さて、本日私は終日帰ってこれませんので、はじめて予約投稿なるシステムを利用させていただいたのですが、うまく聖夜にお届けできてるでしょうか。
時間不足と力量不足で、記事リンクなども貼れませんでしたが、来春にはなんとかと思っております。
また、10日間ほど、ネットから離れておりますがゆえ、コメントなどいただいてましたら、返信はもうしばらくお待ちくださいませ、御免なさい。
また、このあとも年末のマイベストすら相当に微妙な状態のため、雑記などは三が日すぎることと思われます。
それでは、お約束どおり、霧恵マサノブの『LeviAThan』の全3巻にあたる『海神』『海贄』『海宴』のご紹介です。
これがいったいどんな作品なのかといいますと、猛暑で断水し、主人公の貧乏大学生である青年が節約のため貼りっぱなしにしてた風呂の水は、その後5日で見事に腐り、そなとこから、「風呂洗え!!」と、いきなり現れたスク水の女の子が、自らを『七瀬六州統べたる大海の王』と称し、『レビアたん(Leviathan)と呼ぶがよい
』と、宣うところからはじまる物語なのですが、出たしは斯様にコミカルな寸劇でもあります。
さて、ヒロインの『レビアたん』ですが、幻想譚などで有名な、かのリヴァイアサンと考えてもらっても差し支えありません。また、海神(エビス)と作中で著者が謳ってますとおりに、レビアタン=エビス様と考えていただければ思います。
簡単に補足させていただくなら、
そもレビアタンは、レビヤタン(悪魔学ではレヴィアタン)というヘブライ語の、「集まって襞をなすもの」あるいは「引き出されるもの」の意で、最初に歴史の舞台に登場したのは旧約聖書の『ヨブ記』第3章8節の
呪えよ、これを、日を呪う者、レビヤタンを起こすに巧みな者が。
(関根正雄訳 岩波書店)の件だと思うのですが、第41章で書かれた姿形の描写から考えれば無論、言葉通り
地の上に彼に比すべきものなく彼はおそれを知らぬものに作られた。すべての昂ぶる者も彼の前に恐れ彼はすべての誇り高き獣の王である。
であり、聖書で神をも畏敬させたその存在自体があまりにも特殊だと言えるのではないでしょうか。また、『ヨブ記』内で盛んに比喩として用いられる『ワニ(レビヤタン)』『カバ(ベヘモット=悪魔学でもベヘモット・幻想譚ではベヒモス・ベヒーモス)』ともども、第40節19節『彼こそ神の道の最初のものだがその造り主は彼を剣をもって脅かす』を引用して、レビヤタンとベヘモットの両者が無意識内のデーモンの力の概念に近いことを示唆する詩的なイメージを描いたウィリアム・ブレイクの解釈は悪魔学でもかなり有名なものであるとか。神や獣神などを庶民が身近な動物に例えるそれは、未だ神の名を知らぬ住民にとっては当然の所為であり、また、エジプト人はワニの眼を暁のシンボルとしていたことを鑑みれば、お稲荷様がキツネ野郎になっちゃうのとさほど変わらないことかもしれませんね。まあ、そんな聖書の難解性も手伝い一度はワニにされてしまったこともあるレビヤタンではありますが、さらに『イザヤ書』第27節1節から『曲がりうねる蛇』にして『海にあるドラゴン』の英語翻訳時の誤りから『海の魔物』にされたり『鯨』にされちゃったしたこともあるのですが、もとよりこの記述自体がサタンがらみの抽象性に充ちているためそちらはかなり微妙かもしれません。また、『アブラ=メリン稿本』によれば、『アマイモン』『アリトン』『アスモデ(アスモデウス)』『アスタロト』『ベルゼブド(ベルゼブブ)』『マゴト』『オリエン』『パイモン』の八将を率いる4人の君主の一人であり、他の3君主は『ベリアル』『ルシファー』『サタン』であるとか、またドイツのイエズス会士にして魔女学者でもある『ペーター・ブンスフェルト』は、デーモン学の歴史をほとんど知らぬ間に綴ったと言われる、人に七つの大罪をおかさせる七人のデーモンのリストを作成しましたが、それによればレビヤタンは『嫉妬』を司るデーモンで、ほかの6つは『驕りのルシファー』『強欲のマモン』『好色のアスモデウス』『憤怒のサタン』『暴食のベルゼブブ』『怠惰のベルフェゴール』となっているそうな。また、17世紀のエクソシスト『セバスチャン・ミカエリス』神父は、『驚嘆すべき憑依の物語』で、デーモンの階級を発表しましたが、これは教会が偏愛したデオニュシオス天使の階級を揶揄するためのものであったらしいです。というわけでまったくもって眉唾の余談だけれど彼のリスト『ミカエリスの階級』によれば、レビアタンは『ベルゼブブ』『ルシファー』『アスモデウス』とともに第一階級4熾天使に挙げられているとか。その後も、文学・哲学・映画・漫画・ゲームなど数多なるレビアタンへのアプローチがなされてきたわけですが、そもそも無形である概念を研究する悪魔学は形而上的であるがゆえ斯様にいとも容易く新たな学説を取り込んでしまうわけですが、そう言う意味では後の悪魔学で『レビヤタン』の項目に『霧恵マサノブ』が記されていたとしても何ら不思議ではないのかなと。
さて、霧恵マサノブのレビアたんですが、それは『ヨブ記』にあるような概念より、どちらかというと、悪魔学やら幻想譚など後世に創りあげられたイメージとしての複合的な意味合いが強く感じられました。また、エビスの定義を分厚く示した第21話『ネクサス!』での劇中レポートな井永重国教授による『エビス神考察と神気についての中間報告』で語られるように、烏帽子をかぶり釣り竿を片手にほがらかな笑顔で魚を抱えた恰幅のよい翁であるところの七福神としての恵比寿様で、元来漁業の神様な唯一の日本土着神というイメージで登場したわりにはどちらかというと、その元来の意味合い通りに『漂着神』としての総称としてのそれであり、元来は異郷たる海より訪れ豊漁をもたらすモノ。「ここでないどこか」からやって来て幸せをなす客神(マレビトガミ)。漂着神(ヨリキタルモノ)の総称。という著者の端的な説明が、もっとも理解しやすいのではなかろうかと。
『古事記』『日本書紀』などの『蛭子』にはじまり、以来、何でもかんでも受け容れて八百万化した神様王国秋津島人の、なんだか気質そのままってカンジな、とてもらしい神様なんじゃないかなと、悪魔だろうと魔物だろうと堕天使だろうと妖怪だろうと、みんな受け容れてみんな神様にしちゃう日本文化らしい一面がみられるのも、たぶんお国柄なのでしょうね。
そんなわけでとってもとっつきやすい出たしなのですが、ギャグパート以上に幅を利かせてるシリアスパートの重みのせいで、かなりハードな人間ドラマを形成してることも特徴です。それは神様のお話だからヘビーなんじゃなくて、神様にかかわってしまった人間たちの想いのドラマがけっこうハードっていう意味ですが。何人か登場してくれる神様たちも、まあ、それなりに当然ハードなものは背負ってますけど、ある意味達観してらっしゃるもので、そちら方面の痛々しさは存外に稀少なんじゃないかなと。
そんなわけで、この作品は、神様にかかわってしまった人間たちが紡ぐ性と愛の人間ドラマといってよいと思うのですが。まあ、どーしよーもなく大バカで漫画チックなドラマと、シリアスな想いがぶつかり合うリアルな人間ドラマが半々くらいのペースで紡がれるのですが、100%大バカなセックスドラマを繰り広げながら、大真面目に何だかのテーマを訴えるところが霧恵流と言ってもよいでしょう。
ぶっちゃけ、この作品はマジで面白いです。
握ってるチンチンがふやけてしまうくらい爆笑させられたり、気付けば目頭が熱くなって胸をおさえていたり、そんなこんなを幾度も幾度も繰り返させられながら、人が生きるということを、人が悩むと言うことを、人が愛すると言うことを、人が欲すると言うことを、幾度も幾度も再認識させてもらえる、素晴らしいエロ漫画です。
まあ、この漫画さえきっちり紹介できれば、私が訴えたかったことの半分は達成できるってくらい、まさにモチーフとして最適な作品なのですが、結果から言わしていただくと、私自身の私のレビューに対する評価は73点(★4の下超無理矢理)ってところでしょうか。さすがに自分のレビューなのでかなり甘めの評価ですけど、霧恵マサノブだからこそ書けたっていうのと、だからこそ力不足を感じずにはいられなかったというのと、嬉しさ半分もどかしさ半分というところ。
このレビューさえきっちり書ければ、あとはもう、ほかにこんなタイプの異なる『凄い』が成コミにはあるんだよ、という証明をやっつけるだけで済むんですけどね…。
せっかくチャンスが巡ってきたのに申し訳ないっていうのが本音なのですが、結局2年もアマゾン様でレビューさせていただいたにもかかわらず、根本的なところは何一つ変えられなかったというか、未だに成コミファンの方の中にまでセックスに対する差別意識は強く残っていて、結局、臭い物には蓋をしろ的な垣根は、まったく取り払えなかったことに、自分自身に対する憤りすら感じずにはいられないのですが、
つまるところ、この作品はエロ漫画なのですよ。
導入部やオチをはじめとして漫画シーンは最上級なのですが、7割はセックスシーンでできてるのですよ。
半分以上がセックスの描写なのに、セックスシーンを楽しめない方にはまったく以て無用の長物でしょう。
人と人の性で漫画を綴るのがエロ漫画ですが、それ自体を楽しめないと、いくら漫画として面白いと言っても一般漫画の満足度の3割にしか充たないって寸法です。
私が今日までにかかわってきたリアルでの友人関係な方々で成年コミックスを語れる相手ってのはとっても少なくて、現在日本在住な方に限ればわずか7名しかおらず、ことあるごとに相手が漫画好きだと知るや成コミを啓蒙しようなどと試みてきた私ですが、ほとんどの場合、せっかく読んでもらえても「セックスシーンがなければいいのにねえ…」とかが関の山で、それ以前に「オマエハキチガイカ?」みたいに思われてしまうことがほとんどでありました。
まあ、18禁サイトではありますし、いちおう24禁を推奨してる関係上、読者の皆様のほとんどは社会に出られている方々なんだと思いますけど、実際問題として現実社会でエロ漫画を啓蒙して回るってことは相当にアブナイ人間だと思われる可能性大ですので、くれぐれの私の真似だけはしないで欲しいのですが、200人に一人くらい、目覚めてくれる方がおられることも事実ですので、やっぱり私は辞められないのでありました。
面白い漫画が好きという方にはセックスシーン自体がネックとなり、汚らしいものにしか思えないという成コミの、そのほとんどの愛好者は、所謂、男性向け(女性向け)の抜きツールとして購入してるわけで、だから私がいくら騒いだところで、『面白い』より『抜きやすい』がエロ漫画に求められている根本的指標なわけで、当たり前なんだけど面白いエロ漫画は抜きやすいエロ漫画より人気は圧倒的に低いのです。そして、当然のことながら、単行本になるには通常、雑誌に掲載される必要性があるわけですが、雑誌のアンケートなどでも上位を独占するのはヒロイン(ヒーロー)が可愛くて(カッコヨクて)解り易くていたずらに凝ってない作品なわけで、凄い作品や、凝りに凝った面白い作品はもうほとんど滅亡状態なのが現状なのですが、まあ、さすがにこの流れは今後も止められないでしょう。
実際のところ成コミでの売れ筋っていうのは『激エロイ』→『エロカワイイ』→『萌え』っていう順位で、アキバとかの特殊例を除けば『おもしろい』とか『凄い』っていう成コミは、まったくというほど売れてないわけで、そのほとんどが情報買いなどせず、アダルトショップや書店の成人コーナーで表紙を見て、あるいはショップのお薦めを見て買うっていうオナニーツールなので、致し方ないことなのですが、だから当然『このエロ漫画がエロイ』という主張の方が圧倒的に正しいということも、せめてこのプログを読んでくださる方には知っておいて欲しいなと。
それでも、まだ面白い系の作品は、抜けることを前提に生き残る余地も残してるのですが、昔に比べればジャンルは極端に一本化してしまい、凄い系の作品はもう死滅しかかっているっていうのが、とてもセツナイです。
そもそも、これだけ嫌われ者なマイナーメディアにもかかわらず、さらに性的趣向が大いに物を言う分野なこともあり、極端にアブノなものは化石と化してしまうのも、道理といえば道理なのですけどね。
そんなわけで、ある程度成コミに関心がある方への購入の指標のひとつにはなったかもですが、私か2年間取り組んできたことはほとんど無駄だったワケで、でも、それでも私は、だからこそ、成コミ内での差別くらいは無くしていけたらいいなという、本来の趣旨どおりに叫んでゆくしかないのでしょう。
無論、嗜好としての好き嫌いが存在するのは当然で、それを好きとか嫌いとか言うのならともかくも、ダメとか害とか禁止しろとかいうことだけは、だからこそ、せめて、成コミファンなあなたの口からだけは聴きたくないのが本音ではあります。
二次元に三次元のモラルを絶対に持ち出したくないというのが私の理念ではありますが、もし本気でモラルを持ち出したら、成コミもエロ漫画もほぼ絶滅するでしょう。
先進国の中で日本ほど未成年者の性行為に無頓着な国はないのですが、世界に歩調を合わせるなら、いずれは20歳未満のキャラが出てくるエロ漫画はすべて厳禁になってしまうかもしれません。ロリコンもショタコンも少年少女ものも大好きな私としては死活問題ですが致し方ないことでしょう。二次元に三次元でのモラルを当てはめるのはバカげていると思うのですが、もし本気で当てはめるのなら、あらゆる意味での鬼畜成分を含むものも全没ですし、最終的には夫婦の明るい性交と成人男女のコンドーム推奨系以外は何も残らないのかもしれませんが。
そういう意味もふまえて、この作品には、『買収のための性行為』『近親相姦』『拘束凌辱』『神との契約のための人身御供』『輪姦強姦』『復讐のためのお仕置き』『相手の意志を無視したSMプレイ』『女と女のSEX勝負』『儀式としての屍姦』『逆襲の放置プレイ』『未婚者の中出し』『未成年者男女の性行為』『寝取り寝取られ』『乱交』などが描かれています、ということを予めお伝えします。
ただしそれらは、『性愛』の素晴らしさに力を与えるための手段として描かれたものです。
この作品には、狂おしいまでの人の想いが詰まっています。
この作品には、男と女が想いの丈を全力でぶつけ合うセックスシーンを、あくまでも中心として描かれています。
この作品は、真剣勝負な性愛に満ち溢れています。
7割はセックスシーンです。
セックスシーンはあまりにもストレートに情熱をぶつけ合うため、所謂、「ダメダメ、うっふん、イヤンバカン」みたいな、ちょっぴりゆるくて背徳的な、あるいは恥辱的なエロ成分や、情緒には欠ける部分があります。
どのセックスシーンもほぼ全力疾走なので、メリハリ自体は少なめです。
作品としての整合性は非の打ち所がありませんが、所謂、漫画チックなキャラが勢揃いしているため、リアリティーは必ずしも高くはありません。
分厚く素晴らしいセックスシーンが垂れ流されるにもかかわらず、それいじょうに漫画としての厚みがありすぎるため、2回くらい読んでからの方が使いやすいということは否定できませんし、単に抜きやすさだけを求める方へならお薦めのしようはありません。
表紙と裏表紙に英語で記されたとおり運命に導かれた人間ドラマです。
そして運命など結果の形容詞にすぎないということを教えてくれる人間ドラマでもあります。
たぶん、小さな棘のように数多のシーンやセリフが胸に刺さったまま、何度も何度も読み返してしまう、そんな漫画です。
登場人物の一人一人がマジで生きてる漫画です。
トビキリ鬱な成分を撒き散らした挙げ句、胸を掻きむしってくれたりもします。
大バカチックに塗り込められた漫画で人の道を説いたりするような、「こんなバカ漫画に人間を語られたッッ」と自失すること請け合いな漫画です。
作者の海への憧憬と人間愛が炸裂しまくる漫画です。
多くの登場人物がきっちり自分の役どころを演じきり、幕が下りてもカーテンコールが鳴りやまないような漫画です。
作品への感動を、誰かと分かち合い、語り合いたくなるような、そんな漫画です。
圧倒的に女性陣の方がしたたかで力強く生命力に満ち溢れた漫画です。
登場人物のひとりひとりに老若男女の分け隔て無く恋をしてしまうような漫画です。
ひとりひとりのキャラたちの想いのドラマがギュウギュウに詰まってる漫画です。
いくつもの人間ドラマが交錯しながらお大きな渦の中に収束してゆく漫画です。
聖書を原典にした作品にあるまじき姦淫ぶりです。だからバイブルなのですけどね、と言いたくなるくらいセックスの素晴らしさを説いた漫画でもあります。
オムニバスな流れを辿りながら最後にはすべてのドラマがひとつに繋がる、そんな漫画です。
とても形而上学的なエロ漫画です。
結論だけ言えば、ガールミーツボーイな漫画でもありす。
私は霧恵マサノブを憎みます。私一人だけ残し流れ去る因果の海を憎みます。
私は霧恵マサノブにこがれます。私を包み圧倒的に奪い去る因果にこがれます。
こんな漫画に出会わなければ、もうちょっと楽していられたのにな、と思える漫画です、私には。
こんな漫画に出会ってしまったからこそ、残りの人生への未練も払拭してくれた、そんな漫画でした、私には。
現実世界な三次元で私がこれまでに経験してきた素晴らしいセックスの数々が甦ってくるような漫画でした。
こういう漫画を読んでしまうと、ひと言ダメ押ししなけりゃ気が済まない私です。
「エロ漫画読むのはかまわないけど、みんな三次元で恋をしてくれよ!!」みたいに。
エロ本としての抜きツール以外の成コミに興味のない方にはお薦めしません。
漫画として感動できて、読み返せば読み返すほど感情移入できて、どんどん抜きツールとしても使用頻度が上がってゆく、そんなタイプのエロ漫画を求めている、あなたへのお薦めです。
全3巻でのお薦め以外する気はさらさらありません。
ここまで読んでくれて、自分に合うかもしれないと感じてくれた方だけ、ぜひ1巻を読んでみてください。
評価:103点(★6)
宝物度:大宇宙
たぶん購入の指標としてのレビューなら、これにエロシーン2頁程度の画像で充分なんだと思います。
だけど私はとっても欲深い人間なので、46億年後の、この恋する惑星のどこかで、名も知らぬ未来のあなたが、昔々秋津島という島国にたしかに存在していたマイナーメディアのなかに、奇蹟と呼べる作品があったという、儚くも浪漫な証明をするための、自分なりのレビューをここから書きます。
無論、見る見ないはあなたの自由です。
参考文献:
『悪魔の辞典』 フレッド・ゲティングズ著 大瀧啓裕訳 青土社
『ヨブ記』 関根正雄訳 岩波書店
この恋する惑星に生まれおちてこれた歓びを噛みしめ、そして、すべてのあなたの恋する未来へ捧ぐ。
霧恵マサノブ『LeviAThan 海神』 SERAPHIM COMICS ヒット出版社 ISBN4-89465-348-6 2006年12月13日発売
Meeting is a destiny.
Intersecting is inevitable.
An inevitable curse is a fate.
Still,
At that time,
she accepted all.
出逢いは運命
交差は必然
予め定められた回避不能な受難
それでもなお
彼女はすべてを受け容れるだろう
Meeting is a destiny.
Intersecting is inevitable.
An inevitable curse is a fate.
Still,
She struggles in a lot of people,s flows.
Because it was remembered laugh on that day
出逢いは運命
交差は必然
予め定められた回避不能な受難
それでもなお
人々の流れにうちに彼女は苦闘する
笑えてた日々を覚えているがゆえに
霧恵マサノブ『LeviAThan2 海贄』 SERAPHIM COMICS ヒット出版社 ISBN4-89465-377-3 2007年10月13日発売
Meeting is a destiny.
Intersecting is inevitable.
An inevitable curse is a fate.
The girl
becomes a god
And
Meets the boy.
出逢いは運命
交差は必然
予め定められた回避不能な受難
娘は神となり
そして少年と出逢う
Meeting is a destiny.
Intersecting is inevitable.
An inevitable curse is a fate.
However
They do not dread
They sacrifice for love
with smile.
出逢いは運命
交差は必然
予め定められた回避不能な受難
けれども畏れはしなかった
彼らは贄として我が身を捧げる
愛のために
そして笑顔を守るために
霧恵マサノブ『LeviAThan3 海宴』 SERAPHIM COMICS ヒット出版社 ISBN4-89465-401-3 2008年7月14日発売
Meeting is a destiny.
Intersecting is inevitable.
An inevitable curse is a fate.
she meets the boy again
And
God is reproduced.
出会いは運命
交差は必然
予め定められた回避不能な受難
娘は再び青年と出逢い
そして神は変遷する
Meeting is a destiny.
Intersecting is inevitable.
An inevitable curse is a fate.
Even if
it is a fake to separates,
They will call each other a
"Friend".
出会いは運命
交差は必然
予め定められた回避不能な受難
それがいつわりの離別であるならば彼らは互いに呼び合うだろう
『友よ』と
異訳:天然猫肉汁アリス缶詰
遠く
漆黒の海を共に戦い抜いてきた
つがいの星は
その片方が大気圏上で燃え砕け
四散した破片は
その惑星の生まれたばかりの海に降り注いだ
第1話『おまかせ!!レビアたん』(24頁)
キャスト:井戸正宗・レビアたん
そんな、ミゴトに腐った水から「風呂洗え!!」と、突如湧いて出たのは、奇天烈フィンまで装備したスク水に烏帽子の女の子で、自らを『七瀬六州統べたる大海(わだつみ)の王』と称し、「レビアたん(Leviathan)と呼ぶがよい
」と、まるでかのラフィールみたいにな高慢ちきさで愛らしく微笑むのでありましたが、「諸国を漫遊しては掃除を怠る不届き者に天罰ゥ~~」なぞと、手にしたフィンでポカスカと愛らしく殴り倒してくださりやがります反面、律儀に自らの手で(神様なのに)風呂をピカピカにしてくれたりもするのですよ。
そんなオチャメなヒロインが、まっことエビス様らしい託宣を授けてくれるのですが、
当然、断水中なわけで、水を伝わないと帰れないというもっともらしいオバカな流れから漫画を組み立て、巧みなギャグ展開から嘲り笑うかのごとき切り落としで、脱水症状の飢餓感から、水分を求めて住人な青年『井戸正宗』にむしゃぶりつく、著者のエロ漫画3本目の挑戦にして商業デビュー作は、あとはもう4分割×2頁な大胆不敵構図のフェラ描写を経て、さらに二転する水分補給合戦な怒濤のえっちシーンの末、オチャメなギャグで終結するのですが、何度観ても、とても新鮮なのでありました。
正宗にのしかかるレビアタンの図は「おまえはコバンザメかよ」と言いたくなるほどステキなユーモアペーソスに満ち溢れているのでしたが、まったく意味合いが異なる最終話でのそれは、涙さえ誘ってくれたのでした。
個人的名言集
「レビアたんと呼ぶがよい
」
それはただ私が『森岡浩之』の熱烈なファンだというわけだからだけでは決してなく、レビアたん=Leviathanという意味のもつ重要性としてのそれです。
でも、やっぱり、たぶん、きっと、物語を通してのレビアたんという人間像(神だけど)を浮き彫りにしている『象徴としての笑顔』というヘビーな意味でのそれかもしれません。
「…おぬし気配りさんじゃったか」
カチンときた正宗の悪意で冷水をぶっかけられたレビアたんでしたが、この言葉が100%天然なのかどうかは読者の皆様のそれぞれのご判断にお任せするとして、全3巻読み終えたあとでは、圧倒的な想いのあれこれを詰めこんだところから発せられたひと言だったんじゃないかなと、私には思えて仕方ありません。
何れにせよ、このセリフは以後もレビアたんが再三再四口にしますので、ちょっとだけ気配りして読書していただけたらな、と。
第2話『リアクト!』(26頁)
キャスト:井戸正宗・小烏葵・旅人・井永重国・東雲次久夢
いつも極めて無愛想で、なんだか怒った顔をしている某富豪のお嬢様な『小烏葵』が初登場の巻です。
当時、まったく意味不明だった冒頭1頁のフェラ~顔射シーンは、その後に大きな意味をもつ伏線ですのでぜひとも脳裏に刻んでおいてくださいませ。
そんな彼女と正宗のご対面は、人数合わせの学内合コンでババを引いた正宗という図ではじまるのですが、それはもう『極めて無愛想で、なんだか怒った顔をしている』という形容詞が間違っているとしか思えないほど壮絶な、子供が泣き出すレベルにスゴコワイ迫力で、無惨にもそんな彼女とカップリングされる正宗だったのでありますが、夜道でそんな彼女に誘われるままにはじまる唐突なキスシーンの間にも表情すら変えない彼女の、口からこぼれ落ちた、とあるひと言に、ちょっとカチンときた正宗に、「私に笑い方を教えてちょうだい」と、イケシャアシャアとのたまう彼女だったのですが、さらにまたその後のひと言が追い打ちをかけ、思いっきりカチンときた正宗は、彼女を押し倒し、いきなり挿入し、中出しを決めるのでありましたが、
そんなところから彼女の直球(まっすぐ)な凄さを認識した正宗は、だからといって引くには引けず真っ向勝負を挑むのですが、説得力抜群につくりあげた12~14頁目の一大ドラマの流れに背くことなく、あとはもう怒濤の性交で、さらなるドラマをつくりあげ、まるで小宇宙な人間ドラマの素晴らしさを魅せびらかしつつ幕。
彼女のマジな天然直球ぶりをぜひとも楽しんできださいまし。
一方的な想いがビンビンに伝わってくるハードコミュニケーションなガチエロ描写と、第1話ではテンポの好さとオチャメなノリにもってゆかれて、まださほど目立たなかったネームセンスを、セリフで紡がれる所謂漫画的コマ展開に補足する意味での一人称ナレーション的モノローグをまじえるという形で融合させた漫画形態としてのバランス感覚の素晴らしさが際だちまくり、私の心を鷲掴みにした記念すべき作品です。
処女なのに青姦・お掃除フェラからイラマチオ&ゴックン・さらにアナル姦と、ハードに奏でられる肉体によるハードコミュニケーションがステキすぎる逸品。
たたしエロシーンでの正宗のネームにはまだ多少のぎこちなさが残ってますけどね。
個人的名言集
「たぶん 今まで 必要がなかったから」
正宗が最初にカチンときたセリフですが、このセリフ自体が葵のそれまでの人生の重さを率直に表した、真摯な言葉だったんじゃないかなと。
「私に笑い方を 教えてちょうだい」
スゲエ言葉です。紹介頁を最初はこちらにする予定だったのですが、このシーンだけは漫画としての流れのなかで皆様に拝んで欲しいというのがあって差し替えましたが、無論、このセリフは物語全体の葵方面のドラマを演出するうえでもっとも重要な意味をもつもののひとつでしょう。
実は第3巻で、この言葉から派生するところの一大人間ドラマを魅せつけてくれた著者ですが、このセリフから派生した、そのドラマ方面だけでも、ひとつの物語の感動としては充分すぎる素晴らしさであったと、私の胸の鼓動が確実に訴えつづけてくれているのでした。
無論、「キミ得意だからそういうの」は、彼女の狡猾さ・賢しさから出たそれであって、決して文面通りの意味ではあり得ないことは、読み進めるうちに自ずと理解できることでしょう。
第3話『イカとメロン』(24頁)
キャスト:井戸正宗・レビアたん・小烏葵・名無しの旅人・セバスチャン・謎の黒猫
冒頭1頁の正宗と親友でもある『名無しの旅人』のやりとりで正宗の貧困ぶりを読者に提示したところへ目の前を通り過ぎる葵の図を描き、
「その人を見ただけで心拍数が百超えるというのは何かの病気か」と、マジで執事(セバスチャン)に問う葵の天然ぶりが大爆発する回です。
はたしてバイトから帰宅した正宗を待ち受けるアクシデントな、葵+レビアたんという構図から、
三者三様な想いのドラマを詰めこんで、ヒロイン2名による怒濤の即席コンボの完成です。その後の1頁で葵とレビアたんの因果のとっかかりを説明し、さらにラスト頁で紛う事なき人生を演出してくれやがりました手腕に脱帽です。
最終頁の左2コマ目の思わず漏れる笑みにこそ、何かを感じていただければ幸いです。
遮二無二正宗に突貫いるヒロイン二人が、お互いを尊重しつつも繰り広げる一直線バトルなエロ心がとてもステキに眩しかったですよ。
なお、4コマにわたってこれ見よがしに登場する黒猫クンは、その後の登場頻度こそ少ないものの要注目キャラであります。
タイトルの『イカとメロン』のメロンは第2話よりの伏線絡みで、イカの方は正宗のバイト方面なのですが、後にそれ以上の大きな意味合いが隠されていたことに気付くことでしょう。
個人的名言集
「その人を見ただけで心拍数が百超えるというのは何かの病気か …そうでなかったらなにかしら」
葵の直球ぶりが天然であるを証明するために用いられた追い打ちです。
そして葵にとっては、背負った重責も、何もかもをかなぐり捨てるほどの、きっかけであると言えるでしょう。
「一口で言うなら コレの重さが倍になるくらいぶっかけられたのじゃ
」
ユーモアの一瞬のキレ味も抜群という意味で。
配置も絶妙でしたが。
「なんだか よく わからないわ」
通過点なのですがね。
人の想いのドラマは確実に移ろうのだというそれとしてリアルタイムな物語に配置して提示した『間』と『タイミング』が素晴らしく絶妙でした。
第4話『アレイズ!』(26頁)
キャスト:井永重国・東雲生子・東雲次久夢・東雲英明・東雲麻由子・井戸正宗・小烏葵・レビアタン
2話の冒頭でちょっぴり顔見せしたものの、『南氷洋における巨大生物』の研究をライフワークとする翔海大学極洋水産研究室教授『井永重国』がほぼ初登場にして丸々メインのお話です。
冒頭頁で井永教授の疎まれぶりを90年代アニメ調で料理します。
さらにタイトル文字含む2頁で、現在方面進行中ドラマを魅せつけ、舞台をちょっぴり過去へと巻き戻します。
妻子と別れ、十年以上も調査研究に没頭してきた所謂、家庭ダメ男である彼のもとへ、土砂降りの雨の晩、教授宅前で、ずぶ濡れになって佇んでいた娘『東雲生子』と傘をさして歩いてきた教授の、邂逅シーンから物語ははじまるのですが、その後のコマ展開が凄いの何の。教授方面の過去・過去進行系の二人の性行為・
生子の家庭方面の悪夢な過去・現在方面の二人それぞれの想いのドラマを交互に出し入れしながら物語は突き進み、
さらに生子の妹である『次久夢』のドラマも含めたラスト3頁で、2つの別次元の抱擁で描かれた、さらなるドラマの追い打ちが、ズキズキと心を蝕んでくれる必殺の一撃でありました。
実は、この回には壮絶なほど狂おしい人生模様なドラマがいくつも詰まりまくっているのですが、さすがにその一部始終は読者だけが知り得る特権でございましょう。
ともあれ、天文単位級の凄まじくも素晴らしい、汚くて美しいドラマが凝縮されていて、ミゴトと言うしかありませんでした。
また、この回あたりから特に作画的な好さが目立つようになってきましたが、小さなコマや背景までがきっちり計算されていて、総合的な意味での芸術性が備わりだした時代と言えるんじゃないでしょうか。
個人的名言集
一人の時間が 永すぎた
彼の人生の重みそのものです。
とてもイタイですがステキです。
おまえは俺の 子では ない
痛すぎる…
ズキズキと棘のように胸をほじくってくれたセリフです。
「中で出して
濃い血でもっと 私と 深い絆の家族創ろ
」 …もう一度… 家族になろ
想いの蓄積が吐きちらした言葉であるがゆえ、単なるエロシーンとしての淫語とは大いに意味合いが違ってきてるという、こんなスタイルも霧恵マサノブならでは。
こんなセリフが随所に鏤められ、ハードな性表現の作画と組み合わさることによって、核融合的なセックスシーンを提供してくれていることも見過ごせません。
「…中出ししてって言ったじゃない 生子(わたし)の子宮(なか)に出してって イカせてなんて頼んでないッ なんでそゆことするのかな この ばかッッ でぶッ 変な髪型ッッ」
そういう彼女は鉄腕アトムなんですがねえ…。
ともあれ、彼女の思いの丈の凄まじさが、胸を劈く必殺の一撃。
第5話『旅人の自由亀甲』(26頁)
キャスト:名無しの旅人・名無しのウェイトレス・長船備前
結局、シリーズではもの凄く重要なポジションを任されているにもかかわらず、第一部では最後まで名無しのままで終わってしまう正宗の親友な青年(名無しの旅人)が初登場する回です。
大学の夏期休暇にバイクで旅をする彼がたまたま立ち寄ったレストランのウェイトレスにまんまとハメラレ、気づけば縛られていたというお話です。
これも現時点で名無しのままのウェイトレス+出張中の中年オヤジなリーマン『長船備前』による悪ノリギャグもまじえながら繰り広げられる緊縛SとMが入れ替わる性愛のドラマで、人の性への探求心の奥深さを描きあげるとともに、「社会に出ればしがらみに足をとられて動けなくなる」ことへの虚しさすら謳いあげた、自由と不自由に対する考察がとてもミゴトです。
24頁目の砂浜に佇み人生を語り合う男二人を見向きもせずに、ひとり勝手に海ではしゃいでる彼女との対比がまたたいへん美味しゅうございました。
そして25頁目の彼女のリアクションからはじまる男二人の対比もミゴトに、ラストまで鉄壁。
『自由と束縛』を人間ドラマと性愛ドラマの両面から語った名作漫画の巻でもあります。
また、名無しの旅人が、さりげなく凄いことをやってのけるところも要チェックな回ですよ。
個人的名言集
「ホラホラ顧客(オーディエンス)がお目覚めやでッ 泣けッエロ中年ビール腹! アギアギって!ほら!アギアギって!豚みたいに!虫みたいに!」
笑ってしまう淫語ってエロ漫画失格という説もありますが、それさえも霧恵マサノブの魅力のひとつにほかならないでしょう。
「あんな体勢の奴に人間を語られたッッ」
どんな体勢で何を語ったのかは観てのお楽しみということで。
ともかく大爆笑。
ともあれ、こんな悪フザケな漫画に人生を語られてしまった読者であるところの私は、マジデムカツクほど虜なのでした。
「遠くまで行けるといいですねぇ 社会に出ればしがらみに足をとられて動けなくなる」
言い得て妙すぎてかなりイタイです。
無形の財産を切り捨てる覚悟があれば、大概のことはできるんですけどね…。
「…今日はどこまで行こうかなァ」
青春って、とてもステキな時代ですよ。
失うことを恐れなければ幾つになっても青春はできますけどね。
それにしても『旅人』は、霧恵マサノブそのものってカンジでとてもステキなキャラなのですよ。
第6話『本能と冷凍庫』(24頁)
キャスト:井戸正宗・長船早津紀・レビアたん・小烏葵
正宗とレビアたんの漫才かけ合い的漫画で冒頭1頁を和ませた後、唐突に-40℃の冷凍保管庫に閉じこめられた、正宗と海洋水産研究室所属の大学院生な『長船早津紀』先輩の絶体絶命の図を魅せびらかしたのち、続く3頁で本来のドラマの起承部へと移り、研究室内の秘密やらを巧みに織り交ぜながら、絶体絶命状態の1時間後な本編に戻るのですが、この漫画展開法の巧みさも霧恵マサノブを語るうえで絶対に見逃せない重要ポイントなのではないでしょうか。
限界にきた二人はついにお互いの性器で体温を上げようと目論むのですが、-40℃で涎や愛液はヤバクね?という突っ込みはエロ漫画なので抜きにして、完膚無きまでの完全着エロがこれほどナチュラルに響いた作品も珍しかったです。
また、それいじょうに紙一重状態な生存への危機がもたらす種の保存本能がもたらすところの異常快感が、倒錯を突き抜けた錯乱レベルで素晴らしすぎました。
そんな土壇場をあざ笑うかのごとく、オチャメというよりはギガトン級大バカに登場するレビアたんには、はっきり言って握っていたチンコも撫でていたクリも大爆笑すること請け合いです。
生命危機時に本能がもたらす性本能の水爆戦と、狂気の沙汰も腕次第な大バカイズムの二重奏を、とくとご覧あれ。
騒ぎを余所に風呂で和んでるレビアたんがアクセントですが、コマ左側にさりげなく添えられた5文字のコメントが、さらにセンシティブ。
ハードなセックスと大バカなギャグを垂れ流しながらも、端々で伏線の回収やら、さらなる伏線をつくってるところが、いかにも霧恵マサノブ的ではあります。
個人的名言集
「COOKさんとな!?」
親父ギャグな淫語変換で勝手に欲情しちゃう、レビアタンが、無茶苦茶大好き♪
「ヤダっつっても全力で犯すわよ」
反則でしょう?コレって。
「ビュルビュルって膣(なか)にビュルビュルって
…ッき 君の体温私にちょうだい
」
さらにこの回は隠語名言の乱れ撃ちでありましたが。
「呼んだかの?」
たぶん三番目くらいに大爆笑した、個人的マジウケ。
このシーンで笑えない人も存在するのが世界の摂理というやつです。
第7話『チェイン!』(26頁)
キャスト:エビス神・小烏社・小烏楓・貞次
女系一族であり、神に血を売る淫売な巫女の血統である烏丸財閥の小烏家の人々なお話です。
今回も冒頭からの7頁までエロシーンを一切使わず、8頁目から怒濤のエロシーンに雪崩れ込むという著者にすれば標準的なスタイルで魅せられるのもひとえに頁数がキープできていることの賜物でしょう。
きっちりと貞次の運命のはじまりと烏丸の歴史を語ったのち、葵の祖祖母である『社』と祖母である『楓』と社に拾われた少年『貞次(のちの葵の執事=セバスチャン)』の、禁断と背徳の泥沼な幸福を、
月に一度の御霊会にて社とまぐあうエビス神という図を盛り込みハードに展開させてゆく狂気な性の宴を存分に楽しんでくださいまし。
エビス神が常世から運ぶ豊饒の力を得るために当主は代々その身をひさぐがその運命という、小烏家の血塗られた系譜も提示されます。
神と交わり、近しく神気をその身に享ける者は徐々に老いず変わらず子を成せず、という世界観が浮き彫りになる漫画として重要な要素もギュウギュウ詰め。
その行為を目の当たりにしながら、貞次にしかける楓の背徳攻撃も見所ですが、覗き見をしていた二人に課す社の宿題は、人間ドラマと性愛ドラマの両面から、滅茶濃くて素晴らしかったとだけ叫びたい私です。
歴史を刻んだ人間という言葉だけでは、もはや言い切れないレベルの女の性の業の深さと、激しい肉体のぶつかり愛によって紡がれる想いの丈の広大さが、素晴らしすぎる大宇宙でした。
時間の輪のうちから取り残された彼女と、分相応に老いてゆく男の浪漫が、星の奇蹟な逸品です。
怒濤のセックスの余韻で人間を語り、次のラス前頁でストーリー方面を詰めこみ、最終頁をオシャレにな浪漫チックで彩るという手法も素晴らしすぎる作家性でしょう。
個人的名言集
「あなたに仕事をあげましょう」
そしてまたひとつの運命が歴史の渦のなかに呑み込まれてゆくのでした。
「あなたの覚悟を証明してみせなさい」
綺麗事で生きてゆくことの方が絶対に賢くて正しい生き方ですので、くれぐれもリアルで真似しないようにしてくださいね。
自分に嘘をつかない生き方ってこと自体が、そもそもダブルバインドの雨霰なのですよ。
…背後から柔らかな重みと上気した頬の熱さを感じても 僕の両眼は絡めとられて身じろぎもできなかった
官能表現のモノローグとして霧恵マサノブが用いる手法ですが、この表現力自体が一般的抜きツールとしてのエロ本的エロ漫画を求める方への壁にもなりかねない諸刃の剣な才能です。
「ならばその情熱で私を孕ませてごらんなさい」
作品世界にのめり込めた方のそのほとんどが、たぶん感動させられたんじゃないかなと。
それくらい凄いセリフでしたが、逆説的に言えばピンとこなかった方には霧恵マサノブ自体が相性に合わない可能性大。
いつも脳内変換アニメで楽しんでる私です。
この子を拾って来た時からね お母様はこの子の自由に焦がれたのでしょう?
楓方面からのモノローグですが、そこには母への憧憬と敬愛と、貞次への嫉妬が詰めこまれているのですが、同時に『自由』に対する著者の哲学を、この先にあるドラマの成熟とともに提示してゆくという、霧恵イズムの考察としても非常に判りやすいモチーフのひとつでしょう。
「…貞次ッ 命令よっ!! 腰が砕けるほど突きまくって お母様を喜ばせなさいッ!!」
多くの想いを断ち切るための、きっかけとしての宣言でもあります。
「まだよ! まだ全然足りないわッ!! それで届くとお思いッ!?」
これも凄すぎる。
最終3巻の後書きでの著者の手書きコメントもそうですが、私にとっても、まったく足りません。もっともっともっともっと霧恵マサノブをッッ!!
「でも だからこそ 烏丸財閥総帥として 小烏家当主として 母として
あなたたちを守る あれはそのための力です」
このセリフも後々のドラマに受け継がれるそれですが、ある意味、人を卓越してしまったところにある者の重みを感受するには充分すぎる言葉でしょう。
「いいかげん私の神気も薄れてきてると思うのよね …ためしてみよっか?」
ダウト!
強烈に反則です。
第8話『三バカとホルマリン』(26頁)
キャスト:レビアたん・パゲノ所沢・パンチェンコ小河原・ディブ三ツ浦・井戸正宗・小烏葵・東雲生子・東雲次久夢
第6話のラスト近くの展開をレビアたん方面から捉えたお話です。
正宗の危機を救わんとレビアたんが、何とか二人のもとへ急ごうとするのですが、とことんドジっ娘なためなかなか辿り着けません。
そうこうするうちに翔海大学非公認サークル『轟姦部』の面々である『パゲノ所沢』『パンチェンコ小河原』『ディブ三ツ浦』にとっ捕まってしまい、さあ大変というお話です。
見た目、レビアたん輪姦されるの巻きの危機一髪な展開ながら、当然レビアたんの主食は水分なもので、予想通り、なるようになります。
三バカのキャラも素晴らしく、大バカ漫画チックな真剣さそのもので萌エロ定義をとことんかましてくれるのですが、結局のところ、もーどーしよーもないくらいラスト頁までとことんレビアたんのキャラ勝ちってか、一人勝ちです。まあ、人間業じゃないですしね、文字通り。逆転の爽快感もステキなのですが、突然、漫画チックに出現した葵の、微妙にステキなポージングから繰り出される怒りの鉄拳が凄まじすぎるほどステキに作品に色を添えてくれやがりました。
最終頁で「痛くされるのも好きじゃが痛くするのも割合好きじゃぞ」と、不気味に微笑むレビアたんが、ワンクッションののち、天然ぶりを発揮するオマヌケなオチまで、もう完膚無きまで虜です。
個人的名言集
「制服脱いだら学生じゃないッ メイド服脱いだらそいつはもうメイドじゃないッ ナース帽(キャップ)脱いだらそいつはもうナースじゃないッッ フェラの時ジャマだからってメガネをはずすな――ッッ」
萌エロ原理主義万歳♪の巻です。
ナイロン生地の上からプニプニのスリットをなぞると…ほのかに塩素の香りがした
でも、やっぱり霧恵マサノブ流なんですがね。
「我が鋼の如き剛直はッ 貴様の嚙筋力を完全に陵駕しているッッ」
バカすぎます♪
「痛くされて悦ぶ そんなケシカランおまんこは 肉奴隷決定だ」
バカすぎます♪
「塗(まみ)れて溺れろォッ!!」
あ~あ…やっちゃったよ的なブッカケなのですね。闘いで敵に塩を送るとどうなるかという…。
「…じゃがッ服を汚したのは許さぬッ」
そっちかよ(笑)という意味で。
「わしは痛くされるのも好きじゃが痛くするのも割合好きじゃぞ
」
私は痛くされるのもそこそこ好きですが痛くするのは滅茶好きです♪
第9話『Relay Ⅰ』(カラー4頁)
キャスト:井戸正宗・小烏葵
本来なら『ハーヴェスト』のあとの第11話に当たり、第13話『ウイッシュ!』の一場面でもある、レビアタンの告白劇シーンの抜粋的な作品なのですが、カラー4頁ショートということで巻頭にもってきて第9話扱いになってます。
構成的にもちょっと飛んでて「あっあれか!」というところが乙。
レビアタンのとまどい気味のテレ顔が無茶苦茶眩しいのですが、さらにもう一度単行本内で、アレを目の当たりに出来るというシアワセ設定になってます。
個人的名言集
「…困ったの わしはお主を…中々好いておるようじゃぞ
」
最終コマのレビアたんのテレ顔がたまりません♪
その前のカットも滅茶ステキなんですけどね。
第10話『旅人の絶輪島奇譚』(50頁)
キャスト:名無しの旅人・叢雲・警察官・アキツ・老若男女なシマンチュウたち・鈴・鈴の父親・井戸正宗・レビアたん・パゲノ所沢・パンチェンコ小河原・ディブ三ツ浦・小烏葵
初の前後編ものです。
八重山諸島の『西表島』ならぬ『南裏島』が舞台に繰り広げられる、白昼夢のごとく美味しく、悪夢のごとくセツナイ物語のはじまりです。
いつの間にか最南端にたどり着いた名無しの旅人はキャンプ場での野宿を許可されるのですが、はたして彼がキャンプ場にたどり着くとそこには木々の間に色とりどりの天幕が張られすでに原始的なムラの様相を呈していたのでした。
そしてドラマが始まるのですが…。
野生の王国さながらに裸ん坊で走り回る子供たちに顔役『叢雲のオバァ』への道案内をしてもらいキャンプの許可をもらった青年に、夜半突然襲いかかる影。
知らない娘が股間に顔をうずめているではありませんか。しゃぶりたおされ1本抜かれたあとでで、しなやかな身のこなしでのしかかってきた彼女は簡潔に「夜這い」とひと言。あとはもうめくるめく逢魔の刻の幻か蝴蝶の夢かみたいに、娘が一人増え二人増え…。美味しすぎる三輪車な酒池肉林の宴の翌日、陽光のもとで再会した最初の娘は『アキツ』と名乗り、「なんだかトンボみたいな名前だね」という問いに「だって私 虫だもん」と、笑うのでしたが。
その島は豊かな島でした。
その日食べる分だけを調達すればよい日々。
アキツと交ぐわいスコールで身体を洗う志乃での生活。
そんな日々の中で生き物としての自分がどんどん純粋になっていくのを青年は思い知ります。
はたして青年は自分が楽園に辿り着いてしまったことを認識してしまうのです。
すべてが満ち足り、何も望むものがない世界は、楽園であり、かつ、最果てでもあるのです。
ここまでが前編の概要ですが、後編ではさらに物語の核心部が多く語られます。
本当ならここに前半部でのナレーション部のうち名無しの旅人のモノローグをすべて抜き書きしたかったのですが、さすがに時間の都合で断念いたしました、御免なさい。とにかく、このモノローグが大部分を占めるナレーションにキャストのセリフを絡め、絵で伝えるコマを、静と動、間と流れ、によって展開させるところから導かれる日本が産んだ最高のポップカルチャーたる漫画が、なぜ凄いのかという理由がここに凝縮されていて、アーティステックなポルノとしても世界に誇れるだけの極みまで達している、絵と文字が伝えるワンダーランドな才能が大爆発している、まさに神の領域レベルなのでありましたが、モノローグだけ抜き出して読んでも、ヘタな短編小説いじょうに楽しめる、この逸品のもつ本来の素晴らしさをお伝えするのは、もう少しだけ未来ということでご勘弁のほどをでありますが、ともあれ。
叢雲のオバァが、もう何十年も前に、この海に奪われたかけがえのないものの正体とは?
そして青年の親友である正宗の夢とは。
虫籠の中で踊らされる住人たち。
甘い甘い楽園の蜜に溺れて見ていた夢の中での理想に破れ、ついには断腸の思いで自ら夢を振り切らんとする青年を待ちかまえていたのは、さらなる悪夢な現実の種明かし。
このやるせない虚無感と痛々しいセツナサに満ち溢れた凄まじいほどの人間ドラマを、分厚いエロシーンをギュウギュウ詰めにしながら47頁に詰めこみまくり、あまつさえ残りの3頁(冒頭2頁+オチ1頁)で、驚愕の大バカドラマなオブラートにくるんでしまうというハナレワザをやってのけた、鬼才・霧恵マサノブの才能が核融合反応を起こした宇宙創生期。
あまりにも本能に正直すぎる人々の純粋な性衝動が素晴らしすぎました。
自分が『虫』であることを認識している『アキツ』の運命や如何に。
『旅人が居場所を探して逃げて逃げて最後に辿り着く浜』が、はたしてこの物語自体を支配する大きなテーマと直結していることを身にしみて思い知ることができるのは、第1部全3巻を通して読んだあなただけに許された特権でしょう。
楽園を後にする青年の苦渋に満ちた葛藤こそを思いっきり堪能してくださいまし。
自由という名の不自由に対する痛烈な霧恵流アンチテーゼ。
メインももの凄いけど、何十年も前にかけがえのないものを海に奪われた最古参な壮年女性『叢雲』の回想シーンで、読者に提示されたものは絶大。
正宗の目指す方向性も名無しの旅人の口から示され、漫画としての素晴らしさもてんこ盛りですよ。
素晴らしいすぎるシリアスを凶悪なギャグで斬って落とすラストのグロさがミゴトすぎる大反則の巻でした。
もしこの編を気に入ってくれたあなたには、よほど小説が苦手じゃなければ『ジョン・ミルトン』の『失楽園』をとっても読んで欲しいかなあという私ではあります。『ダンテ・アリギエーリ』の『神曲』までは、よほどの読書好きな方へしかお薦めはしませんけどね。
個人的名言集
「どこまで行けるか試してるうちに ここに着いちゃったんです」
相変わらず青春の特権を満喫している旅人サンでありました♪
野生生物のような光りを湛えた眸(め)が 薄闇の中 笑っている
とても詩的にステキです。無論、絵も併せてのことですが。
しなやかな身のこなしでのしかかってきた彼女は 簡潔に「夜這い」と言った …意味わかんねぇ
時折挿入される変拍子も乙。
「…ここはね 吹き溜まりなんだよ 旅人が居場所を探して 逃げて逃げて 最後に辿り着くのがこの浜さ」
オバァのイタミがビンビンに伝わってきたセリフでした。
「…ここで失くしたんだ 何十年も前に かけがえのないものを 海に奪われた」
霧恵マサノブが、物語を収束に向けて動かした1シーンとして、井永教授の写真とともに大きな核心でした。
「俺には無いよ そういうの あんたみたいになくす以前にハナから無いんだ」
よーするに根無し草なわけですが、有名無実なものにさえ、役割はきっちりと与えられているのです。
そして、いつか夢を見つけたとき、人は同時に苦悩さえも手にすることができるのでしょう。
何れにしても旅人サンの旅は、一生続くのです。
「あの娘(こ)は知っているからね。ここが楽園であることも ここが地の果てであることも」
イタすぎる…。
「…私は あなたの夢にはなれないッ」
これもイタすぎ。
そしてこの伏線から熟成されたドラマとして霧恵マサノブ流『夢』の哲学を魅せつけるのは、もうちょっとだけ後のお話です。
「できないよ …ここがどんな場所(ムシカゴ)でも ここは私が生まれ育った場所(フルサト)なんだもの」
さらにイタすぎ。
人はそう易易と『無形の財産』を棄てられないという『しがらみ』に関する哲学でもあります。
「…ここで ずっと海をみているよ」
私はずっと星ばかりみているのですが…。
つまるところ、かけがいのないものを失ってしまった者は皆、何かを見つめつづけているしかないのだな、と。
忘却することなど絶対に不可能なのですから。
第11話『ハーヴェスト』(26頁)
キャスト:上野介・鵜丸峰華・峰華の父
舞台は一転して北海道は『富良野』で移動養蜂を営む家族に『上野介』と名乗る放浪人の青年が出逢うシーンからはじまります。盲目の乙女『峰華』は、盲であるがゆえ常人にはあり得ないほどの感覚を身につけてもいました。
「ところであなたは人間ですか?」と、誰にも看破できるはずのない放浪人の正体を心の眼で探り当ててしまう娘。
「私は…痛みを感じなくなる方が怖いんです」と彼女は言いいます。
それに対し彼は、「僕が恐ろしいのは忘却です」と応えます。
著者後書きのコメントを借りれば『ノーガードコミュニケーション』の魅力が大爆発。無論、放浪人が人じゃないのは1巻から読んでるあなたには一目瞭然ですが。神でなくなったものは、その能力のすべてを失わずとも、トレードマークなアホ毛は失われるようです。
最初のコマから最後のコマまで、エロとネームの融合も含めて、すべてが寸分の無駄もないほど素晴らしすぎる大反則の巻。
唯一、この素晴らしい純愛ドラマの狂おしいほどの求め愛が、着エロである必然性はまったくなかったんじゃないかなという極私的減点分を差し引いてもなお100点超級の素晴らしさでした。この着エロ、映像的にという意味でなら滅茶映えるんですけどね。ともあれ、
想いが、想いが、想いが洪水のごとく駆けめぐる、霧恵マサノブの真骨頂をしかと拝むがよいッ!
みたいな、
人の性愛で紡いだ名画座。
個人的名言集
「…良いも悪いも天気任せ 花任せ 蜂任せ」
なんか、本来、人があるべき姿っていうか、胸に染み入るのでありました。
天気が好いと旅をしたくなる私です。
「あなたの怖いことは何ですか? …私は 痛みを感じなくなる方が怖いんです」
「…僕が恐ろしいのは忘却です」
対になる言葉ですが、私はそのどちらもとてもコワイです。
「…なら 私を疵(キズ)付けてください
あなたがわたしを忘れぬように」
これもマイフェイバリットのひとつ。
刻まれたイタミは永遠に忘れ得ぬ糧であるという意味でのそれ。
雲は今でも白いのだろうか?
『雲』と『白い』にあなただけの大切な想い出を当てはめて名言をつくりましょう。
「一人にしないでッ 痛みを与えてッ 私と世界をつないでッッ」
もう、このセリフのもつ意味の素晴らしさは、シーンと共に私の胸の奥深く刻み込まれた宝物。
「大丈夫 君も僕も ここにいるよ」
最高の応えでしたね。
「…雲は変わらず白く… あのひとの旅は …いつ終わるのだろうか」
それは奇しくもレビアたんが第3巻で答えてくれていますが。
「あなたの顔 …見たかったな…」
このセリフに胸を患ったあなたはきっと最終回でボロ泣きするでしょう。
第12話『オナニーと緊縛王』(48頁)
キャスト:長船早津紀・オフサイド堀畑・パゲノ所沢・パンチェンコ小河原・ディブ三ツ浦・井永重国・レビアたん・井戸正宗・長船備前・レビアタン
2編目の前後編仕立てです。
その昔伝説の緊縛師がいた。貞淑な処女をも容易く肉奴隷と化すその手腕はあのたの被虐趣味者たちの羨望の的であり、その卓越した技量とカリスマは全ての加虐趣味者たちの信奉と畏敬の念を恣にした『亀甲の鬼』『SMの神』と呼ばれたその男、名を『Mr.備前』と言った。
という冒頭1頁の仰々しい前振りのあとで、所変わってテンポもギャグな初登場の轟姦部第58代頭目『オフサイド堀畑』がレビアたんに洗脳されて軟弱ファンと成り果てた部員たちに怒りの鉄槌な図を1頁半でかまし、さらに次なるに2頁で井永教授と長船早津紀による重要場面を読者に提示し、『欠片』『眷属』『あれ』などという、物語の最深部にかかわる説明も飛び出すので脳内にきっちりメモしておくことをお薦めしたい所存。
そして、あの超絶的快楽を忘れられない早津紀は、正宗を想い独りトイレで14頁にわたり激烈にオナるのですが、またもサラリととんでもない核心部をわずか1頁挿入したのち、ちょい役登場のレビアたん主演によるポエムとギャグで読者の脳味噌を攪拌したところで後編へと続きます。
はたしてレビアたんにフラレタ三バカどもは勘違いな解釈で早津紀を捕獲し、オフサイド堀畑に差し出すのですが、
気づけばセーラー服着せられ緊縛されていた早津紀に、のたうち身をよじる芋虫を嬲るがごとく加えられる怒濤の責め手は休まるところをしらず、ローソク・ムチ・陰毛毟りで失神しらしめ、その後も追い打ちかける二穴ほじりについにはM奴隷陥落と相成るのですが、それはもう霧恵マサノブだから当然そのままで終わるはずもなく、後はもう予想通りな大逆転から怒濤の攻守交代劇へと様変わりし、
「お互いの信頼があって初めてSMというプレイは成立する」
「相手のいかなる行為をも受け容れ無限に感受することが信頼と呼べるならば、真にその場を支配している者は実はMの方だとね」
という、まさに言い得て妙な『真のSM』の定義まで魅せびらかしてくれるのでした。
そして究極の放置プレイ後に、女神様のネクタールが炸裂する件まで、軽快なギャグテンポを計算づくのインテンポで引き締める絶妙なリズムと、一瞬に凝縮されるリアルが、まさにミゴトの乱れ撃ちでした。
ただし、後書きにある「当然射精カタルシスがないとエロ漫画としては失格なので」云々という件には疑問も大いに感じます。男性との性交が一切介在しない作品でこそエロ漫画としての真価を魅せられる作風をもった作家様も少なからず存在するからです。そういうエロ漫画の形態も大好きな私にとっては、ちょっぴりセツナイお言葉でしたが、内容的には満点でした。
個人的名言集
「
それは一撃で私の心を粉砕した」
何かに魅入られてしまった者はすべからくそうなんじゃないかな、と。
少なくとも、私にとっての霧恵マサノブがそれ。
「怪物と出会ってしまった者は… たぶんその瞬間に 死んで(食べられて)いるんだよ」
上の言葉に掛かります。
そう言う意味では、もうすでにアンデッドです、私は。
「身体が忘れてくれない お尻が 子宮が 忘れてくれない」
私のリビドーを刺しまくるクリティカルな一撃でした。
「はっはっは 逃げろ逃げろ あたかもイモ虫の如くッ 身をよじれッ 鉄板に響された鮑(アワビ)のようにッ」
とても霧恵マサノブらしい隠語です。
一読したときは『饗される』の誤植かなと思ったのですが『響』はとても詩的で好いです。
「無論 快楽の至高 その根底は恐らく極限と対峙した自己愛(オナニー) でもMにはそれに限りなく類するプレイがあるわ …知りたい?」
実はこのあとの回答が素晴らしすぎるのですが、無論、書けませんし、ベストショットな最終頁ともども読者だけのお楽しみということで、いまはご勘弁を。
第13話『ウイッシュ!』(26頁)
キャスト:小烏葵・井戸正宗・レビアたん・井永重国・小烏社・小烏楓・葵の両親・長船早津紀
まだ幼女という形容かピッタリはまる頃の葵が、杜に楓の死因を詰問するシーンから、運命とか因果とかいうところの、その大いなる奔流の渦に独り取り残された自分に対して、彼女の胸中での決意が明らかにされることが重要ポイント。
第12話前編部で提示された謎に関連した、物語の核心部について、井永教授と葵の裏取引が語られるのですが、無論それは第2話冒頭部分の伏線回収を含めた拡大ヴァージョンでもあります。強烈すぎる葵のひと言を堺にして物語はレビアたん×正宗方面にバンします。こちらは巻頭カラーショートの第9話『Relay Ⅰ』の拡大ヴァージョンなのですが、スク水、着エロなアツアツえっちのさなか、もういちど想いの確認作業が観られます。
その最終シーンにフェードインされる形で、前半部と対になる形で語られる葵の胸中。3人のかけ合いギャグなラスト2頁のうちに、物語の核心部を挿入してしまうという、霧恵マサノブらしさに満ち溢れた漫画手法がとても心地よい一編でもありました。
物語が2分割されているのでエロの重みも2分割ではありますが、とても好い繋ぎの意味合いをもつ回でもあります。
個人的名言集
「
あなたまで何故 私に謝るのですか」
これはもう物語全体を把握している方へなら誰にでも刺さるであろう必殺の一撃でしょう。
「感謝の念があるなら… 態度でしめすのがまことの おとッ…」
人に求めることのワリには意外と自分は語りまくるオチャメなレビアたんが大好きですが。
「私は運命にこがれる 私を包み圧倒的に奪い去る因果にこがれる」
「私は運命を憎む 私一人だけ残し流れ去る因果の海を憎む」
まあ、刺さりまくりましたね、これは。
代価となるものが存在しないレベルの想いは、いつでももう紙一重なのですよね。
「…
主らはまだこがれておるのじゃな」
物語の大きなテーマのひとつとしてのそれ。
「甘ゆんな」
内輪方面的に思いっきり流行ってます。
第14話『旅人の妹相関図』(24頁)
キャスト:名無しの旅人・由美・由美の母・5分前に由美がフラレタカレシ・アキツ
名無しの旅人の妹である『由美』が初登場です。
妹の想いを描くことで物語は突き進み、酔いつぶれた兄を犯し想いを遂げる妹の図というところから、
怒濤のエロシーン連続17頁な、どろどろの性愛が咲き乱れます。
旅人敗北の歴史3部作の完結でもあります。
リビドー的には個人的に最愛の1編でもあります。正直、使用率はダントツです。無論、それは漫画部分の素晴らしさも含めての、一体感と展開としての齟齬の無さからくるそれなんですけどね。
冒頭のわずか5頁で、事象をきっちりと進行させつつ、過去に語られた兄方面のドラマを利用して、さらに妹方面の想いのドラマを綴ることで、行為がはじまるまえのお膳立てを完璧につくりあげてしまう手腕が素晴らしすぎる作家性でしょう。袋小路に陥って出口を塞がれ腫れあがり、すでに化膿して膿すら撒き散らしはじめている妹の想いと、自分をカラッポだと思い込んでいる兄の想いが、奏でるカノンが、最後は完璧に同一線上を流れるオタマジャクシな符号と化して五線紙の上に調和するハーモニーをとくと堪能してくださいまし。
ラスト2頁にわたるオチも、たいへん美味しゅうございました。
余談ですが、霧恵マサノブは阿吽の縛り(NG)破壊者でもあります。でも伝統やら規則を壊してゆくのってよっぽど力を認められてない限り不可能なのですよ。社会で闘ってる皆様にはお解りだと思いますが、会社の悪しき伝統ひとつぶっ壊すことがどれほど大変なことかとか、イメージしていただければとも思います。
にしても、後書きの『大反省』は、とても残念でした。私にはリアル友人でエロ漫画を熱く語れるヤツが7名しか現在はいないのですが、うち5名の構成員である女性陣は、全員一致でベストショットに選定してますので、やっぱり霧恵マサノブにしても女性読者にのことまではまだまだ考えてくれてないのだなというところが、ちょっぴり(かなり)セツナクもありましたが。ってか、それを言ったら阿吽の同僚でもある『師走の翁』に申し訳なかろうが…。
ともあれ、裸と裸で奏で合うゼロ距離えっちなぶつかり愛が、滅茶苦茶エロースで、個人的には史上最愛レベルの1編でした。
個人的名言集
ありきたりな話で恐縮だが、子供のころ「由美ちゃんの夢はなあに?」と聞かれて「お兄ちゃんのお嫁さん!」と 答えた。
エロ漫画というよりは、少女漫画やジュニア系にありがちな導入法ですが、漫画読みとしてはとても心地よい一発でした。
その想いは 小さな棘の様に 心に刺さったまま
刺さってます。
いろいろな意味で。
「…うん ヒマになった」
大好きです。
流れがとても自然で、素直で。
二人並んで溶け合えば 超過も不足も補って 少しはまともになれるだろうか
近親相姦にまでは当てはまらないかもですけど、少なくとも私の今日までの恋愛に共通していた想いとしてのそれ。
とてもリアルに共鳴しました。
これはあかし …私が夢に向かって努力したあかし
この回のエロシーンのモノローグ部分はすべからく名言だと思うのですが、全部は書けないので、代表として、『夢』を成就し、ひとつになれた歓びを簡潔に言い表したという意味でのそれ。
そして、この物語のテーマでもある『大いなる流れのなかでの交差点としての瞬間』に、全生命を注ぎこみ、後に遠ざかるも想いは不変という、『峰華×上野介』『アキツ×旅人』などとまったく同様な意味でのそれでもあります。
「…私は… お兄ィの夢になるなんてまっぴらゴメン 誰かのために生きようなんて そんな楽な生き方 お兄ィには似合わないよ」
凄まじいくらい、刺さりまくった、激烈会心の一撃。オヤヂ的には海神の一撃かも。
第15話『旅人と漂泊者の夜』(26頁)
キャスト:上野介・名無しの旅人・居酒屋の女将・エビス神・小烏社・社の夫・貞次・鈴
夜道をバイクでトボトボと走っていた名無しの旅人に、ニワカに降り出した雨が、ドラマを連れてくるという、ありがちと言えばありがちな、構成法に導かれた1編です。
雨宿りの場所を物色していた旅人がやっと見つけたオアシスは軒下赤提灯系半屋台の居酒屋さんで、先客である上野介に、気っ風のよい女将が「おごるから、なんか艶のある話でもしとくれよ」と酒を振る舞い、上野介の昔話という形で物語は紡がれます。
刻は昭和4年。
社とエビス神の邂逅です。
財閥の体力を回復せしめんと自らを贄と捧げる覚悟を決めた当時ハタチな社の、刻を隔てた二回戦での、崖っぷちな心情と肉のうずきな宴による、性反応の臨場感が凄まじいばかりですが、後日談として簡素に語られる1頁のドラマを含めて2つのNTRとして因果応報で結びつけ描いた手腕も見逃せません。
そして、その次の1頁で語られるイメージこそが、あまたのドラマを内包した形で紡がれる本シリーズに於いても、その根底にあるもっとも大きなそれのひとつであるという、とある物語の幕開けシーンであることは、紛う事なき事実なのでございますが、そのタイミングの絶妙さは、もうなんて表現すればよいものか…。
気づけば、雨もあがり、雲の合間より漏れ出ずる月。
満天の夜空の下、ただあてのない旅をつづけることによって生きながら死んでいる男と、聞き手に終始した男のドラマが、ほんの一瞬交差して、それぞれの方向にまた動きはじめるところで、以下クライマックスな第一部最終3巻へと続きます。
個人的名言集
「主にとってそれは それほどまでに守る価値のあるものなのか?」
小烏家の呪縛という意味でも、社方面からの『母として守るべきもの』という意味でも、重要すぎるテーマの再確認としてのそれ。
そして、森羅万象としてのそれ。
「僕は子供に負けたのです」
神=神と考えすぎないことをお薦めします。少なくともこの世界に住まう神たちは、人のもつ想いとしての●●を渇望していることだけは確かなのですから。
「旅が日常になれば それもまた『終わってしまった』ことと同じです」
10年も放浪してしまった私にはマジでイタイセリフなのですが、一般的になら、旅を他の何かに置き換えて考えてくださればと思います。
「…僕はまだ ここまでだな…」
ってゆーか、『ここまで』がよろしいです。
真理を極限まで探求してしまうと、そこには何も回答が用意されていないことに気付いてしまうのが関の山ですから。
第16話『えすか』(描き下ろしオマケ4頁)
キャスト:井戸正宗・レビアたん・小烏葵・謎の黒猫
第13話『ウイッシュ!』のオチから派生したエロ無しオマケ漫画です。
正宗×レビアたん×葵のかけ合いによるオバカなノリの3頁から、団欒の図なポエムで和ませ、最終コマでシリアスを魅せつけるという、オマケ漫画なんてレベルじゃない素晴らしさで、もう最高♪
神のアホ毛のどーしよーもない使い道とか大バカすすぎてタマリマセンデシタ♪
謎の黒猫に関するレビアたんのワケアリなセリフは結局、第一部では謎のままに終わるのですが、
ギャグやコマの合間やちょっとしたセリフの谷間にこそ謎を包み隠してしまうセンスが最愛です。
手描きのコマもステキすぎました。
個人的名言集
「こころもちはの まんざらでもないのじゃ」
なんとも微笑ましい限りでした。
無論、葵方面的には別の意味でのそれ。
「…じゃが もうすぐ …夏も終わるの」
『夏』が終わるとどうなるのでしょうかというそれ。
第17話『Relay Ⅱ』(カラー4頁)
キャスト:小烏社・小烏楓・貞次
掲載されたのは第22話の前編と同時で、時間軸的には第19話『シノニム』直後のお話ですが、やっぱりカラーショートなので巻頭に収録されてます。
社&楓&貞次の性宴なのですが、正直、この流れで、この透過図が必要だったのかは疑問です。辺り一面、杜と楓で、貞次の存在感がチンチンだけってのが残念でした。
ラスト1コマのほほえましさが最愛と言ったら怒られるかなあ。
個人的名言集
「わが子を抱いた喜びと愛おしさに勝るものはないわ」
一生に一度くらい、皆様には味わって欲しいものです。
第18話『屋上と同性愛』(26頁)
キャスト:長船早津記・小烏葵・井戸正宗・レビアたん・名無しの旅人・オフサイド堀畑・パゲノ所沢・パンチェンコ小河原・ディブ三ツ浦・東雲生子・東雲次久夢
正宗のもとへやってくる名無しの旅人という図からはじまるのですが、絆創膏から察するに第14話『旅人の妹相関図』以降ほとんど時間は経過していないものと思われます。ってか、シリーズ第一部全3巻通して『ひと夏』なのですがね。
そして、訪ねてきた彼の全身の匂いをクンクン嗅いで「おぬし とても懐かしいニオイととても嫌なニオイがするの」と宣うレビアたん。
という前振りから大きく場面を飛ばして、重要ポイントを少しでも霧に包もうとするのも美味しい作家の条件のひとつ。
場面変わって翔海大学第八実験棟。
午後2時50分な炎天下の屋上で対峙する長船早津紀と小烏葵。
長船の要求。
「あの娘(レビアたん)は誰?」
「井永教授の研究『神気』の嘱託理由の実態と進捗度は?」
「烏丸の祭神『エビス』との関係は?」
そして
「井戸君ちょうだい」
当然、答えは否。
用意したしかけは、どーしよーもない漫画チックで粉砕され、だからってんで、早津紀はSEX勝負をいどむのですが、あとはもう、のびている堀畑のチンコもオプション的に利用したりしながらの怒濤の百合合戦と相成るのでしたが、勝負の行方は読者の皆様のお楽しみと言うことで。
さて、井戸とともに死にかけるほどの、レビアたんに二度助けられるほどの、長船の因果に嫉妬する葵の図が、このあと描かれるわけですが、そんな彼女に、レビアたんは意味深な台詞をはきます。そのシリアスを引き摺ったまま突入するオチは、とてもクサクテ大バカでステキすぎました。
百合シーンはド迫力でとってもフェチで素晴らしいのですが、オプション無しの肉体同士のぶつかり愛だけで描いて欲しかったというのもあります。
著者も後書きで語ってくれてますが、まったく百合じゃない。ダメじゃん。
阿吽は百合NGだからやってみたという著者の後書きの真意のほどはともかくも、サブとしての挿話は間違いなくエンディングに向けた収束調整としてのそれでしょう。
個人的名言集
…
ありえないんです
最初は、嫉妬と怒りの一撃だと思ったのですが、無論、それもありますが、もしかしたら核心としての意味合いも強かったのかな、と。
「なんじゃ気付いておらぬのか」
当たり前なんだけど、人と人の縁なんて、はじまりの地点では単なる偶然なのですよね。
第19話『シノニム』(26頁)
キャスト:小烏楓・貞次・小烏社・元副長・造船現場監督
冒頭、映し出される極洋観測調査船『小烏丸』という浮沈艦。
小烏の名を冠した烏丸の象徴。
副長は過去を憂い、かくつぶやく。
「万物は時を経てひずむ。ひとも組織もまた船も不朽のものなどありはしない」
楓は貞次にごちる。
「『自由』の別名は『孤独』。そうあればあろうとするほどそれは深まってゆくの」。
自由にあこがれた女性の想いの枷で繋がれた籠の鳥な男と大海に放られた蛙な女の激交。ただ欲望のままにやりまくるだけの日々。ゼロ距離えっちと言うには完膚無きまで着エロだけど、このシーンには、それが、とても似合ってもいる。そして当然の結果としてもたらされる、やりまくりの末の妊娠。
社の下した罰。
貞次の名は奪われ楓はハグハグの刑。
ことさらに言葉を必要としない肉のぶつかり愛によるハードコミュニケーションなセックスと、浪漫溢れるシリアスと、ラスト3頁の怒濤のギャグポエムと、漫画としての方向性が、反則というよりほとんど罪なレベルの、
性愛交響曲第3番『海宴』第一楽章『異名』
凄まじき男女の情交と大バカな切り落としで、冒頭の重要シーンなぞ、たぶん何処かに吹っ飛んでいることでしう。
個人的名言集
「万物は時を経てひずむ ひとも組織もまた船も 不朽のものなどありはしない」
万物流転。形ある物いつかは壊れる。だからこそ人生は、その一瞬一瞬は、貴いとも言えるでしょう。
「『自由』の別名って知ってる? …それは『孤独』よ そうあればあろうとするほど
それは深まってゆくの」
自由をとことん探求したいという気持ちと、輪の中で手を繋いでいたいという気持ちは、たぶん誰でももっている二重拘束でしょう。
第20話『モドキとマニア』(26頁)
キャスト:名無しのウェイトレス・長船備前・オフサイド堀畑・長船早津記
出張中の長船備前のもとへ派遣メイド『はんな』としてあのウェイトレスがやってきます。無論、呼ばれたのではありますが。
どーしよーもないくらい大バカな唐突ギャグで登場する、お邪魔虫の堀畑が一見主役な怒濤のSM劇も、セックスのバリエーションとしてとことん堪能してしまう二人には、さしもの堀畑もシャッポを脱ぐしかなかったのでありましたチャンチャン♪
狂気にたたみかけられたハードプレイを一気にぶち壊す悪ふざけな脱力感が、もーどーしよーもないくらいたまりませんでした。
にしても、霧恵マサノブが描くキャラクターたちは皆、素晴らしいアクターなんですよね。演技としての完成度が、ある意味、セックスのリアリティーを妨げている面も多分にあるのですが。
そして最終頁下半分で『海岸に白鯨漂着』のニューズが伝えられるのですが、最後のひとコマで名無しウェイトレスな彼女まで、実は物語の中心人物であることが判明します。そいえばアホ毛ありますもんね、彼女にも。
そしてこのラストシーンから一気に物語は収束部に突入します。
個人的名言集
「誰とやろうが なにをしようが …どこまでいっても SEXはSEXなんですよ」
まったくもって同感です。
だからこそ、素晴らしいパートナーに出逢えたときの歓びは何にも代え難いものなのです。
お互いの意志が完膚無きまで一致するところでのそれが常に最高のテンションで維持できる相手に巡り会えた私は、たぶん滅茶シアワセモノなのでしょう。
「ワタクシこーふんで大気圏突破しそうです
」
最高のパートナーとのセックスって、たぶん誰でもこんなカンジなんじゃないでしょうか。
第21話『ネクサス!』(22頁)
キャスト:エビス神・鈴・レビアたん・レビアタン・井永重国・小烏社・小烏楓
思いっきり伏線回収と世界観の説明がなされる回です。
海を墜ちてゆく幼女『鈴』とエビス神との邂逅シーンがほぼ17頁で、人間ドラマと性愛ドラマの両面を同時に魅せつけます。
残り5頁で物語の重要な事柄について一気にまくしたてます。
井永重国『エビス神考察と神気についての中間報告』と題してのレポート中に井永教授とレビアたんの邂逅シーンとかをまじえ、『エビス神』に関する解説を、遅まきながらやっつけます。
という最初のイメージよりも、元来は異郷たる海より訪れ豊漁をもたらすモノ。「ここでないどこか」からやって来て幸せをなす客神(マレビトガミ)。漂着神(ヨリキタルモノ)の総称。として『エビス神』が描かれていたというところを説明します。
レビアたんとと井永教授の邂逅シーンは当然あの写真のシーンの伏線の回収です。
そして、鳥丸方面からは、『彼の存在との接触』『形質変化の原因因子』『神気』『一時的接触による生命形質の変化』『眷属(クラーケン)』などが一気に語られ、『彼のもの』と『眷属』との決定的な差異を解き、だとすれば『彼のもの』の行動原理はなんなのか…。『彼のもの』はどこから来たのかどこへ行くのか。という未解決の謎をさらなるテーマとして掲げます。
無論、彼のものの行動原理は、この回まで読んでくれたあなたにはもう解っていることと思われますけど。
という感じのレポートを葵が見るシーンで終幕するのですが、物語をクライマックス前夜祭に収束させるに不足していた部分をすべて吐き出す形となりました。
さて、エビス神を抱きしめるスク水幼女に絆された彼は、幼女に惑星レベルの贈り物をします。
成コミでは極めて稀な『ネクロフィリア(屍姦)』も描写されていますが、再生としての儀式の神々しさに満ち溢れ、死から生が産まれ出ずる瞬間を含めた大いなる生命の生誕記というか、それはまさに、
性愛交響曲第3番『海宴』第二楽章『変遷』
そして、後書きの作品解説にある『テンヤワンヤの大騒ぎ』こそ、描いて欲しかったのも事実ではありますが、それやったら本当にギャグに浪漫が負けちゃったかもなので、やっぱりこっちで正解ということで。
そして物語は怒濤のクライマックスなラストダンスに突入します。
個人的名言集
「無力という名の鎧を纏い 無邪気という名の強欲で さもしく生命をねだるがいいッ」
神だけに不遜ですが、神ゆえに弱点もあったようです。
「…あなたはどうして どうしてそんなに… そんなに寂しい顔をしているの?」
ナウシカと王蟲の邂逅を想い出してしまったのは、私だけでしょうか。
「…ぬしらには……かなわぬ」
永遠の生命力をもつがために、ある意味終わっているとも言える神の、神から観れば無力な人間の貪欲な生存願望という名の生命力と、遺伝子レベルな環境への適応力への感嘆符としてのそれ。
あるいは『無垢なる慈愛』。
「…夏が終わるわ …井戸君…」
結局、夏が終わる前に第一部は終わってしまいましたが…。
第22話『海と神と贄と宴』(68頁)
キャスト:井戸正宗・小烏楓・レビアたん・長船早津紀・井永重国・白鯨・セバスチャン・貞次・小烏社・パゲノ所沢・パンチェンコ小河原・ディブ三ツ浦・小烏楓・謎の黒猫・名無しの旅人
前中後編仕立てのラストダンス。
あるいは、
性愛交響曲第3番『海宴』第三楽章『因果の海』
乗組員32名他、実習・研究学生・教員130名とともに『小烏丸』がアルゼンチン南極海圏ドレイク水道航行中に炎上GMDDS発信30分後に沈没。迅速な救助活動により大惨事は免れるも、船長・小烏正宗の安否は不明のまま捜査は打ち切られる。という冒頭1頁の説明に続き、漂着した白鯨の調査に向かう井永教授以下、正宗・早津紀・三バカの図を挿入し、
葵とセバスチャンの会話から本線である正宗×葵の痴話ドラマに雪崩れ込み、怒濤のセックス回顧劇から件の名場面へと移行して、そのままの流れで、
レビアたん×白鯨のメインドラマでさらなる感動の追い打ちをかけ、その9頁にわたる感動シーンのうちに、
わざとらしく1頁だけ挿入したシーンをとりあえず繋がず引っぱり、別方面のドラマ2つを同時展開させ、
そこから派生させた大乱交劇ハーレム劇場でイヤというほどエロを垂れ流し、
怒濤のセックスでイキ倒れた女神様の重ね餅な二人を背景に据えたままの大告白劇へと進行し、再度の怒濤の8Pへ繰り出し、楓×レビアたんな名シーン2頁挿入し、待たせに待たせたバイバイシーンから葵×貞次をやっつけ10年後にワープしたところで、以下怒濤の名画座な最終回へ。
渾身の正宗。
慟哭の葵。
起死回生のセバスチャン。
想いこそがひとを生に執着させるエネルギー。
痛みにまさる苦しみから解放されることを願う彼のものの懇願に対してレビアたんの鬼愛。
重国の終わりと始まり。
策士長船肉欲に溺れる。
奇想天外風情の激白。
因果を繋ぐ走馬燈。
未練な想いを隠しきれずも笑顔で海に還る神。
そして、流出した神のデータを『ツミホロボシ』で消去し、連綿たる巫女の系譜から神は消えた。
ここまでで伏線は97%回収されます。
つながった糸のシーンでいつも涙をこぼしてしまう私です。
途切れた糸のシーンでいつも涙をこぼしてしまう私です。
いくつものドラマがここで決着します。
それいじょうは書きませんよ。
個人的名言集
「…あの時 君に教えた笑い方は… あれは間違っていた
ごめん」
正宗、渾身の一撃をいったんは誤解した葵でしたが。
「あなたは彼の何を知っていますか? 知ろうとしましたか? …流したその涙と あの時の胸の鼓動が偽りならば 人間(ヒト)は自分(おのれ)の何を信じれるというのです お嬢様… 運命など 結果の形容詞にすぎませんよ」
セバスチャンのひと言が葵を救います。
正直、座右の銘のひとつにしたい私です。
「ぬしが虚無を語るなど40億年早いわッッ!!!」
私もリアルでよく使うフレーズですが「46億年はえーよ!!」と言ってます。もしそなことしょっちゅう言ってるオヤヂがいたなあ、と心当たりがあれば、それはもしかしたら私かもしれません。
「終わらぬ生命(いのち)が無いように 尽きる因果もまた無いッ 生き物なら 生きて 生きて 死ぬまで生きよッッ!!」
挫けそうになったら想い出しましょう♪
「勝負水着です」
バカです。大バカすぎます♪
「ちょっと見せてみ? ご自慢のウミサボテンとやらをよ!!」
いやあ、海洋生物ネタ満載なのですが、やっぱりこれが代表選手ということで。
「あなたはなぜここにいるのですか」
コメントは無粋でしょう。
「……あなたが あなたが好きです」
この構図があああああッッ!!!
あなたが好きです「好きです 好きです 大好きです 愛してると言っても過言では無いッッ!!」
霧恵マサノブが好きです「好きです 好きです 大好きです 愛してると言っても過言では無いッッ!!」
「…さて そろそろわしは行くぞ」
イタイ。とてもセツナイレビアたんの胸の裡です。
「烏丸の名を冠するこの船… 沈めるわけにはいかない」
沈めなかったことの意義を、その因果から派生する新たな愛のドラマを第2部に期待してます。
もしそれが第1部最終話のあれのためだけなら、個人的にはほんのちょっぴり不満ですから。
第23話『Let's Leaving Leviathan!!』(28頁)
キャスト:小烏正宗・レビアたん・鈴・リヴァイアさん・名無しのウェイトレス・小烏葵・小烏椿・小烏社・貞次・パゲノ所沢・パンチェンコ小河原・ディブ三ツ浦・長船早津紀・東雲次久夢・井永生子・井永重国・謎の白猫・オフサイド堀畑・長船備前・峰華・峰華の息子・上野介・名無しの旅人・由美・叢雲・アキツ・アキツの息子・ツミホロボシSP.Ver3.2
それぞれの人間ドラマの交差点的一撃をひとつひとつかましまくり、ひとりひとりのドラマに感動という名の花を添え、さらに新たな謎を提示し、勿体付けて幕。
性愛交響曲第3番『海宴』最終楽章『交差』
10年後の彼らを、誠に最終回らしく、キャラ総出演でそれぞれのドラマを簡潔に読者に提示しやがりますですよ。
だけどこの最終回は完全に反則です。
物語にきっちり白黒つけたついでに、とんでもない置き土産まで用意してくれては、そりゃ第2部に期待するなという方が無理な相談でしょう。
でも、物語としてきっちり完結はしてますから、本当はこのまま神話的に終わってた方がベストなのかもしれませんけど。
ともあれ
まあ、さすがの阿吽様でもニーズに相反しすぎるテーマまでは許可してもらえないかもだけど、縛りを力でねじ伏せるだけの凄まじい実力の持ち主なので、成年向きエロ漫画雑誌の方向性を変えてくれることに、今後も期待です。実力に見合わないのは人気くらいで、もしこの漫画が成年縛りじゃなくて一般だったら、とんでもないヒット作になってたかもしれないと思うと、ちょっと歯がゆいかも。
どだい無理なのですけどね。
描いてる方向性が思いっきり性愛をテーマにしてるので、一般作には出来ないのですけど、個人的な感動度なら、漫画として『風の谷のナウシカ』や『最終兵器彼女』などの壮絶人間ドラマに負けてたとは思わないし、『灰羽連盟』『無限のリヴァイアス』『新世紀エヴァンゲリオン』といったアニメの感動や、感動ラノベな『イリヤの空、UFOの夏』のそれにも、勝るとも劣らなかったことだけは事実です。
無論、成分の70%くらいはセックスシーンでできてますから、そんな漫画を愛せる方にしか到底お薦めいたしませんけど。
そんなワケで、人の想いを肉の宴にのせて紡がれる性愛ドラマの素晴らしさをぜひ堪能してくださいまし。
個人的名言集
(さすがにコメントは省略)
「お母様の本当の笑顔はとても素敵なのよ」
「…五年… たったひと夏の逢瀬で… あの子達は五年もかかったわ…」
井永、記録更新「『研究者』はね 何かを追い求めてなけりゃ生きていけないイキモノだから」
「上(コー)さ… …忘れません… …私ッ 絶対ッ 忘れませんからッッ!!」
「…おぬしを わたしのものにしてよいか?」
「…ねぇ お兄ちゃん …愛してるよ」
「…きっと いつかあなたが旅立つ世界よ」
「おかえりなさい
」
はたして、名無しの旅人は『ベヘモット(ベヒモス)』なのか。
はたして、名無しのウェイトレスは『ジズ』なのか。
はたして、謎の黒猫の正体は。
はたして、夏が終わったあとにいったい何が待ちかまえていたのか。
はたして、本当に第2部はあるのか。
はたして、あるとしたら語られるのは未来なのか、過去なのか。
何れにしてもすぐにはじまることはないでしょう。
霧恵マサノブは、新たな物語を紡ぎはじめてくれましたし。
ただその漫画が掲載された巻末のコメントには思いっきり不安もあるのですが。
ともあれ、『LeviAThan』のレビューは、とりあえず、ひとまずこれでお終いです。
正直、この作品が売れないのなら、私がレビューなぞ書いてる意味はまったくなかったと同じだと思ってます。
ローマは一日にしてならずとも言うけど、二年間レビューを書いてきて、凄い成コミや激烈おもしろい成コミは、結局どんどん死滅していってるのが現状では、やっぱり力不足を痛感しておりますし。
本当は、私とて『エロは正義だ!』と、叫びたかったのですよ。
でも、オールジャンルが生き残ってこそ、それははじめて正直に言えることで。
とても虚しいです。
そしてとてもセツナイのです。
懐古主義だと笑ってやってください。
もうほとんど修復不可能なくらいのところまできちゃってる成年コミックス市場の明日を憂うくらいしか能のないヤツなのですよ、私は。
大好きキャラとかベストシーンとか、できうることなら皆様と語り合いたかったですが…。
とにかく『このエロ漫画はステキずぎる』ということと、早いうちから全3巻を許諾していた『ヒット出版社も凄いんだぞ』ということだけお伝えして、
ともあれ
はたして『海には神が在る…。』そして『成年漫画界には霧恵マサノブが在る。』私は霧恵マサノブを愛してます。ハグして拘束してムチでしばいて、最低でも月間4作くらいは描きまくらせたいくらい愛してると言っても過言では無いッッ!! 足りないッ!全然足りないッ!もっと!もっと!もっと霧恵をッッ!! そして、この恋する惑星に恋する遺伝子をもって生まれてこれた幸せを実感できる感動こそに感謝を!!生きよ 生きよ 生きよ 死ぬまで生きよレビアたん 宇宙のいのちが尽きるまで
theme : 成年コミック・マンガ
genre : アダルト