とは言っても、同人誌ですし、買いたくても買えなかった方も多くいらっしゃることと思いますので、できうる限り、その作品世界が、記事を読んでるだけで浮かび上がってくるようなレビューを今回は目指してみました ( 一部、完成度の低いとオイラが独断で判断した作品は除く ) 。
ってなワケで以下に収納ですが、今回は霧恵マサノブの同人誌のレビュー以外には雑記的なものも何も書いておりませんので、その手のものを期待された方がおられましたら、御免なさいなのでございまする。
夏場に入ってから、遊び呆けてたツケが回って、エロ漫画に限らず積ん読やら積んDVDやらが成層圏を突破しそうな勢いなのでございますが、もはや全然気にならなくなってしまったため、ここ最近は成コミの購入ペースも徐々に落ち、先月分は24冊という記録的な数量に落ち着いてきてて、このままなら今年は365冊を下回れるんじゃないかなと、ちょっぴり嬉しいのか嬉しくないのか、自分自身よく解らない事態になっております。
無論、オイラは、 『 プロ野球選手たるもの紳士たれ 』 みたいなものは、いけ好かないですし、やりたいときはやるだけですが、復帰したいとかは露とも まったくもって思ってませんので、その辺は、何度コメントいただきましても返しませんので、すみませぬ ( 陳謝
さりとてオイラも生き物ですから、花束クラスの拍手コメントいただきました霧恵マサノブ論だけは、なんとか死ぬまでにやっつけておかなくては、という想いが強くございましたので、今回のレビューと相成りましたしだいなのでございますね。
』 を発見してから興奮が星の夜空によみがえってきて、以後ちまちまと書きつけておったのですが、残念ながら 『 電波塔の魔法遣い 』 を除けばすでに全単行本絶版というガッカリニュースが最近の記事に記されておりまして、ちょっと遅すぎたかなあ、と反省してますが、まあ、そのへんは、根っからの遅筆ですので、どうぞご勘弁のほどを。
霧恵昌朮 『 剣師物語 』 ( 194頁 )
発行:月刊制作委員会
発行日:1997年12月29日
月刊ワンパ1~35号 :掲載
霧恵昌朮 『 剣師物語 』 ( 178頁 )
処女単行本
作画力 ★1の上
発想力 ★2の上
コマ展開力 ★3の中
物語性 ★2の中
世界観 ★3の中
テーマ ★3の中
想いのドラマ ★3の中
漫画的総合評価 ★2の下
※商業レベルとして観た評価です
ファン的宝物度 ★3の下
※霧恵ファン的視線で観た宝物度です
ちなみに
★1 = 要らねえだろ?
★2 = 霧恵史には必需品
★3 = ぜひともお手元にッ♪
★4 = レビアたんへの想い入れが さらに5ポイントアップします ( 責任はとりませんよ?
★5 = 霧恵ファンで好かったなあ☆
みたいな?基準ですね、いちおう…あうあう ( 汗
さて、霧恵マサノブの処女単行本なのですが、94年~97年にかけて連載された作品だけあって、かなり古いです
マジで 思いっきり 古いですよ?
今霧恵方面の作品と比較することは、どだい間違っているのかもですが、そこは当然、アリスですので容赦なく斬りますが、はっきり言って画力低いです
絵、そのものには魅力もあるのですが、如何せん、状況を正確に伝えきる絵力が不足していることと、展開的にも状況を読者に提供するのが常に一呼吸遅すぎる欠点がてんこ盛りなため、世界観やテーマがきっちり出来ているワリには、引き込まれるまでは届かない残念な出来と言えるでしょう。
まあ、初挑戦の漫画で、それも同人なんですが、もしこの作品が商業で発売されてたら、買ってガッカリ、でもまあ今後に期待というレベルではありますね。
しかも、まったくもって未完なうえ、ほとんどプロローグ状態でエンドなまま、その後若干の番外編は追加されたものの、放置プレイのまま今日に至ると…
そんなワケで、この作品に限っては、霧恵ファンな方以外にはお薦めできませんから、細かいことは抜きにして、ストーリーを語りますよ
感覚的には 近未来アニメチックなSFアクション系ですが、
『 生きるということを 』 そして 『 人を愛するということを 』 教えてくれる想いのドラマでもあります☆
と言いたいのですが、テーマ的には素晴らしかったですし、終盤の割り方なんて 『 LeviAThaN 』 クラスですが、やっぱりそこまでに蓄積されたものがあまりにも不完全燃焼なので、教えてもらえるまでは至りませんでしたが、個人的になら、まっこと大好きな一冊でもありますね。
またも前置きが長い悪い癖が初っ端から大爆発しておりますが、では、レビューです
『 剣師物語 前編 』 ( 46頁 )
西暦1853年 裏我 ( うらが ) と逢坂 ( おおさか ) に無人の 『 黒船 』 が漂着する
裏我の一隻は 『 至高生物化学 』 をその貨物とし
逢坂の一隻は 『 究極機会工学 』 をその胎内 ( なか ) に秘めていた
翌1854年
『 黒船 』 を中心として2つの政府が誕生する
『 北部総統治新政府 』
『 南部日本連合政府 』
両政府は互いを異端とし 基盤が異なるがゆえに対立した
1058年
ついに二つの政府は 『 105年戦争 』 に突入する
戦力は拮抗し 戦局は泥沼化した
1951年
ある特殊部隊により膠着は打破される
首都 『 統京 ( とうきょう ) 』 陥落
これにより北政府は 『 筥楯 ( はこだて ) 』 への遷都を余儀なくされた
そして1963年
ついに両国政府に休戦協定が結ばれる
こうして多数の国土と人口の半分を失った 『 105年戦争 』 は終結し
旧首都 『 統京 』 と 『 贄形 ( にいがた ) 』 間 幅100㎞にわたる
相互不干渉地帯は そのまま無人の国境となった
やがて1979年・・・終戦より16年後の世界
物語は始まる
ってなカンジの3頁にわたるプロローグに引き続き
人工衛星のようなものが日本上空を飛んでいるらしきシーン ( 後に重要アイテムと判別
そして
みたいにつづき
そして
主人公 前剣戟隊副隊長 『 炎縄柾道 ( ほなわまさみち ) 』 は16年ぶりに目覚める
でもって、見開きのタイトル ⇒ 『 THE GLEAM WORLD EOISODE 剣 師 物 語 』
※スキャナーの都合でサイズ割れ陳謝
をはさみ
南部日本連合政府の領土に翼の生えた使徒のようなものが飛来してくるシーン
と判断するも、コマで事象をドラマに伝えられるほどの画力と展開力がまだない時代でしたね。
ってか、偉大なる はじめの一歩 でございましょうに ( 苦笑
殲滅実験開始と使徒モドキ
その後の戦闘シーンも絵で魅せられるほどのものがないので迫力が不足です
ものの十数秒で応戦した部隊は全滅
そこへ 女剣士 来たる
が、次の頁ではシーン変わって、女剣士 『 綾波黎子 ( あやなみれいこ ) = 新剣戟隊 国境警備補佐長 』 と 『 無頭頸侍 ( むとうけいじ ) = 南部日本連合政府 国境警備隊総主任 』 との会話
無頭「現在我が国の国境付近には 過去の情報 ( データ ) にない 『 加工生物 』 が出没している」
太刀打ちできるのは剣戟隊のみ
霧雨刀 ( ※後述 ) をもつ現在の隊長、綾波黎子と組んで奴を止めろと炎縄に命ずる無頭
霧雨刀と知り、女が水沢隊長 ( ※後述 ) の跡を継いだことに違和感を感じる炎縄
「剣戟隊が無敗なる所以は仲間への信頼にある 仲間のすべてを信じ自分のすべてを賭けるゆえの剣戟隊 『 最強無敵 』 だ!!」
と、のたまうシーンで水沢治樹隊長 炎縄副隊長 と明らかにする
意見があったところで 手合わせ
そして どうやらのされたらしい炎縄の気絶中の夢
「隊長はどうしてそんなに 『 強い 』 んですか?」と問う炎縄に水沢は「守るべきものがあるかなかな?」と答える
覚醒した炎縄と綾波の対面
三歳児黎子も登場させ、16年ぶりの再開を演出するが、圧倒的にコマ展開力不足でドラマティックが輝かない
作戦開始時刻は明日午前3時
気づけば戦争が終わっていた男の16年
動乱の時代から一夜明ければ、途端に世界が変わっていたというところを1頁で解説するが、現在方面の霧恵力で描いたものが観たいというのがスナオにホンネな漫画力
1963年4月18日
『 朔神原 ( さがみはら ) 』
剣戟隊は 一度は 北部府首都 『 統京 』 を陥落させ
この年 『 朔神原加工生物実験生産工場襲撃作戦 』 開始
これによる戦争終結を目論んでいた
超高電圧により 『 羅鉄 』 の硬度は金剛石の約十倍
この世に斬れぬ物なし とうたわれた霧雨刀をもって突貫する隊長水原に続く 岬と柾道
斧槍師 『 大貫岬 』 は剣戟隊副隊長でありながら隊長水原と双璧をなす男
発電装置を倒した水原は 岬に全員の退去と 『 雷神 ( ※くだんの衛星システム ) 』 の起動を命ずる
が、しかし
柾道にとって兄も同然だった岬が突如として反旗を翻す
「どうして…なぜなんですかっ大貫さん!!!」
柾道の怒りに大貫は「愛する者が居るからだ 命を賭けて護るべきものが在るからだ」
「兄としてオレは
あいつを選んだ!! 一方を犠牲にしてまで擭まねばならない幸福の重さをっ 護るものなど何ももたぬお前がっ 理解 ( わか ) るわけがないっ!!」
こういうセリフが本当の意味で輝くのは、レビアたんのように蓄積されたドラマがあればこそなので、実はやっぱり足りない。描いてる本人には彼らの人間ドラマが脳内で完成されているため無問題なのだろうが、読者が感動を覚えるには、過程が不足しずきていると感じる。
悪い意味でアソビが無く、通常の人間ドラマのシーンが欠落し、事象ばかりが動いてしまうため、キャラに思い入れできるだけの骨子というか構えが、ようするにまだできていないのだ。
簡単に言えば説明不足。岬の言葉に説得力をもたせるための事実関係を先に漫画として出しておくべきだったんじゃないかなとか、いろいろ。
既に雷神は始動
あと十分でここは跡形もなく消し飛ぶ
俺たちが死ねば戦争は終わるんだ
37頁目の下段のコマがステキなだけに、とても勿体なかったと、マジで思った。
そして…
紙一重のところで剣を止め 岬の槍を受ける水原
剣戟隊の解散を宣言し 最後の命令にかえる
岬に「守る者がいるのなら最後まで生き抜け」と水原は告げる
退路をひた走る柾道に抱きかかえられつつ「黎子をたのむ」と、すべてを託す水原
荷流電子砲 『 銀の御雷 ( シロガネノミカズチ ) 』 発動ス
そして…
ここまでのドラマがきっちり分厚く描かれていたのなら47頁目の柾道のセリフはもっと違った感動を連れてきてくれたに違いないけど…
ともあれ、
「生きる術 ( すべ ) を 戦う意味を 家族の温もりを 教えてくれたあの人は俺にとって 師であり 目標であり
というところで黎子が 柾道の胸にとびこみ
「あなたはいいわ…あの人は私に 『 戦う事 』 しか残さなかった。私に安らぎを与えてくれるひとなんか 一人もいなかった!」
と、マジ泣きし
『 護るべきもの 』 を柾道が見つけた ということにして そこで敵襲というところで46頁の前編終了。
『 剣師物語 すこし昔の話 』 ( 10頁 )
A LITTLE OLD TALE
剣士物語 AD1963
彼女が余命六ヶ月と宣告された岬
そこに現れるのは若き日の無頭
どこが無頭?
骨格までまるで別人 ( ※謎が解けるまでちょっと長すぎて…パニクル
とりあえず統治の肩書きは 『 南部日本連合政府参謀部所属東部国境調査別室! 』 ( 長ッ…
その会話中にやっと彼女が妹であることが判明するが、ちょっと後出しすぎで、引っ張る必要が無く、解りにくいだけ。霧恵スタイルではよくある手法だが、謎にする価値がある一大直結イベントでもない限りに於いては、頭できっちりと状況確認をやっつけておいた方が読み手がのめりこみやすいと思われ。
剣戟隊の即時完全消滅と引き替えに妹の延命を約束する無頭
妹 『 和美 』 との約束を遂行する宣言をする岬
シーン変わって、柾道と水沢と黎子
麗子に麗子の母の形見のイヤリングをわたす水沢だが、
「お前の母さんの形見だ。預けておくから大事にしろよ」
を、この時点では、どう捉えればよいのか微妙
さらに、次の頁で静香さん登場
その静香さんにむかって「又、しばらくの間 この娘をお願いします」という水沢のセリフで、余計人間関係を把握しにくくなる
静香は妻なのか?すら、この時点では判別不能。よって別れのシーンも登場人物のキモチになれるはずもなく、思い入れは困難
この翌年 1963年4月18日 『 誤爆 』 により南側最強の特殊部隊 『 剣戟隊 』 消滅
約四ヶ月後 1963年8月15日 戦争 終結
さらに13年後
1976年
国境付近に生息する残存生物兵器掃討目的のため
新たな 『 剣戟隊 』 が結成される
そして
歴史の新たな歩みは
後三年の月日を必要としていた。
というところで10頁のショートストーリーが 【終】
『 剣師物語 後編 』 ( 122頁 )
使徒モドキとの戦いのさなか、ヒュンヒュンと飛んでくる敵戦闘機の攻撃を受け、おそらく霧雨刀を弾きとばされたという設定であろうか。
あの日 彼 ( か ) の地で 私は初めて 味わった
疵 ( きず ) と共に刻まれた 敗北と屈辱の 味を…
という黎子の回想シーンののち
見開きタイトルの下段で登場人物4名 ( 柾道・黎子・無頭・やつ=使徒モドキ ) を提示し
メインの上段で、
相互不干渉地帯より南に二㎞ 現在、無人の二級都市 『 阿継 ( あつぎ ) 』
ここに 『 やつ 』 がいる!
と説明
決戦を間近に控え、無頭が二人に北との技術交換で得た元気の出る増粘着飴 ( ガム = 脳内のアミノペプチン分泌を合理的に促す高カロリー薬物食品 業務用は純度が高く若干の常用性がある ) を支給
「北と南を合わせたものが 『 真の科学 』 ではないかと思うよ」とは、無頭の持論
国境警備隊と黎子によってもたらされた情報蓄積 ( データプール ) を説明する無頭
『 やつ 』 の武装は一枚打ち、片刃の大剣一振りだ 軽量化の為だろう これ以外の武器は装備していないようだ
頭部はまるで感覚器のカタマリだ 全方位を制御 (カバー) している
これだけの情報量を処理するとなると に 対して、
「基礎 ( ベース ) は人間ね」と黎子
「言葉も確認した」と無頭
さらに「羅鉄弾がはじかれたとの報告もあり」とも
「攻撃方法は
首の切断 もしくは 頭部破壊」
「簡単に言うな」と文句たれる柾道に「再生能力も従来の 『 加工人間 』 とは段違いなのだ。他に方法はない」と無頭
骨格図を示したコマで、飛行能力を説明
「鳥のような 『気嚢』 を欠き 『胸骨』 も発達してはいない
筋肉の冷却は肺と直結した背中の管で行っているようだ
したがって、ごく短期間しか行動できま…」
よりにもよって、ここで 『 やつ 』 が来襲
『 やつ 』 と柾道の一騎打ち
説明不足でリアルタイムでは判らなかったが、初撃で黎子たちはダメージを負ってたということ
背負って這いだしてきた、無頭を置き捨て、黎子は単独目的地へ
戦いのさなか二人は、互いの太刀筋が同じであることに気づく
そして81頁目で提示される真実
『 加工実験体壱型 』
『 加工実験体弐型 』
長い戦闘シーンは、まだ絵そのものの魅力と説得力不足で、ドキドキするには至らない
すんでのところで首を落としそこなった柾道は、信念を胸に渾身を振るわんとするも、散る
一足違いで黎子到着
が
憤怒に貌を染めたところで、柾道復活は、もうちっとタメが欲しかったところ。
さらに言えば、ここに黎子の圧倒的な想いを込めたセリフが欲しかったかなと。
でもって、黎子の過去説明を挿入
私が三歳の時 実の父親が死んだ
私は叔母に引き取られ 『 綾波 』 の姓を名乗る
叔母との幸福な三年間の後 私の血縁は途絶え…
私は後の人生に使う 大半の涙を この時、失った
叔母が死んですぐ 私は 無頭頸侍の養子になった
養子といっても姓は変わらず 私の世話はすべて召使いに任せた
他人行儀なもの…
私は感情を表に出さなくなった
そこは他人の家なのだから
だから私は今でも彼を 『 お義父さん 』 と呼べない
かれもそれを望んではいない様だった
彼が望んだのは 父の率いた 『 剣戟隊 』 の復活、そのための 『 水沢 』 の血筋
ただひたすら強く、強くなるだけの そんなある日
私は 『 あのひと 』 に会った
「憶えているかね?黎子 君は昔あの男と会ったことがあるんだよ」と無頭
「はい」と黎子
遠い記憶はそのままの姿で あのひとは眠っていた
私の知らない家族 母や父や叔父…
そして昔の私を知るひと
私の知らない私の家庭を
昔の幸福を知るひと
私の最後の家族私を含む歳月が変化しても 変わらず眠り続けるあのひと
私は彼の目覚めを待った
ずっと
十六年の歳月から目覚めた あのひとに父の最後を聞いた時
私の中で
私と共に眠っていた感情は おさえる事の出来ない 涙となって流れた
ずっと昔
子供の頃に
涸れたと思っていた
涙あのひとは言った
『 君は 俺が 護る 』瞬間私はもう孤独では無い事に気がついた…そして
『 このひとが好きだ 』という事にも
だから決心した『 もう二度とこのひとの前で
涙はみせない 』
と
そう決めたのに…
『 あと数刻の後に このひとの命は燃えつきる 』『 悲しむのが いやだ 苦しくて つらい 』そして柾道 意識回復
かな~りベタな今生の別れ ( テレルヤナイカイ
キス
「まってる ずっと」
走り去る黎子
柾道、降りしきる雨の心地よさに酔う の図
そして柾道の心臓停止
『 やつ 』 は対峙した黎子に問う
「訊きたい事がひとつある あの男は…いや 私は何者だ?」それに対して黎子は
「あなたは私の
( 想い出 )
敵だッそれ以外の何者でも無い!!」この見開きは効果的。絵は上手くないけど迫力はある
その間に2頁にわたって、終わりゆく柾道方面の想いが挿入される
コマ展開はもう一歩だが、伝わるし、アイデアはよい
さて本題は
「だ か ら 大丈夫
羽根無くしても天国へ行けるわ」
と、黎子
だが、彼女の本性 『 抜き身の刃 』 と奥義 『 剣閃 』 で斬ったものの意味が、単なるこけおどしなのか、準備段階なのか、絵的に、私には理解不能
魂を 『 御 』 す者と 『 解放 』 する者との違いとは?
一方、柾道
気づけば胸に穿たれた穴が無い
黎子の剣は複製 ( レプリカ
「返す刀を投じて無手格闘戦にもちころとは さすが
創始者!」
という、無頭のセリフなくして、技のかねあいがイマイチ把握できないのが、ちょっと…。
このへんも含めてアクションの分かり易さまではまだまだ。
素手同士になったとき、もはや差は歴然とし、形勢が大きく傾いたとき
無頭の参謀らしき女局員の名が 『 玉珧 (たいらぎ) 』 と知れる
なけなしの渾身で立ち上がった黎子
だがはたして尽力の突きは 『 やつ 』 の腹筋に突き刺さる
最後の最後で 『やつ』 が剣を止めたワケ
2頁まるまる走馬燈
「黎子」
その名を知る者に
「
私の名前を気安く呼ぶな!!」
『 やつ 』 にトドメを刺そうとする黎子
「そこまでだ!」と待ったをかけたのは無頭
そして戻ってきた柾道
「自分の父親を殺すつもりか!?」
「連戦で蓄積された余熱が 『 胸部の脳 』 に影響したのか…それとも 『 魂の理 記憶を超ゆるもの 』なのか 最後の最後に刀を退いたのは 実の父親なればこそ…か…いずれにせよまだまだ研究の余地はあるな…」
無頭は回収班に 『やつ』 を収容させ、帰投を命ずる
「実に良い戦いぶりだったよ。おかげで貴重な情報 ( データ ) がとれた。十六年ごしの長期に渡る実験もあとほんのすこしで 『 幕 』 というわけだ」
『 人類の最高水準 』 の研究
自分を引き取った無頭の本心を知り、黎子の怒りが爆発する
が
「 『 剣閃 』 の原理は振りの速さ ( スピード ) と刹那の機 ( タイミング ) …
見えぬ刃も所詮は水滴 枕を抑えられればこの程度だ」の、台詞にたがわぬ無頭の怪
そして玉珧に霧雨刀をぶち折られる黎子
「無理をするなよ黎子…
君は人間だ 『 彼 』 や君の目の前の男とは違う」
と、そこで
「…俺に何をした!?」と柾道
「あこがれの水沢隊長と同じ身体にしてあげたんだよ? もっとも 人の形をとどめたおかげで単体戦力や再生能力は彼より劣る様だし いつ 『 ウィルス 』 が 『 変質 』 するかわからぬシロモノだが…」
「殺す!!」と強がる柾道に、だが余裕綽々な無頭は、
「それでは演出しよう!
歴史が変わる瞬間を!!」 ←このコマ乙
そして ここより怒濤の終盤戦へ
南部日本連合政府 首都 『 逢坂 』 壱弐煌星雷神制御室
まるでエヴァの かのシーンさながらに制御命令系統を書き換えられ乗っ取られる
これにより
『 天空の凶星 』 こと 『 雷神 』 を掌握
だが続く160~161頁目は、少々説明を詰めこみすぎなうえ、『 読み取り 』 能力を要する台詞回しなため、甚だ読者を選びそうな諸刃の剣
よーするに 『 銀ノ御雷 』 の起動条件が、柾道の身体に埋め込まれている誘導装置としての発信器であることを、上半分のみで説明しようとしてるわけだが、これは1頁まるまるくらい割かないと、読んでてツライ。
さらにその使用目的を問う柾道に対して、答える玉珧の台詞も、それこそが霧恵流とはいえ、どれだけの読者がきっちり読めるのかちょっと心配である。
「…我々の欲するものは 『 決して執られるはずも無く 且つ捕られてはならぬものが奪われ
そして
それが国境周辺で
使用されたという事実 』 だけだ」
ふたたび戦争を起こそうとする無頭にぶちキレル柾道だったが
壊れかけた偽人間には哀しいかな所詮、誘導起爆装置程度の役割しか演じられなかったのか
164~165頁全文
無頭「さあ黎子!! 来るんだ 我らと共に首都 『 統京 』 へ!!」
黎子
『 わからない 』無頭「折れた偽の刀と…」
黎子 『 何を信じればいいの 』
黎子 『 誰を信じればいいの 』
無頭「壊れかけた偽人間と…」
無頭「運命を同じくするほど お前の命は安くない!」
無頭「我らと共に来れば お前の実の父親にも会える…」
黎子 『 私は 何を 求めて いたの』
無頭「こい 黎子! お前はまだ価値がある!!」
黎子
『もう一歩も進めない 』そして
左頁下段で呆然と立ちつくす黎子の後方に柾道が立ち上がり
「…ずっと 一人だった…」
166~167頁全文
柾道「誰かの為に生きたかった 誰かのために闘って そして死んでも たぶん 悔いは無いと 思った」
柾道「愛する人の為に 闘える水沢隊長や 大貫さんが うらやましかった」
柾道「でもこの時代に 君がいた」
柾道「君を 命をかけて 護る…俺にも 護るべきものができたんだ…と」
柾道「でも あのとき気が付いた 俺は君の為に 闘っていたのではなかったんだ」
柾道「俺は自分の為に…」
柾道「 『 君を敵から護るという行為 』 それだけを自分が生きて行く理由にして 君を護ろうとしていた…」
柾道「…やっと 気が 付いたんだ あの 『 約束 』 の意味…」
ひとを愛するということ柾道「たぶん 守ったり守られたりしながら……黎子…」
そして168頁上段で、「
俺と一緒に いきてゆかないか」と手を差し延べる柾道に
目に涙をためたまま振り返り、その胸にとびこんだ黎子
「最後くらい好きにさせるさ」と黎子を諦め、命令を下す無頭
はたして雷神より銀ノ御雷は照射される
そして…
すべてはその瞬間に塵芥と化した はずだったのだが…
が、照準はズレ、まさかの自爆な無頭たちを直撃
ふたりは生き残る
生きるということ。ひとを愛するということ。たぶんあなたを信じる心をしんじて一瞬 ( ひととき ) を重ねてゆくということ。『 一緒に生きてゆかないか 』
二人の想いの果てるまでの、下段で、黎子のとびきりの笑顔で幕
左頁はぶち抜きで 『 剣師物語 完 』
しかしその後の5頁な後日談で、新たな事実が提示される
しかし平然の玉珧
さらに黒こげになりながらも這いだし、「我々は 『 御雷 』 の直撃を受けて生き延びた 初めての 『 人間 』 だろうな」と無頭
さらに焦げた衣を脱ぎ捨てるように脱皮ス ( ナニモノナンダ
「私も あなたと同じ特別製 後に人々は私達を 『 人間 』 として 視てくれるでしょうか?」と玉珧
「 『 人間 ( ひと ) 』 か 『 人 ( そうでないもの ) 』 かを判断するのは他人ではないよ。常に自分自身さ」と無頭
そして、柾道の急激な遺伝子変質率の上昇を危惧するべき問題ではないと片付け、この時期は御神の電力充填におよそ三ヶ月かかることを挙げ、シナリオ通りを提示する
この126時間後 南部日本連合政府は 北部総統治新政府に対し 宣戦布告する。つかのまの平和は終わりを告げ 歴史は再び動き出した。いずれ、また ふたたび…
という剣師物語後編は122頁。の計178頁
+ゲスト頁やらあとがきやらを含む総頁数194頁のB5オフセット版でありました。
絵は、まだまだ状況を一目できっちりと伝えられるレベルじゃないし
特にアクションシーンは、スゴイとか興奮するいぜんに、何をやってるのか読みとるのが困難な部分が多く
よーするに画力不足
味がある絵柄ではあるけど。
終盤はとても構成が好かっただけに勿体ないことしきり。前半部分の説明不足で、あらゆる事象が後出し解説的になってしまっていて、初見時にはちょっと思い入れしにくかったです
また、物語ばかりがどんどん進んでしまい、アソビの部分がまったくなく、せわしなく、よーするに生活感に乏しく世界観とか見えてきにくいし
特に長編のニューワールド系にもかかわらず、メインキャラ以外まったく登場せず、庶民がどんな暮らしをしてるのかとか、想像することもかなり困難で、ストーリーの好さのワリには感動はやや薄いのも事実
ひとことで言うなら、一直線にストーリーラインだけ
ナウシカみたいな、多方面から世界観を魅せてゆく構築法が欲しかったところ
西と東の違いについても、序盤できっちりとやっつけて欲しかったし。
基本的に、凄くイイこと言ってるんだけど、そのセリフに見合うだけのドラマの蓄積が圧倒的に不足してるため、胸にズキズキ響くまでは、残念ながら到底至らず
とまあ、10年以上も前の同人デビュー作に評価をつけること自体が間違ってるとしか思えませんが、やっぱりはっきりと感想を語ってしまうのがオイラだと思いますのでご容赦を
ともあれ、『 ひとが生きるということ 』 を 『 ひとが愛するということ 』 を、必死こいて訴えようとしていた霧恵昌朮は、根源的なところでは、まったくもって現在の霧恵マサノブと変わってねーじゃんというところで、思いっきり感動してしまったオイラなのでありました
いやあ、マジ下手ですが、ステキな作品でしたあ♪
いつか描きなおして欲しい作品ですね
霧恵昌朮 『 掃除屋 と、その他の短編 』 ( 62頁 )
発行:月刊制作委員会
発行日:1998年8月16日
月刊ワンパ38~43号 :掲載
2冊目の単行本
作画力 ★1の上
発想力 ★3の中
コマ展開力 ★2の上
物語性 ★2の中
世界観 ★2の中
テーマ ★1の上
想いのドラマ ★2の下
漫画的総合評価 ★1の中
ファン的宝物度 ★2の中
霧恵昌朮 『 掃除屋 』 ( 47頁 )
さて、この物語は、『 剣師物語 』 のそのまま続編ではないものの、番外編的なショートストーリーなので、前作を未読ならパスした方が無難です。
伝えたいことが上手く整理出来なかった と、言うべき作品集かもしれません。
しかしながら、 くだんの 『 ヤクヤ 』 へと続くベクトルもふくんでいるため、ファンならゲットせざるを得ないでしょう。
『 種と それにかかわるもの 全ての 解体・封印・破壊 』
それが彼 ( 炎縄柾道 ) の本当の仕事
キメラ女みたいなのとと対峙する柾道
どうやらワケアリらしい銃をもった少年をかばってるご様子
戦いのさなかガタガタと震えるばかりだった少年が決意し 銃をかまえ
というプロローグからタイトル頁へ
この世界に唯一の汎用攻撃人工衛星 『 壱弐煌星雷神 』
『 統合戦争 』 終結2年後
とゆーコトで
おそらくは前作の三ヶ月後くらいに始まったはずの戦争が終結して2年後ということだと思われますが、作品中で1982年のお話と知れます
舞台は相互不干渉地帯
この世界で 政府の命を受け その 『 星 』 のチカラを一任された者
いわゆる 『 戦後の後片付け 』 をする者達を人々は
『 掃除屋 』 と呼んだ
というタイトルロールな柾道のお話なんだけど、
タイトル頁の中で、遠隔地よりのサポート要員らしきオペレーターとの会話で、柾道の妻が臨月であることも知れます
場面変わって、
どうやら目的地に着いてるみたいで姉を捜しているらしい姉を追いかけ二ヶ月少年の旅路
でもって、回想シーンなワケですが
姉が政府の特別待遇生として研究員に選ばれ喜色満面
姉を探しに来たらしい少年を襲おうとしたヘンテコ生物をぶった斬る柾道
13頁目の柾道の少年に対するリアクションは、ちょっと私では解析不能でしたが
少年の名は 『 八鉦遥 ( はちがねはるか ) 』 歪岐県水訃村から、と自己紹介
この14頁目も、オペレーターとのやりとりが、何だか不自然というか。緊迫感が無いというか、そんなことでいいのか?みたいな…
15頁下段のギャグは、オペレーターがもうすぐ子供が生まれるからひやかせとでも言ったのであろうか?はっきり言ってよく解らない
もしそうなら、漫画としてもかなり寒い
だいたい、はじめからとても気になったのだが、任務を前にして迷子の一般人に、これだけベラベラとくっちゃべった挙げ句、今さらになって少年がこの施設で姉を捜していることを知るってのは、どう考えても順序がヘンだと思うのだが
で、「姉さんを護るためにここにいるんだ」に、当然、反応するワケなんだけど、うーん、やっぱり、言葉だけでドラマにしちゃおうとすると、感動には至らない
ともあれ18頁目のやりとりについて ひと言 今回はコミカルなノリで描きたかったのだろうか? いずれにしてもギャグとしてはおもしろくないんだが。ともあれ、ここで柾道は北の銃を少年にわたす
説明によると、血を使って撃つタイプで、原理的には 『 生き物の生きる仕組み 』 と同じらしい。無論、柾道は南の人間なので北の技術はワケワカメなそーな。
経験上、最下層には必ず 『 守護体 』 がいる、ということでしばらく休憩する
そのうえ、「侵入経路はあいつの 『 姉 』 しかない訳か」 ときてしまうと、あまりにも安易な後出しになってしまう。
でもって、以後ご都合どおりに、絵に描いた餅が展開される。
短編なので致し方ない面もあるとはいえ、んー…ドラマの必然性は欲しかったナ
ちょっと判りにくい部分もあるんだけど
少年の眼前に姉が出現 ( 幻影なのか? ) ⇒ 少年、姉を追いかけ? ( 前のシーンで消えたように見えたが、逃げたということか? ) ⇒ そして、試験管培養液に浸かったキメラな姉と遭遇 ⇒ しかし、振り返った先には
「何人、姉がいる!?」
な、辺り一面姉だらけッ ( このアイデアはよかったっス
少年吐く
そしてガタガタ震える
そこへ国家元首より連絡
ちなみに、このシーンでくだんのオペレーターの名が 『 ナギ 』 と知れる
ともあれ
目の前のキメラたちを 『 種の複製 』 と判断した旨、伝え、
「 『 種 』 の存在はオリジナルだけでも我々の手に余る」
と、初めて 『 種 』 の重要性を説く
そこでオペレーターは事実に行き着く
長女 八鉦 鶚 死亡 ( 1979年 )
長男 八鉦 遥 死亡 ( 1979年 )
1979年は前回の舞台だが、今回は年代が提示されてないので、感覚的に掴みにくいし
さらに、このあとは混乱の嵐で、私の脳ミソではちょっとワケワカメでありました。
が、とりあえず続けます
とゆーか、冒頭で1982年と説明しておくだけでシンクロし易さは大いに変わるはずなのだが…
命令を遂行するまえに、守護体らしきもの登場
で、柾道、ドーム型施設の天涯を破壊
理由の一つは陽動
もう一つは はたして
柾道、片っ端から複製を斃しまくるも、膝を突く ( とゆーところか? アクションが粗すぎてよくわからんが
なんのために ここで生きているの?ぼくの理由は姉さんだ。なにかを護る為に人は生きるのであれば、今一番、姉を殺しているのは誰ですか?ぼくはようやく理解した。姉さんと そしてぼくの てき、それは あんただ。使い所は 自分で決める!!でもって、少年、柾道を撃つ
ここは、もっと判らないんだが、少年が発砲したおかげで、何かが崩れて、外と直通する逃走経路が出来たということらしく、またそれは柾道の目論見どおりというところらしい。
ここで3年ほど前に 『 北 』 政府が大規模な選抜試験を行い、実験体を募ったと国家元首は推測
38頁目下段で、特別個体の複製の量産方法の図が示される
遺伝的に記憶力の優れた脳への情報の複写を目的とした、彼女の 『 自家受精体 ( オートガミーボディ ) 』 ではないかと説明。※あとがはでは 『 人口単性生殖 ( アーティフィカル・バルテノジェネシス ) 』 と書きたがったが、長すぎてコマにはいらなかったという弁も
が、そう説明する国家元首は、剣師物語の 『 少し 昔の話 』 の初っ端に登場する方の無頭にクリソツで、このあたり、前作読んでないと非常にきつかろう、と推測
無頭頸侍は何人いるのか?
あるいは変幻自在と考えるべきなのか?は、やはり両方併せて読まないと難しい、とゆーか、微妙に世界やキャラがリンクしまくるので、全作品読まないと、本当の意味ではたのしめないのかもしれない。
とゆーところに、やはり同人と言わざるを得ないというか、無論 『 夢枕獏 』 タイプと言えばそれまでだが、常に 『 一見さんお断り 』 を身に纏っているのは、プロとして決してオトクとは言えないと思う。
茨の道をゆくのは、人気作家になってからでも遅くないと思われ。
まあ 『 人間 ( ひと ) 』 ではないみたいだし。でも解りづらいな。
難解ミステリなドラマがおもしろいのは、きっちりと事実を見せつけてるからで、ここまで判別し難い事象が多いと思い入れがしにくい。ようは辻褄合わせ的なものではなく、わかりやすく提示された謎を、出すべきところで消化してゆかないと、目の前のドラマに感情移入しにくくなってしまうという寸法であろう。そう考えると、レビアたんは出来すぎだったというか。凄まじく進歩したのが、イヤでもわかってしまうのだが。
当たり前だろう
いったい何年経ってるんだッ とか聞こえてきそうだが…
ともあれ、国家元首は「この施設の目的はさっしの通りさ」と。
「百二十年前、この地に漂着し 我々に反映と混乱をもたらした借り物の知識。『 種 』 と呼ばれるモノの、小型化と大量分散」
と、続けて説明するが
この、百二十年前も、よくわからない。
『 黒船 』 到来が 『 種 』 の始まりなら、それは1853年なワケで1973年が いま だと仮定すると、休戦協定真っ直中な時代になってしまうと思うのだが…ううう
いずれにしても1982年だと思うので、1862年になにかがあった可能性も否定しきれない
はうっ…どうやらオレの記憶力も脳味噌も もはや相当にヤバイのかもしれない…
歳はとりたくないなあ ( 涙
ともあれ
「愚かなことだ。知識よりも意識こそが、我々 ( ヒト ) に必要なモノだというのに」と国家元首は結ぶ。
まあ、シリーズの最初に、熱血ドラマを描くというコンセプトがあったのだろうから致し方ないとはいえ、そちらは敢えて、ここぞの場面で輝かす程度に考えておいて、初めから、北と南と無頭サイドの三陣営 + 庶民たちという大河ドラマスタイルでじっくり腰を据えて描いてくれてたらなあ、としか言いようがない。だいたいに於いて、二隻の黒船という、原点に対する記述が少なすぎて、ほとんど意識から外れるところまできてしまっている、というのも、読者レベルでは困りもの。
さて、死人のはずの遥だが、
身体以外に記憶にも、何らかの調整を受け、おそらく 『 姉を探し、護る 』 という 『 使命感 』 を植え込まれ、この施設の生きたジェネレーターとしてエネルギーを供給していたのだろう。と。
アイデアとして優れたものもそこそこあったけど、ラストも 『 かっかさせて 』 という繰り返しだし、
『 ガキには優しくしてやることにした 』 というのは言葉としてもあまり響かないし
なにより、言葉にするたぐいの問題違うし、
極めつけは、
「でも、おまえは自分を知った」
という柾道のセリフで、言葉のカケアイばかりが優先し、ドラマできっちりと導かれていないいじょう、前作いじょうに、感動は足りませんでした。
やっぱし、ストーリー展開が速すぎるというのがホンネ。
じっくりと腰を据えて、一から描き直して欲しいなあ。
まあ、簡単に言ってしまうと、一人一人の登場人物が、惚れたと感じる人格を有していない、あるいは伝わってこない、とゆーことで、酷評御免なさい…な47頁じゃ、まだまだ輝かせる漫画力が無かった時代の作品でありましたね。
ってか、テーマとしてショボイ
キリエマサノブ 『 本格ラヴコメ のりちゃんと坂本君と犬 』 (6頁)
3冊目の単行本に続編 『 のり2 』 とともに再録されるため、レビューはそちらをご覧ください。
と、いったんサラリと躱しますが、実はこの作品で霧恵マサノブは2つの必殺技を身につけることになったのですチャンチャン☆
とゆーくらいメインの 『 掃除屋 』 よりダントツに霧恵マサノブを語るうえで、かかせない素材なのでありますよ。
ウヒャヒャヒャヒャ
あとがき な 作品解説が1頁あるんですが、まだ霧恵節には、ちょっと足りませんナ ( 爆
霧恵昌朮 『 のりちゃんと坂本君と犬 と、その他の短編 』 ( 66頁 )
発行:月刊制作委員会
発行日:1999年8月15日
月刊ワンパ12・13・37・39・44・46~48号 :掲載
3冊目の単行本
作画力 ★2の下
発想力★4の中
コマ展開力 ★3の上
物語性 ★2の上
世界観 ★3の中
テーマ ★3の中
想いのドラマ ★3の中
漫画的総合評価 ★2の上
ファン的宝物度 ★4の中
さて、霧恵マサノブの3冊目なのですが、いろいろな意味でまだ足りないところが目立ちますが、おもしろい味付けが随所に見られるようになり、作画的にはまだまだですが、コマ単位ではステキな部分も多くなり、ギャグゆーか機知に富んだユーモアが爆発しだして、霧恵マサノブのバカさ加減が好みの方なら 何が何でも要チェックでありますゾ☆
キリエマサノブ 『 のりちゃんと坂本君と犬 』 ( 6頁 再録)
恋人同士らしい のりちゃんと坂本君が デートの待ち合わせなのか偶然なのかはわからないけど
「の~りちゃ~ん
」
と抱きついてきた坂本君の腕に抱かれたワンちゃんを見て、のりちゃん怒りの右前蹴りが股間に炸裂 ( 爆
以下、逃走するのりちゃん
タイトルロゴ
のりちゃん土手で佇む の図
「心配したよ」と戻ってくる坂本君
に、のりちゃんが
「あんたなんにも知らないのね。犬は人類の敵なのよ!」と怒鳴り
さらに「犬は 実は群体で 折れてもスグ生える牙を持ち、高い知性で人の心の空隙に入り込み、人心を惑わしつつ世界征服を企む地球外生物なの!」と一気にまくしたて
たたみかけるよう即座に図を見せつけます ( 爆
その後の4~5頁目のアクションシーンはやっぱりド下手ですがアイデアはバツグンで、最終頁のしょーもないオバカさ加減まで、とても和みまくりました ( アッパレ☆
ちなみにのりちゃんは犬から世界を守る秘密結社 『 S・I・G ( スゴク イヌ ギライ ) 』の隊員で、対立組織 『 S・N・G 』 と手を結んでと、坂本君に世界を託しますが…
まあ、一昔前の作品とはいえ、バカさ加減があなどれないなごみの一撃でありましたとさッ!!
霧恵昌朮 『 雲と東へ 』 (4頁)
剣師物語の番外ショートです
雷神の制御者 ( オペレーター ) である渚と先輩 ( ここではまだ名無し ) のバイク二人旅。
雷神が引き起こした現実を確認しにゆくという、とても好さげなテーマなのだが、
幅を利かせたギャグがちょいサムイかもゾ
ともあれ、くだんの名無しの旅人クンと、また逢いたくなりましたあ♪
霧恵昌朮 『 のり2 』 ( 37頁 + 後日談1頁 )
『 のりちゃんと坂本君と犬 』 の続編なのですが、のりちゃんはまだちょびっと息があり、往生際の悪いツッコミなのりちゃんチョップで脳挫傷を起こした坂本君は半月ほど入院することになってしまったのです。
でもって、少し遅れて退院したのりちゃんはロボットになってしまわれてたんですね。
『 今、愛が試される!! 』 ( バカすぎッ笑かせすぎッ
さて、そんなワケで病院に乗り込む坂本君でしたが、ドクターXと看護婦ミッシェル君のボケツッコミは、たぶんご本人が思ってらっしゃるほどおもしろくないです。いや、むしろ、サムイです。才能はまだまだ五分咲きってところでしょうか
『 人類は今、未曾有の危機に瀕している! 』でもって、M県T市鳥羽水族館
の屋上のアレは何でしょうね、まったくダメです。こんなもんよっぽどマニアなアニオタしか解らんだろーがッ!! ( 激怒 ( 個人的にはDVD持ってますがね…
で、もはや犬も猫も遅れてるらしくて 『
人類最大の敵 』 それは 『
ラッコ 』 だ!!そうです…
まあギャグセンスはともかく このあたりの進行はまあまあです。
ただ、頁19の上2段目の2コマ目と3コマ目の間に、さらに途轍もない長さを強調する何かが欲しいです。
ここからラストまで怒濤のギャグのマシンガンな嵐なのですが、素に戻れる部分の 『 間 ( ま ) 』 が弱いため、感情移入するのは難しいかなと思われます。
アイデアそのものは悪くないし、むしろ秀逸なものも混じってるのですが、結果論では「惜しいな…」というところ。無論、商業レベルを基準とした目で観てのソレですが
とりあえず進行は
ラッコの胴体がミョーに長い ⇒ 坂本君驚愕ス ⇒ そこでロボのりたちの出番 ⇒ 坂本君まるで父親のような雄大 ( デカ ) い背中に見惚れる ⇒ ラッコは動物よりろしろ植物に近い その知能は胴体の長さに左右される とXが解説→彼女達の生き様を見ておけ とX ⇒
2名のロボのりがラッコをタコ殴り ⇒ 坂本君目の前にたたきつけられた現実に号泣ス ⇒ ここでXはアノ図みたいな 『
本物ののりちゃんはどいつだ!? 』 を提示 ( これはマジおもしろいぞ ) ⇒
ちょっとサムイかもなギャグ ⇒ 奴らは核をもしのぐ究極破壊兵器を手に入れてしまった ⇒ サンシャイン60 すべてのナゾはそこで明らかになる ⇒ 地下60階に到達間際「彼女だけは守ってやってくれ、愛の力で」とX ⇒ そして扉が開く ⇒
爆笑 ( ただし坂本君のセリフは同一コマ内に書かない方が、読者的には楽しめると思う。よーするに 『 間 』 だが ) ⇒
『
おそるべし!長いラッコ!! 』 ( とぐろ巻いてますが ) ⇒
切り札は 『
貝 』 ⇒ ある特定の貝をたたく震動がプレートの落ち込みを刺激する ⇒ 誘発される
大地震 さらに同時展開中の仲間たちが同じく貝の共振作用によって極地への氷を
溶解する ⇒ 勝利を確信したラッコはさらに続ける
「天空を支配した鳥のように、我々が地上を掌握する!
世界中のラッコが一斉に貝をたたく時 この星は我々のものになるのだッ! 沈めッ人間共ッ!!」 ⇒ だか、しかぁし! ⇒ ラッコたちの革命はとっくのとおにお見通しのXによって張り巡らされた罠 ⇒ 爆死した仲間達の無念を晴らそうとラッコも最後の賭けに出る ⇒ 結合分解低周波という荒技をいま繰り出す ⇒
ロボのり~ズ&坂本君をかばったX ⇒
結合分解低周波ッ!
Xを直撃
して
親父 マルダシ
はたして坂本父なXは「タケシ 母は生きている」と告げ ⇒
文字通り塵となる ⇒ ロボのり~ズ&坂本君も始末すべく再度必殺技を繰り出さんとするラッコであったが ⇒ ( 一瞬、解らなかった。
「…鳥に…なったよ…」
がとてもステキにポエムだったたげに、コマ展開も絵そのものも、とても勿体ない ) ⇒
「父の挑発に乗り、9回目をたたいた時点で
お前はすでに負けていた ( 霧恵節♪ ) 」
そして
二択!! ( ナゼニ二択? ⇒
『 本物ののりちゃんはどっちだ 』 ⇒
『 根拠は ない 』 ⇒
『 だけど僕の魂が教える! 』 ⇒
『 彼女に恋した心がおしえる!! 』 ⇒
『 愛は理屈じゃないんだ!!! 』 ⇒
ハズレ ⇒
そして本物ののりちゃん登場 ⇒
見開き×3の同人誌でなきゃ出来ない贅沢さで3連コンボ ( 唐竹割り ⇒ ハートブレイクショット ⇒ チャイニーズファイヤードロップキック ) ⇒
「坂本君のぼけなすーッ」と絶叫しながらトドメのチャランボ ⇒
『 坂本君 18歳の夏 』 ⇒
失恋 ( 失恋はわかってるんだし終幕とか終焉とかでいくない? と、思われるかもだけど、漫画で読むとおもしろい ただし、やはり間にコマがひとつ欲しいが ) ⇒ 完
とまあ、とてもおもしろそーですが、やっぱし絵力とコマ展開と 『 間 』 ですな。アイデアはとてもステキなんで現在方面の霧恵力で描きなおして欲しいですが、いやまあ新作描いた方がいいですかね…。
後日談の感想はスルーさせていただきますが ( 苦笑
霧恵昌朮 『 fact and truth 』 ( 4頁 )
コレも剣師物語の番外編な4頁ショートですが、ショートの見本のようにキレイにまとまってます。
が、
はっきり言って本編を読んでないと、まったく喰えない作品ゆーか、本来なら本編でやっつけて然るべき重要な補足です ので、剣師物語のファンならおさえておかないとダメですね…
あと、
最後のコマでやっと人間関係が把握できるのってのは、作品としてどーなんだろ?
本人は当然わかってるワケなんですが、判断材料が無い読者にコレだけで提示されると、えッ?となっちゃうんじゃないでしょうか
とりあえず、いろいろと疑問というより、最初にはっきりさせといて欲しかった相関図が少しだけ提示されます。
が、
いや…頭が悪すぎるんですよ私は、まだよくわかんないのですが
たしかに女の子の方は綾波黎子だと思うのですが
だとしたら母は黎子を産んだときに死んでいて
叔母がいるワケですから、母か父の姉か妹のはずで
で、たぶんそれは静香さんだと思うのですが、確証はどこにもございませぬ
でもってもう一人の登場人物な彼女は、死んだ水沢に横恋慕してたのでしょうか。もしくは付き合っててもおかしくはないですが
で、「姉は死後も なお黎子というカタチで あの人の心を縛りました あの人にとって黎子は私の姉そのものだったのです」とありますから、おそらく彼女は静香さんの妹ですよね?
これ、静香さんと彼女は姉妹なわけですから、彼女が水原を好きだということは静香さんともども水原方面の姉妹とは考えにくく、そうすると黎子の母親の姉妹ということで三姉妹になるのでしょうか
そうすると、姉がどこにかかってくるのかすら判らなくなるのですが
とゆーワケで
彼女を無理矢理 『 綾波静香 』 と断定したとします
しかし 叔母である静香は黎子が6歳のときに亡くなっているワケですから、無理がありすぎます
がしかし 静香は死んだフリの いないないばあ だったと考えられなくもありません
酷くうがった見方ですが、ヤクヤまで読み進めると無難な線にも思えてくるから不思議です
無論、邪推ですが
ってか、どこかで解釈間違えてるのか…はうっ
バカですう…オレ
……
気をとりなおして、ともあれ
ふたりの想いを交互に出し入れしながら紡いだドラマデス
霧恵作品にはありがちな演出法ですが、かなりアニメチックなコマ展開ですね
捨てられたひとりは疵を負わずむしろ暖かな力としてATフィールドみたいに感じておりますが、捨てたもうひとりは、ただただ血を吐くように…
とてもステキなのですが…
しかし読者に提示する順番として大いに間違ってると思います
それいぜんに、未だに相関図的にすら理解していないオレって… ( 涙
そんなワケで、彼女が誰なのか断定できないため、思い入れは出来ませんでしたあ ( 号泣
霧恵昌朮 『 掃除屋の後日談 』 ( 4頁 )
コレも剣師物語の番外編の 『 掃除屋 』 の続編でありますが…
巻末オマケギャグレベルですなあ…
はたしてすでに黎子には子供が産まれているのですが
そこへ柾道と八鉦姉弟がという
んー…
やっぱし、ギャグがあんましおもしろくないなあ
御免なさい、たぶん私の嗜好なんでしょう…。
ほか、ゲスト頁2頁とか あとがき2頁とか
ですが
犬苦手 とか
『 雲と東へ 』 の先輩は紀伊薊32歳独身 ( 前剣戟隊 ) で 『 掃除屋後日談 』 では34歳とか。
ありますが、きっちり漫画で白黒語るべきだと思いました。
ともあれ、あとがきが最高でした。特に 『 のり2 』 のとこが ( 爆
あと、裏表紙に4コマ×4アリ
『 クイズ地方で100人に聞きました 』 月刊ワンパ48号 ( 1999.2.13 )
『 ドュラえ悶 』 月刊ワンパ48号 ( 1999.2.13 )
『 ハイとロー 』 月刊ワンパ12号 ( 1995.8.6 )
『 ドュラえもん怒 』 月刊ワンパ13号 ( 1995.9.9 )
霧恵昌朮 『 生者の刻 』 ( 88頁 )
発行:月刊制作委員会
発行日:2000年8月13日
月刊ワンパ50~53・55~58号 :掲載 加筆修正アリ
4冊目の単行本
作画力 ★2の上
発想力 ★5
コマ展開力 ★4の下
物語性 ★4の下
世界観 ★4の中
テーマ ★4の上
想いのドラマ ★4の中
漫画的総合評価 ★4の下
ファン的宝物度 ★5
さて、霧恵マサノブの4冊目なのですが、
著者HPに
○僕にしては珍しく暗めの話で ( 中略 ) ●コミケに来ていた某談社のブースに腕試しで持ち込んだところ予想外に褒められたのが切っ掛けで、初めてプロになるという事を意識した作品。
○『LeviAThaNシリーズ』以前の作品の中では最も評価が高く、僕の中でも特別な地位を占めている。
●なんやかんやあってその一年後、投稿した某四季賞で準入選をいただくのだがページ数が多すぎるという理由で掲載はされなかった。
○残念至極。
●はっきりと認識できる人生の分岐点の一つ。
という記述がある通り、霧恵ファンなら必需品な一冊なのですが、現在は完売につき絶版らしいですので、ぜひ復刻して欲しいものです。
あとがきに
本当はこれ長編用の話なのです。子供の殺害や親殺しなどを間にはさんで、読者にもラスト近くの世界観自体のどんでん返しで ともちゃんのように償いきれぬ罪というものを より深く感じてほしかったのですが、本来投稿用の短編という絶対条件があったので そのエピソードはカットしました。
という記述があるのですが、正直、惜しすぎます。
さすがに描き直すくらいなら、新作描かなきゃですので、どうにもならなですが、とても残念なキモチになったことも事実ではあります。
ともあれ
上手いまではまだまだですが、作画的に整理ができてきて、コマ単位での状況説明をそこそこ出来るようになってきたことが、読者の立場から観ると、作品世界にのめり込める大きな要因だったんじゃないかなと思われます。まあ、本当に、エピソード的には不足していて、本筋だけで構成されちゃってる関係上、多方面からの刺激による相乗効果までは獲得できず、わずかながら厚みに欠け、世界観の説明に走らざるを得ず、結果として物語の厚みの方ももう一歩というところはありますが、とにかく花丸推奨品クラスなので、どこかで見かけたらぜひゲットしてくださいましね☆
では、レビューです。
霧恵昌朮 『 生者の刻 』 ( 78頁 )
僕らのいる世界 ( とき ) よりほんの少し先の
しかし確実にやってくる未来のお話
屋上に立つ男子生徒Aの後ろ姿 その長く伸びた影の中に融け込むように血を流し横たわっている女生徒
死体をまえに肩で息する彼の背後に立つ影
気配に彼は振り向く
「君は呪いをうけた。選ぶべき道はふたつ」と、眼鏡七三短髪の男Aは言った
『 人間であるための選択肢はひとつだけだ 』場面変わって、第二県立病院の正面玄関に到着した男子生徒Bと女生徒A
男子生徒Bは16歳の高二
女生徒Aはボランティアだがキャリアも免許もあるらしい
『 僕には ずっと探している ものがある 』 タイトルロゴ
どうやら老人を安楽死?させたらしい二人が同時に病室を退出
『 先輩 』 も含め、三人は二級免許所持者らしい
二級はボランティアで一級以上はプロであるそうな
事後、茶店でコーヒーしながら、「ともちゃんはさ ひとの役に立ちたいから これやってるの?」と、男子生徒B
ともちゃん「そうよ いいことするのに理由はないでしょ 司くんは違うんかい?」
司くん「僕は…そう 誉められたりとかさ 色々 気持ちいいからやってるんだろうね」
場面変わって、教室。どうやら男Aは新任の教師だったらしい
傷病休暇中の伊藤先生に代わり教鞭を執ることになった 『 諏訪 ( すわ ) 』
歳は32
趣味は特に無し
恋人は募集中
と、手際よく生徒たちの質問に答え
そこで、ともちゃん「先生は十年前の 『 変革 』 をどう思いますか?
直撃世代ですよね?」
諏訪「この学校には 『 ミチビキビト 』 が三人いて そのうち二人がこのクラスにいるそうだが…君がその一人か」
「はいっ 『 越廼 ( こしの ) 友美』 です」
人類史上最大の発見・発明は、 『
位相空間通信調律器 (
PSCT ) 』 いわゆる 『 霊界テレビ 』 の発明と、それに伴う 『
天国の科学的発見 』
この発見により
人間は 『 死 』 を恐れなくなった諏訪「PSCT ( Phase Space Communication Tunner ) 内蔵テレビの販売からわずか一年で 『 死後の世界 』 は世界中の国々が認めるものとなった
人々はこの一連のムーヴメントを 『
天 使 化 計 画 ( エンジェライズ プロジェクト ) 』 と呼んだ
法が施行された最初の年なんて 自殺者…自召者は 国内だけで二千万人を超えた
自力で死ねないヒト達のために 『 ミチビキビト 』 という制度までできた」
諏訪「さて そこで このクラスにいる もうひとりのミチビキビト君?」
司くん「はい 『 信楽司 ( しがらきつかさ ) 』 です」
「なんだ隣の席か ああン デキてんのか君達?」と諏訪
はうっ…ってなカンジの友美
司の「にゃはッ そんなんじゃないです」に、ちょい黄昏れ、友美は視線を窓の外へはしらせる
大革命以前の世界の総人口は約135億人
現在の人口は19億人
諏訪先生の答弁中に屋上に人影 = 先輩
「あのまま死後の世界が見つからなかったら この楽園 ( ほし ) はどうなっていただろう…と」
でもってチャイムが鳴る
「あの人 多分 ミチビキビトよ…司くんに似てるもの」と友美
先輩からのメール着信を見せる友美
『 杵築武彦 ( きつきたけひこ ) 』 よりのメールは 大事な話があるから独りで屋上に来い というもの
友美は司に同行を願うが
司はつれなく無視
それも乙女心無視なトゲトゲな皮肉での切り返し
間髪入れず友美ビンタ
目に涙
一部始終を覗いてたらしいクラスメートたちにひやかされる司
ここで、ミチビキビトにしか罹らない呪いのウワサが提示される
風が吹き抜ける屋上
いきなり友美を抱きしめる杵築
突き飛ばした杵築の はたして右手に握られていたのはナイフ
場面変わって廊下の司
おそらく、あのあと発せられたのであろう 『 会えなくなる呪い 』 を脳裏で反芻しながら、友美に謝ろうと決意する司の巻
そこへ諏訪
すれ違いざま「…あとは…君か…」
『 エデンに知恵ある者は住めぬ 』
事態に気づき驚愕な司
どうやら杵築を殺害したらしく、死体のまえに佇む友美
司がかけた声で、自失状態から恐慌状態に移行する友美
『 …呪われた者の選択肢は ふたつ 』26~29頁目の この4頁は、作画技法としても とてもよいし 伝わる
『 二日後 』PSCTで杵築と交信する司
友美に告白したら玉砕しちゃって なんだかめんどくさくなったからそのまま 『 送って 』 もらった みたいに、のたまう杵築
呪いについて問うが、漠然とはぐらかされる司
「お前 友美の事好きなんだろ?」の真意は、よほど勘がよい方じゃないと、一回読まなきゃわかんないという罠。
死んだ人間のワリには真摯じゃねえなあ 楽園なんてそんなもんかよ?というのがリアルタイムで初読したときの感想だったと記憶
やっぱり霧恵マサノブは、初読より再読の方が絶対におもしろい
いいことなのか わるいことなのか そんなことはわからんけど。
次の頁で友美から電話がかかり、
杵築との会話をやたら気にし、正直に応える司に対し、
「気付いてたわ なんとなく…あなたは多分そういうひと…それでもかまわないけど…」
とてもモヤモヤしたセリフ。あまりにも違和感ありすぎて、真意が測れなかったセリフ。霧恵マサノブの漫画は 『 読み 』 を必要とする部類なんだけど、あまりにも謎の主役自体を霧に包んで進むので、初読だとモヤモヤもかなりある。
なるほどな、と気付くのが終盤では、初読時の引き込まれ度がちょっと弱いかもしれない。
が
二度読めば間違いなくおもしろいのだが
商業作家としてなら、やはり 『 LeviAThaN 』 レベルの解り易さは欲しい
ともあれ、
「…私…
あなたが大好きよ」
という、歪んだ貌の友美のアップで頁を〆る
翌34頁目↓
1コマ目:横長小幅トーンのみ
( 時間経過や夢と現の切り替えを提示する漫画手法としてのソレ
2コマ目:友美の笑顔
くりかえし何度も考える…
純粋に 『 ヒトの役に立ちたい 』 と願う彼女の気持ち
3コマ目:刃物を振り上げる司 ~ 4コマ目:ミチビキビトしてるの図
そのゆるぎない人間を肯定する力
5コマ目:顔に返り血 ~ 6コマ目:したたり落ちる血を流す刃物を握った手
僕の内側から沸き上がる淫らな欲望
7コマ目:顔に手をやり前を見据え吐息 ( 横顔
それを満たすためだけに仕事をしてる僕には…とうてい辿りつくことのできない想い
8コマ目:同様の描写 ( ただし顔正面 息づかい荒め
彼女は僕には遠すぎる
僕には彼女を好きになる資格は ない
9コマ目:黒バック白抜き文字
欲に流され 『 本当の気持ち 』 すら判らない 罪人の僕には …日曜日の教室
「屋上はね 天に近いの…ヒトが少しでも高いところで死にたいと願うのは それだけ天国に近づけるから」と、ひとりごちる友美
司、来たる
友美の聞きたいこと
「みんなのこと憶えてる?」
「憶えてないよ。その必要もないし」
「そうよね。私も
憶えてないもの…」
さらに
『 知らないことは罪なのか 』 と友美
「無知は 『 罪 』 だよ」と司
「 『 知らない 』 って事は 『 知ろうとしない 』 ってことだ それは知る努力を怠っている あかし 僕は… 『 生きる 』 とは 『 成長 』 すること…はてなき高みを目指して進む その意志を持つことだと思ってる 生物の進化がそうである様に それは 生者 ( いきもの ) の義務だと思っている だから僕は絶えず罪を意識している…自分が無知であることは 僕自身よくわかっている…それでも 僕がこの世界に留まっているのは
『 生きること 』 自体が僕の生きる目的だから」
「僕はまだそれ以外に生きていく意味を持てないでいる」
「私のこと 好き?」 最後の質問と前置きしてから友美
この期に及んで煮え切らない司の執行猶予は1頁
いきなり刃物を抜いて襲いかかってきた友美
しかしその切っ先は間一髪で脇の下をかすめ、返した司の刃は友美の左肩を直撃する
激痛が友美に襲いかかる
罪…否が応でも意識してしまう 『
贖罪 』 の二文字
「楽にしてあげるから」という司の言葉に、恐怖にかられながらの遺言
「
お願いお願いお願いお願いお願いお願い忘れないでッ 私の事忘れないでェッ」
「だってホラ いつでも…いつでも すぐに 『 TV ( PSCT ) 』 で会えるんだし…」
「
あなたほんとにそんなもの あると思っているの!?」
司の耳を掴んで引っ張りながら涙し激白する友美の図が乙
ともあれ、言ってしまってからハッとして、
「…ごめん…ごめんなさい…忘れて…お願い…私の顔…見ないで」
そこへ いつの間にか廊下にいた諏訪の声
「呪いとともに各地を巡り 何人もの君達を観てきた 結末はいつもこうだ」
48~53頁目で語られるのは主に以下の通り
十年前 百三十億に達する人口爆発に科学技術は追いつけなかった
全員がわがままを通すには人間の数が多すぎた
地球を離れて生きていく術をまだ我々は持てずにいる
あの時代をのりきるための唯一の手段としての 『 宗教 』
あらゆる世界宗教に 『 地獄 』 の設定があることの意味
そしてまた人々が信じたもうひとつの教え 『 科学 』 が導き出した情報世界
情報の総共有化社会の利用
あらゆる教義内の 『 死後の世界の設定 』 の改変 すなわち
『 神の御名においての自殺の解禁 』ようするに 『
間引き 』 こそが天使化計画の真意
「アレは本来 利用者本人の思考をモニタリングするための機械 正式名称を 『
全能界磁気共鳴システム 』 という
つまるところこれで全容が語り尽くされるワケなんですが、まあ、まったくもって身も蓋もない真実ですよね。
結果的にだけなら人助けであることは何ら変わりはありませんが
いままでやってきたことの意味あいは まったく異なってきてしまうという…
そして 『 呪い 』 という名の 『 真実 』 を受けてしまった 『 ミチビキビト 』 は絶望するしかないという罠
だがそれこそが選別であるという阿鼻叫喚
無知を憎み偽善を懼れる者は 自らもまた罪人であることを知っている
信じていれば嘘という概念は産まれない 知らなければ それが事実だ
ほとんどの人達は 『 安心 』 を得るために生きている 信じることは安心を獲得するひとつの方法
なればこそ有史以来 あまたの人々が探し求め手に入れられなかった 楽園が ここにはある
『 生 』 に執着しなければ
ひとは誰でも天使に ( 無限に優しく ) なれる『 人類はようやくたどり着いたのだ 』『 世界の果て ( 天国 ) に 』ここは人類という種が辿り着いた終着駅 平穏を保証され自由意志に司られた 完全な平等と平和の地 この世界を維持していけば 全人類は最後の一人にいたるまで 幸福なまま滅びることができるだろう
だがッ生者は…生者は それでも進むべきなのだよーするに、科学が人口に追いつくための時間稼ぎであるがゆえ、いずれ事実が知らされることとなり、人類は死への恐怖を原動力とし再び前身をはじめる刻がくるということ。
が、この計画で稼いだ時間はせいぜい百年間分
人類の増殖力は歴史が証明済み
もし
百年後 人口が再び適正値を超え なおも科学の進歩がこれを下回っていたら
そのときこそ この星は もたない
我々は その時のための保険のひとつなのだ
人口の爆発を末端からゆるやかにし 社会に適度な恐怖という刺激と死という名の糧を与える 『 敵 』 となる
『 呪い 』 とは俺や そして君のような流血を厭わぬ者 『 調律者 ( チューナー ) 』 を選別し保護するために造られた ひとつのシステムなのだ
と、一気にまくしたてる諏訪は、さらに
『 殺人の感覚 』 を植えつけるための刃物の仕様義務
やらも説き、
そして核心に触れる
事実を知った時 普通の人間は罪の意識 良心の呵責に耐えられない
だが PSCTがもたらした 『 記憶の虚無 』 を知る以上 自ら自殺もできない
だから恋愛感情をもつ者ならなおのこと 相手の手にかかりその者の記憶に残ろうとする
告げてはならないはずの 『 現実 』 という 『 呪い 』 をかけてまで自分という存在を残そうとする
『 言葉 』 こそが 『 呪い 』 の本体
かくして呪いは連鎖する
『 調律者 』 あるいは 『 本物の聖者 』 にめぐり会えるまで
「さあ 君は呪いを受けた」
『 選ぶべき道は ふたつ 』「調律者 ( ひと ) としていきるか…それとも…人間 ( ひと ) として死ぬか」
『 自らの意志で 『 本当の心 』 のままに決めるがいい 』司「僕に 『 本当の気持ち 』 なんてあるのかさえ…自分でもわからないんだッ!!」
『 お前 友美のこと 好きなんだろ? 』『 …彼女は虚無を怖れ 僕に知恵の実をあたえた 『 蛇 』 だ 』『 愛に辿り着くことなく みずから死を選んだ自殺者だ 』『 … なぜ … 僕は彼女を … 』司は泣きながら友美を背負って階段を昇る ( 見開き
『 彼女をどうして 救おうとする 』『 … それは 『 偽善 』 だ 』
『 その行為は 僕の最も嫌う 『 偽善 』 そのものだ 』「わかってる わかってるよそんなことはッ」
『 『 お前 』 は 『 偽善者 』 だ 』「それでもッ それでもぼくはッ …
君ともっと もっと話をしていたいよッ!!」
屋上
一陣の風
舞う羽根
陽の光
わたしもよ【完】
うにゃあ
お疲れ様です
これっわ゜っちの画像で 物語を伝えるのは到底無理というものですが、ちっとはイメージしていただけたでしょうか?
本当にたまらんですヨ、コレ
さて、あとがき ( 2頁 ) について
まあ、御本人もあとがきで語ってくれてるけど投稿用なためエピソード不足で
あと、基本的に霧恵マサノブはバッドエンド否定派だそうな。
で、「でも投稿作品はインパクト勝負だし やっぱり否定するからにゃ一度描いてみないといかんだろと言うことで,この作品はあえて悲劇の物語としました」
ということなんですが、これはとてもダークでシニックな作品ですが悲劇ではないですよね?
まあ、最悪のエンディングは回避して、読者にオチを託すカタチであえて終わらせてるのですが、モノノミゴトに裏切られたカンカクです。
「読者の感性によって3パターンほどの結末が想起できる現在のラストに落ち着きました」というくだりがあるんですが、読み終わった瞬間に完全無欠なバッドエンドを想起するのは、オレには無理でしたし、何度か符号を与え直して読み直しましたが、やはり自分自身がこうあって欲しいみたいな読み方が染みついてしまっているために、いくつかのエンディングは想起できたものの、最悪を想像するのはとても困難なんじゃないかなと。
そこにあるのは 『 希望 』 であって、少なくとも 『 絶望 』 ではないと、そう想えてしまったオイラではありましたが、
さて、みなさまの胸には いったいなにが残りましたか?
無論、呼吸をととのえたあとでならいくらでも結末など想起はできますが、もうそれは自分本来の感受性による物語ではなくなってしのいますので、
思いっきり鬱ではあるのですけどね。
ともあれ、十字架を背負いながらもふたりは、なんとか互いの疵を舐め合い、生きてゆくんじゃないのかな?
みたいな
と、いうのが、初読完了時の素直な感想でしたが、無論、そのまま屋上からナカヨクダイブとかもアリだと思いますし、
クライマックスで友美を背負ってゆくシーンでの自問自答を、従来、司自身が性癖として抱えていたもの、タイトルロゴ前の 『 僕には ずっと 探している ものがある 』 をメインテーマなキーワードにして読み進めていくと、違ったものがゾクゾクと背中に貼りついてきてしまったりもするようですが
出来うることならこの物語を読んだ方からの感想なり解釈なりを、めちゃくちゃ欲しいなあッ!!とか思ってるんですがね ( 苦笑
でも個人的には、読者に投げるラストより、最悪なラストを見たかったのかもしれません。
なによりバッドエンドが大好きな私ですから、完了3頁前の時点では、このまま屋上でボロ泣きしながら友美の首を絞めつつ強姦し、挙げ句の果てに切り刻み、首を落とし、自ら正常に狂信者することにより精神を繋ぎ止める司という図すら脳裏に浮かんでしまったくらいですしね。
ともあれ
テーマが素晴らしく、アイデアが抜群で、言霊遣いな才能が爆発しておりました。
かくも素晴らしい物語なのですが
しかし、逆説的に言えば、勿体なさすぎかもしれません。
アイデア自体はスゴイのに
言葉が勝ちすぎていて
漫画と言うより小説に近くなってしまっていて
あらゆることを絵より言葉で説明してしまっているので、本来あるべきMAXな感動までは届かなかったというのが、正直なところです。
エピソード不足も惜しいですがね。
それいじょうに、絵で魅せきれてない部分が大きすぎました。
なお、著者HPの作品紹介欄によれば
なんやかんやあってその一年後、投稿した某四季賞で準入選をいただくのだがページ数が多すぎるという理由で掲載はされなかった。
残念至極。
ということです。
なんか、物凄く残念な運命を感じてしまったのは、はたしてオイラだけなのでしょうか…
ひとつだけ、個人的な苦言を呈させていただくなら、せっかくマルチエンディングで終わらない物語を読者に提供したのなら、彼らは 『 ヤクヤ 』 に登場させないで欲しかったデス。
ともあれ
もしどっかで見かけたら読んでみてくださいましね♪
あっ、あと、
この4冊目から、奥付にポエムが載ってますんで、ご紹介☆
聖者は購うべき罪を持たない
されど無垢なる刻はあまりに短く
なればこそ 生者という
霧恵マサノブ 『 レビアたん 』 への道。 ( その2 ) も読んでみる