超過と不足によって失われ中庸によって保たれる 』 知性も痴性も方向は違えど同軸天秤の両端に位置する等価 ( ふご ) の兄妹。重要なのはそのバランス。痴と知の高位体現者たるお前と、お前の兄。されどそれは比留子の兄妹。なれば私はそれを合一し導く中道の聖母となる」
そして、「一人はさみしいだろ?」と陣内妹に手を差し延べて、
とゆー流れなんだが…
えーとですね…一読で解る方おりますでしょうか?
ようするにですね、
節制も勇敢も 『 過超 』 と 『 不足 』 によって失われ、 『 中庸 』 によって保たれるのである。
という、アリストテレスの 『 ニコマコス倫理学 』 よりの引用に他ならないと思うのですが、アリストテレス的感覚だと 『 中庸 』 = 真ん中という意味合いはむしろ薄く、その範囲内のどこに落ち着くかをそれぞれの場合に当てはめ個別に結論づけてゆくというのが本意なんじゃないかと思いますので、ここから、即、『 同軸天秤の両端に位置する等価の兄妹 』 が導き出されているところに、むしろ私としましては少々違和感を感じるのですが、まあ、ようするに、
知のみに偏りすぎてる兄 と
痴のみに偏りすぎてる妹 であるところの、
いわば比留子 ( 不具者 ) でありながら 天秤の両端に座す 対極の
兄妹であるところの二人を
中庸まで引きずり下ろし、
中道 ( 対極にある矛盾する二つの概念に惑わされない自由思想の実践 ) をもって
なす、聖母 ( 無から神の産みの親 ) となってやるわい、私が、
と、有間がのたまってるワケなんですね。
解りましたでしょうか?
もちっと簡略化しますね。
よーするに、
「おめえら二人とも両極端にビョーキだがら、オイラがまとめて犬として飼ってやるわいッ」
ということです ( 反対意見は 『 受精 』 も 『 妊娠 』 も いたしませんッ ( 逃
まあ、オイラなりの解釈ですので、間違ってても知ったこっちゃございませんッ ( ほとんどヤケクソ
で、飛びます。
クラスメイトがふたたび騒ぎだし、やっと飛び降りたのが妹と有間だと知る陣内兄
蝉 は いままさに脱皮完了間際
追っかけて飛んだ陣内妹が見た光景は、濃厚チューしてる橋本と園田
今回はさほど小難しくない?言葉で、陣内妹を慰める有間
でもって、私の胸でお泣きなさい、のジェスチャー
事後、有間とツキアウ宣言を兄にする陣内妹
蝉 羽根 ひろげはじめ
屋上で対峙する三名
その役どころは、
陣内兄 = 熱血バカ = ひたすらナルシス
有間 = 痴知的悪魔 = ツッコミ担当
陣内妹 = 単なるエロパンピーしかもバカ = ボケキャラ
ラスト11頁は、さすがに霧恵マサノブな 納得薬局放送局 ( 死語 ) のデキなんで、書きませんよ、御免なさいね。
そんなワケで、ラスト2頁より、三者と蝉による象徴的なシーンのコマのみ抜粋して磔ますので、想像してみてクダサイナ☆
とゆーカンジなのですが、
ああでも、1コマだけ、このコマがすべてを集約し、あとは霧恵論法的に切り落とすだけという、重要なひとコマの有間のセリフのみ提示。
「あわれなやつ。お前、私も
見えているんだろう? 私達に意識が産まれたその時から あるがままの日々も 高みを目指すささやきも 多様性の名のもとに集約される運命 ( さだめ ) 。 片目をつぶったお前の立つ場所はどこだ? そこからなにが見える?」
思わず「女のケツ」 ( 古ッ
と 答えてしまったオイラのことは置いといて
さてここまでが、あとがきを読む前の率直な感想なのでありました。
なお、シーンの節目節目に蝉が登場するのですが、霧恵マサノブのことだから絶対になんだかのギミックであると心に留めながら読んでたにもかかわらず、最後のアクションの意味するところを若干取り違えていた私でした。説明されれば無論納得できるのですが、私の理解力の及ばない 神 様 な の で 、致し方ありません。
作画やコマ展開的には粗めなところもまだあるので、ぜひ現在方面の霧恵力でリメイクして欲しい気もするのですが、ぶっちゃけ、ニーズは大いに微妙かも。
あと、3頁の分厚い後書きがやっぱりミドコロ。
今までストーリー優先だったのをキャラ優先にしたことと 『 テーマを裏表なしで表層に置く 』 手法のハーモニーが カニとカキ氷並の食い合わせの悪さであることが発覚して七転八倒の大苦戦だった とか、ご苦労様でしたナ、他人事ながら。
まあ私はストーリーでもキャラでもなく、印象的なシーンから逆算したエピソード優先主義で物語りなぞ紡いだりしたりもしますが、メインとなるエピソードから導き出されるいくつかのエピソードの複合体としての世界観がさいしょにできあがり、そのあと必然的にキャラが生まれてきて、あとは好き勝手やっていただくという手法なため、今日に至るまでいまだ1作も物語を完成させたことがないという…まあ5年ほどまえから3年がかりくらいで1600字詰めワープロ600枚ていど書いてたヤツとかがPCの御叛乱でお亡くなりになってしまってからは、その後まったく書く気になれないってのもあるんですが、こういうの読んでるとアレです…
書きたくなってしまうじゃないですかあ ( 爆笑
ともあれ、くだんのセミのこととか、有間の秘密とか、陣内兄妹の秘密とか、霧恵マサノブ考察には欠かせない持論に充ちたおもしろ語録満載なのですが、さすがにあとがき丸写しはまずそうなので。
でもやっぱちょっとだけ、
『 屋上の秘密 』
ヒトの造りしモノのなかでも最も天に近い場所。それが屋上です。
高いとこから落ちること、これすなわち堕落といいます。
それこそがアダムに禁断の身を勧めた人類の聖母たるエヴァの本質というものです。
『 有間の目的・犬の秘密 』
(前略)
(中略)
・・・それはやはりまだ秘密ということにしておきましょうか。
奥付ポエム
人生を路傍の砂にたとえて
諦めるのは爺さんだけにしておけ。
運命を大河の一滴にたとえて
溶け交わるのは婆さんだけにしておけ。
この今だけは
限り在る命の露 ( つゆ ) こそが
やがては時の大河も星屑の海も
超え行くものだと微笑 ( ほほえみ ) を供に。
霧恵マサノブ 『 レビアたん 』 への道。 ( その3 ) も読んでみる